第十章:迫り来る敵 立たない男
ちょっとかけなくてすいませんでした。
忘れないでチェックしてくれている方々、今日から再開します。ちょっと事情で、今まで書けませんでした。これから休まず頑張りたいと思います!
沢山の兵たちがバーデンの町に猛スピードで迫っていたにもかかわらず、
ライル騎士・傭兵団混合部隊は捕まることはなかった。
迅速にライルへ戻り、城に帰還した。ベグオンの素早い判断のお陰で、皆は死なずに済んだ。
恐らく先ほどの敵援軍はグレールの本体の一部だったかもしれないと、後にレイスが発表した。
皆、早く帰ってきてよかったーと、溜息をついていた。
一部でもあの数。しかも、この兵たちがこうまで言うとは……と、グルイドの額からも冷汗が出た。
シンは未だ部屋で項垂れていた。いったい自分のどこが悪かったのかと、若者の感情だ。
でも、冷静になって考えてみると、自分が弱かったのがいけなかったのかと思ってくる。
そこに、ノックがコンコンと鳴る。シンは「誰」と一言言うと、ベッドから立ち上がった。
「俺だ。グルイド」
その声を聞き、シンは暗いまま出迎える。ドアノブを捻り、ガチャッと扉を押し開けた。
その腕に力は入っていなかった。
「シン……まだ……」
「いや……」
そんなこと言っているが、シンが気にしているのは確かだ。グルイドは相談に乗ることにする。
「俺ぁよぅ……なにがいけなかったんだ?」
シンが訊く。答えはない。そのまま深く溜息をついた。
しばらく沈黙のあと、グルイドは部屋を出て行った。帰り際に言った一言がこれだ。
「よ〜く考えな」
グルイドはそれだけ言うと出て行った。シンはそれだけでも無性に腹が立った。
いつもなら、穏やかに、かつ元気に「おお」だ。だが今回はイライラと、憎たらしく「んだよ」だ。
何故か、無性にイライラする。その後、しばらくしてベグオンがやってきた。
「おい、俺だ。ベグオンだ」
扉越しにベグオンが話しかけてきた。シンはむすっとして答える。
「何」
その態度に逆にイラッときたのか、ベグオンも少し怖い声で言う。
「お前よぉ……、自分の<非>をわかってないだろ」
「俺のどこがいけなかったってんだ」
シンは怒りの捌け口を見つけたかのようにワガママを言い出した。
反抗期……とも少し違う。
「じゃあ一つだけ言っとくぞ」
ベグオンも一言言い残す気のようだ。シンは扉の向こうでもたれかかっているベグオンの方に
耳を少しだけ傾けた。
「考えるのは、己のことではなく、軍のこと。戦局を考え、兵法を学べ。
敵を見て、己の弱さを知り、負けは認めて、軍が有利な方向に持っていけ。
逃げるのもまた、ひとつの道。……俺の師が言っていた名言さ」
そう言うとベグオンはどこかへ行ってしまった。少し考え、シンは我にかえった。
慌ててベグオンを探しに扉を開け、左右を見るが、もう誰一人いなかった。
シンは再び、なにがなんだかとベッドに倒れた。
「ベグオン! 大変だ!」
「んん? ああ、わかってるよ」
叫ぶのはあの、大斧を持つバリスだ。それに平然と答えるのはベグオン。
「おい、レイス! やっぱり来たぞ!」
ベグオンが、上で立ってるレイスに一応報告。レイスは城の三階の大きな庭のようなところで
立ち、前のめりになって遠い丘を眺めている。そして「わーってるよ」と言う。
こいつらはもう、最初からわかっていたようだ。バーデン城主をしとめなかったのが失敗。
すぐに駆けつけたグレール王宮騎士団の一部が、すぐにこっちに攻めてくるのを。
「いっぱいいるな」
レイスの眺める先、遥か遠い丘を走るは、ここから見るだけでおよそ700。この城の兵は約400。
とても適いそうにない人数差だが、2人は至って冷静だ。
「で? どうする団長。全員収集するかね?」
三回のレイスが、外に立つベグオンに問う。だがベグオンは首を横に振る。
「あの程度なら、俺ら傭兵団と、さっきと同じ200の兵で十分。さっきのとは違うもう半分の
200人。部屋のシンには、もう少し考える時間をやりな」
心の広く、強いベグオンはこう豪語する。レイスも微笑み「了解」と言う。
「さあお前ら! シンに見せてやろう、俺たちの防衛戦を!」
「お―――――!!!」
軍の士気は先程の攻めたときよりはるかに高かった。血の気の多い兵たちを、
たった8人で指揮するライル傭兵団で、その中で最も高い位置でおさめるベグオンは大きな存在
だった。
「配置につけぇー!!」
ベグオンは大声を張り上げ、全軍に命令。皆配置につき、傭兵団の皆はベグオンの
周りに集まった。
「奴らが来次第、攻撃開始だ」