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第二十一話

久々の投稿となります。

お待たせいたしました。

「なんなんだよこれ!」


 思わず声を荒げる。

 それもそうだ、ただ普通に普通の町に入っただけで急に石を投げつけられ、追い出されそうになったのだから。


 アリーの頭の上に乗った子供ドラゴンが「きゅう!」と鳴く。コイツのせいで俺たちは、という考えに至って、すぐに首を振った。

 悪いのはこいつじゃない、まずは早くこの町から立ち去らねば――


「さ、ここは危ないから早く――」

「なんでドラゴンと一緒にいるだけで酷いことされないといけないんですか!この町、ちょっとおかしいです!」


 おいいいいい!

 なんでそうなるんだ!普通は危ない場所には近寄らないのが鉄則だろうに!


「確かに.....ここの町、少しおかしいわね」

「フロルまで!」

「いいじゃないですか、何も減るわけじゃないし」

「俺のSAN値が.....いや、何も言うまい」


 なんでこんな時にめんどくさそうなことにわざわざ首を突っ込むなんて、ドMかよ。


「もう良いよ、勝手にすれば?」

「もう、すねないでくださいよ~」


 す、拗ねてないし!








~~~~~~





「で、まずは何をするんだ?」


 拗ねているという誤解を解くのに少々手間取ったが、なんとか誤解を解くことに成功した。その際アリーとフロルがなんだか優しい目でこちらを見つめていた気がするけど、


きっと気のせいだろう。


「まずは、情報収集からじゃないですか?」

「そうね」


 というわけで、情報収集をすることになったらしい。

 ん?でも....


「どうやって情報収集をするんだ?」

「そんなこと、簡単よ」

「え?」


 この状況で、一体どうやって情報を集めるというんだ?


「まず、そこらへんを歩いてる人を捕まえてロープで縛って、ケツの穴から手ェ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせて――」

「やめて差し上げろ」

「そうですよ、そんなことしたら可愛そうです!」


 と、アリーもご立腹のようだ。

 それも当然だろう。そんなギャグみたいなことを現実でやるなんて、かわいそうだもんな。


「そこはドタマかち割って脳みそチューチュー吸うたる――」

「だからやめて差し上げろ」


 なぜそんな発想が出るのか。怖すぎるわ、この仲間たち。

 まあ、どうせ冗談なんだろうけど。


「つまり、具体的な方法は考えていないってことだろ?」

「.....恥ずかしながら......」

「う~ん....」


 じゃあ、もうどうしようも無いんじゃないか?

 ここの住民たちに石を投げられつつ、町の外に逃げるしか――


 その時。

 不意に背後から、ガシャンという音が聞こえた。


「あ......」


 振り向くと、アリーの頭の上にいるドラゴンを指差して、立ちすくむ少年の姿が。


「ぅ.....うわあああああああ!」

「うるさい!場所が知れるだろ!」


 俺は少年のうなじに、的確かつ後遺症の残らない程度の攻撃を加え、少年を気絶させた。だって、あの声でまた町の人が寄ってきたら、アリーたちが危ないから。


「うわぁ.....」


 やめて!そんな目で俺を見るのはやめて、アリー!

 これは二人のためにやったことなんだよ!!









「う、うぅ~ん」

「大丈夫?」

 

 目が覚めると、銀髪の少女が僕を見下ろしてた。少女は整った顔立ちをしており、意識が朦朧としている僕にはまるで天使のように見えた。もしくはエンジェル。


 初対面の少女をエンジェルと見間違えた時点で、僕はもう「マイ・エンジェル」のとりこになっているのかもしれなかった。


 でも、頭にふさふさの耳が生えていた。....犬?

 不思議そうに見つめていると、その視線に気づいたようで、少女がパッとフードをかぶった。次にフードを脱いだときには、既に耳は消えていた。


 .....見間違いかな?

 

「よ、よかった、大丈夫そうだね!あなた、そこに倒れてたんだよ?何かあったの?」

「うわぁ......うわぁ」


 少女に見とれていて気が付かなかったけど、どうやらほかにも二人ほど人がいるようだ。

 一人は銀髪のお姉さんで、もう一人は僕よりも少し年下に見える女の子。

 女の子のほうは何故かフードを目深にかぶっている。

 .....なんか、二人がマイ・エンジェルに対して「うっわぁ....引くわ.....」的な学校のクラスにいる女子が僕を見るときみたいな目線を送っている気がするが、なぜだろう?


「と、ところで、なんでこんなところで倒れてたの?」

「えっと....なんでだっけ.....思い出せないや」


 マイエンジェルがよしっ、とこぶしを握った気がするけど、気のせいだよね?


「あ、そういえば、なんかすごいムキムキの怖い人たちが足早に去っていくのを見た気がするな......」


 .....なるほど、謎は解けた。

 僕はきっとその謎のムキムキさんたちに記憶がなくなるまでぼこぼこにされて、気絶してここに倒れているところをマイエンジェル(とついでに仲間)が発見して、開放していてくれたんだ!流石マイエンジェル!


「開放してくれてありがとうございます!マイエンジェ.....見知らぬお人!」

「い、いや、いい、大丈夫」


 あれ?マイエンジェルも「うっわぁ....引くわ.....」的な学校のクラスにいる女子が僕を見るときみたいな目線で僕を見てる気がするけど.....気のせいだな、うん(確信)。


「と、ところで.....」


 急に顔を耳に近づけ、マイエンジェルがささやく。


「実は私たち、黒の組織に追われているの」

「え?」


 黒の組織.....?

 何だそれ...。なんか.....聞いたことの無い単語のはずなのに、すごく僕の心を揺さぶってくる.....。


「ちょっと、面倒ごとに巻き込まれちゃってね....『青』に会わなければいけないの....」


 『青』....だって......?

 何だその単語、なんて思わせぶりでブリリアントなんだ....!

 

 じゃ無くて、こんな幼い子供が、そんな宿命を背負うなんて....!


「だから、出来れば少しかくまってくれない?」

「ああ.....もちろんいいぜ?」


 気づけば、僕の声は一段階低くなっていた。





~~~~~~




「なんかもう.....手馴れすぎてて引きます....何ですかその青とか黒の組織って.....口調変わってたし....」


 アリーになじられて、俺の顔が一気に赤面する。


「し...!仕方ないだろ!結局はかくまってもらえることになったんだし、情報もアイツから聞き出せばいいじゃん!万事解決じゃん!」


 そう、俺はちょっとした『方便』を利用して、見事目の前を歩く彼のハートを射止め、かくまってもらうことに成功したのだ。

 ちなみに、ドラゴンのキュウちゃんはばれては困るので俺のバックの中に入っている。地味に重いんだ、こいつ。


「でも....どうしてあんなに簡単にかくまってもらえたんですか?お姉さまは青だとか黒の組織だとか、ワケの分からないことしか言ってないのに」

「ふふふ....聞いて驚け、俺の人心把握術!」


 俺は胸をそらすと、ちょっとドヤ顔で言い放つ。....ちょっとだけ、な?


「まず、アイツの年齢は見た感じ13、4才くらいだ」

「そうですね」


 そう、そうなのだ。

 つまり、その年齢は俺のいた世界では中学二年生!ということは!


「中二病はそういうワードに弱いんだよ。それで、中二心をちょっとつついて....」

「よく分かりませんけど、なんかすごいですね.....ある意味」


 分かってくれたようで何よりだ。


「それよりも、殴って気絶させてそのことを隠してどこぞのムキムキさんのせいにして騙して自分は看病してあげた優しいキャラに昇格するのが、ちょっとどうかと思うんですけど.....」

「う、うるさい!仕方無かったんだ!」


 とにもかくにも、一時的な居場所は手に入れられたということだ。

 あくまで、一時的なものにすぎないのだけど。

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