第四話
アリーの家で、出されたお茶をすすりながら考える。
ここで殺すべきか。
俺が今まで依頼で殺してきたのは何の面識もないやつらだ。こうやってお茶をして、一緒に話し合った人を殺したことなんてない。それに、俺のことをお姉様と呼んで慕ってくれている人を殺すのは忍びない。お姉様はどうかと思うが。しかし依頼は国から直接出されたもの。断ったらありもしない罪をでっち上げられて処刑されるのは目に見えている。
アリーは今俺のひざを枕にして安らかな寝顔で眠っている。今なら殺すのは簡単だ。俺はいつもの短剣を右だけ抜き、アリーの細い首にあてがい―――
だめだ。殺せそうにない。俺はまだそこまで人間をやめきれないんでね、と誰に言うでもなく言い訳する。短剣を鞘に収める。
それにどっちにしても俺は国に殺されるだろう。アリーに聞いたところによると、この国は異世界から勇者を召喚したらしい。そのときに多大な魔力を使う為、魔術師を必要とした。そこで大量の報酬を出すと言って魔術師達を国に呼んだそうだ。アリーはまだ若く、魔法の制御もまだまだだが、幸か不幸か魔力をたくさん持っていたため魔力タンク的な扱いで召喚に呼びだされたらしい。そして、勇者召喚は成功し、余計な事を知った用済みの魔術師達は始末する。つまり勇者召喚のことを知ってしまった俺も殺害対象に入るわけだ。
「面倒なことに巻き込まれちまったな」
依頼を完遂してもしなくても俺は殺される。それなら殺す必要はない。しかし国に狙われているのにどうやって生きていくか。これが問題だ。ほかの国に逃げ出すしか無いのだろうか。ほかの国に当てなんて無いのに?
――幸い、依頼の期限は三日後だ。とりあえず帰っておっさんに相談しよう。
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「――というわけなんだ、おっさん」
おっさんは顎に手をあて、難しそうな顔をしてうなる。
「う~む、それは厄介なことを持ち込んできたな.....」
「悪い」
「それなら、別の国に行くしかない、か....」
「やっぱりそれしかないのか、ん?何で国はそんなに勇者の存在を隠すんだ?」
「魔王にばれるとやばいからじゃないのか?」
この世界には普通に魔王がいる。魔王のイメージは皆さんの思っている通り、魔物を従えてこの世界を征服しようとしている感じだ。
「そうかぁ」
何かが引っかかるが、そういうことにしておこうか。ソファーに座りなおし、話を進める。
「で、どうする?」
「う~む....森に隠居するか?」
「は?」
「だから、事態が沈静化するまで森に小屋でも建ててそのアリーとか言うやつと暮らしていればいいんじゃないのか?」
「そう、か」
「そんな顔するなよ、今生の別れってわけでもないし、な?」
いつの間にかしけた面をしていたようだ。そうだな、しばらく森に籠もるだけじゃないか。依頼によってはよくこういったこともしたし。
「できるだけ早く出たほうがいい、少しは連絡よこせよ」
「おう。じゃ、またな」
「おう」
そう言って、俺はギルドを後にした。
今日は調子が悪かったので、少し短めです。