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大陸の覇者  作者: 熱悟
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序章:白銀の地方

今これを見ているあなた。あなたは、

約3億年前に存在したとされる大陸「パンゲア」をご存知だろうか。


命名はウェーゲナー。北半分をローラシア、南半分はゴンドワナ。

その大陸が分裂を繰り返し、今のようなものになったとか。


もちろん3億年も前だから、人間はもちろん、恐竜もまだ存在しないと皆言う。

だが、もしもその人類の歴史じたいが間違っているとしたら……



どうなると思いますか?



序章・白銀の地方


「む……」


今から約3億年前の早朝、その男は目覚めた。

木でできたボロいベットの上に敷かれた、布にただ羽を詰めただけの手作りの布団を

下からバッサリひっくり返し、男は頭をボリボリかく。


外は一面雪景色。その小さな小屋の窓の下あたりまで積もっている。

男はその寒いなか薄着で、動物の皮のようなものを一枚着ているだけ。

男は立ち上がる前にのびをし、そのまましばらく沈黙。


朝のきざしが気持ちよくすぐ隣の窓からさしこんでまぶしい。これならすぐ雪も溶ける

だろう。


男は一度外を見て、また前に向きなおした。外の様子を確認したんだろう。

そしてまた布団をかぶり、寝る。しかし、どうやらもう眠ることはできないようだ。


「お〜〜〜い! 起きろ〜〜〜シン!」


その大きな声とともに、パンパンと手を叩くような音がやかましく聞こえてきた。

しかし、シンと呼ばれたその男は、それを無視して「ん〜」とうめきながら寝返りをうつ。

だが、渋い声はもうすぐそこまで近づいてきていた。


「おいこら! おきろシン!」


バンッ! と窓を叩かれた。シンのベットは窓のすぐ隣で隣接しているため、

その音はさらにうるさく聞こえてくる。いくら耳をふさいでも耳の奥まで入り込んでくる

その渋い男の声と、窓をバンバンと叩く音に、もう我慢できないシンは、ついに耐えかねて

勢いよくベットを飛び起きた。


「だあーー!! うるせえ! なんだよ親父! 朝からうるっせーんだよ!」

「うるさくねえ! さっさと出てこないと、窓を叩き割るぞ!」


激しい交渉の末、シンは遂に小屋を出た。


「やっと起きたか、我が息子よ!」

「せーな……もう起きてはいたんだよ……」

「ベットに入ってたら、起きてるうちにはいらん!」


いつの時代の親父だかわからないセリフ……まあ、3億年前だが。

この時代に人間は存在した。なに? なぜその歴史が残っていないのかって?

ふふふ……それは謎さ……。


「今日が何の日かわかってんのか!」

「母さんの命日だろ?」


目ヤニをつけたままの顔で、シンはボサボサの髪をかきながら平然と言う。

父は怒った様子で喋り続ける。


「そうだ! すぐに母さんの墓に行くぞ!」


そのままシンは父に後頭部をつかまれ、無理やり雪の中を引きずられて行った。




静かな墓地で、線香の匂いがするなか、シンとその父は両手を合わせ、目をつむって

立っていた。


「母さん……」


静寂のなかで、シンの声が妙に大きく聞こえ、印象に残った。


「親父……俺、王国を……グレール王国を許さねえぜ……」


シンは目を薄くあけ、言う。父は黙ったままだ。


シンの母・シーヌは、南のゴンドワナにある、グレール王国に殺された。

去年の冬、グレール王国は突如北のローラシア全域に攻め入ってきた。ゴンドワナの半分

を占めるグレール王国も、流石にローラシア全てを制圧する軍事力はない。

だからグレールは、まずローラシアで最もグレールに近く、そして小さい地

イスラを攻めた。


そう、そこが、シンの住む場所なのである。


グレール王国に攻められ、その一軍隊にシーヌは殺された。今日がその命日なのだ。


「親父……俺、決めたよ」

「む……何だ?」


そのあと少しもったいぶって、またシンは口を開いた。


「俺……そろそろ独り立ちする……」

「なに?」


父は片目を開き、手を合わせたまま顔を歪める。

そして言う。


「なにか、思うところがあるようだな」


父は真剣な眼差しでシンに言う。手は合わせたままだ。

シンは両手を離し、そして固く拳を握り締めた。


「俺、グレール王国と戦う。母さんを殺したグレール王国を許せねぇ。

 だから、俺、このイスラを抜けて、都ライルに行く。今はもう、グレール王国と

 ローラシア全ての戦争になってる。ゴンドワナのグレール以外の国は沈黙状態とはいえ、

 今は少しでもローラシアに力が必要なんだ!」


父はまた黙り込んだ。ふうと溜息をついて、しばらく黙る。

それにつられてシンも溜息。二人がともに一息ついてから、父は静かに言い出した。


「シン……お前の槍は、確かになかなかのもの。だがな……」


父はそれから少し間を置いて、続ける。


「お前が憎しみで戦う限り、その先へ進む道は開けん。よく覚えておけ」


父も両手を離し、墓から小屋に向かって歩き出した。

そのとき、シンには父の言葉の意味がわからなかった。だが、なんとなく心に染み、

笑った。


「ああ、そうだな! 親父!」


そう言って走りだした息子と、その隣を歩く父。

それは微笑ましい光景なのか、それとも……。




この少年、シンが、後にこの大陸「パンゲア」を救う男になるのだった……。


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