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第二十話

「くそ、やっぱ嫌だな.....」


 おっさんに暗殺者のエリート教育(物理)を強制的にさせられていた俺だが、実はその過程でとある火山に放置されたことがある。

 そのときに火山に住んでいる火竜に襲われ、死にかけたという苦いを通り越してもはや痛い思い出がある。


 そのときに遭遇したのは下級の火竜で、俺もまだまだ未熟なときなので今なら余裕で逃げられるのだろうが、それでも怖いのには変わりがない。


「怖かったら私の胸に飛び込んでね?」

「いや、遠慮しとく」


 仕事をこなすあんさつことに対してはもはや嫌悪感はないが、女性の胸に埋まるのには生涯なれることはないだろう。

 もちろん、それが今世の母であったとしてもだ。


「あ、ドラゴンの子供です」


 アリーが言うとおり、ドラゴンの子供が俺の目でも見えるほどに近くまできた。


「あのドラゴン....やっぱり様子がおかしいわ」


 フロルが小さくつぶやいた。

 確かに、ドラゴンは体をよじるような動きをしたり、体を庇うようにして必死に羽ばたいたりしている。

 ドラゴンの動きと言えばもっと力強く、優雅なものだ。


 アリーが走り出したので、俺とフロルもそれに続く。


 ドラゴンに近づくたびに、その様子がおかしいのがもっとはっきりと分かるようになっていった。



 通常ならば淡く光り、輝いているはずの鱗は曇り。

 鱗越しでも分かるほどにガリガリに痩せほそり。

 体は全体的に傷ついており、数箇所深い傷もある。


「――ッ、大丈夫!?」


 急いでアリーが駆け寄る。


「すごい怪我してる!早く治療しないと!」


 かばんの中から包帯を取り出し、怪我のあるところに拙い治療を施していく。

 アリーがここまでほかの生物に優しいのは、エルフと言う自然とのつながりが深い種族であることが関係しているのかもしれない。

 .....それを言ったらフロルだって山神様らしいしかく言う俺もその娘なんだけどね?


「まて、アリー。それじゃあ治らない」

「お姉様....」


 見たところ、このドラゴンは結構衰弱しているようだ。

 包帯を巻いた程度ではこのまま死んでしまう可能性が高い。


 だが、こういう時こそ人類の武器が役に立つ。そう、人類の武器とは手の器用さ。もの作りのうまさだ。


「この回復薬を使う」


 俺が取り出したのは、初めてアリーと会う直前に買った四級回復薬。

 その回復薬でドラゴンの傷口をジャブジャブと洗う。少しびくびく怯えていたのはご愛嬌と言うことで。


 と、俺が回復薬をかけたところからまるで逆再生のように傷口がふさがっていく。

 俺も始めてみたときは驚いたが、これが魔法パワーだと言うことだ。


「すごい、お姉様すごいです!」


 いや、すごいのは俺じゃないんだけどね?





~~~~~~




「きゅう!きゅう!」


 懐いた。

 それはもう、がっつりと。


 .....アリーに。




 あの後、目が覚めたドラゴンはどうやらアリーが助けてくれたものと思ったらしく、アリーにべたべたに懐いた。

 いや、確かにアリーのおかげで助かったのには間違いはないのだけれども。俺だって役には立ったと思うし、差し出した指を噛み千切ろうとするのはやめてくれませんかね。


 なんか、せっかく助けたのに俺のことは噛むしアリーは俺にばっか懐いていたのがドラゴンといちゃいちゃして俺はぽつーん、って感じだし.....。

 これ、嫉妬って言うんだろうか。


「きゅう!」

「さすがにいつまでもドラゴンって呼ぶのもかわいそうかな。う~ん.....そうだ!きゅうって鳴くから、キュウちゃんにしよう!」


 安直だな。


「かわいいと思いません!?」


 俺に聞かれても。


「ああ、いいと思うぞ」


 まあ、答えるんだけれども。

 完全に忘れてたわけじゃなく、離しかけてきたことがうれしいとか....そんなんじゃないんだからね!!


 って、ツンデレてる場合じゃなかった。


「どうするんだ?そいつ」

「キュウちゃんです」

「....キュウちゃん」


 別にいいじゃん。


「キュウちゃんは、連れて行こうと思うんですけど.....だめですか....?」


 うるうると上目遣いで頼み込むアリー。

 そ、そんな目で見ても無駄なんだからな!どうせお母さんが世話することになるんでしょ!分かってるんだから!


「....どうする?フロル」


 一人で脳内寸劇するのもむなしくなり、フロルに任せることにした。

 この中で一番年上だからな、妥当な判断だろう。


「う~ん、別にいいんじゃないかしら。キュウちゃんも懐いてるみたいだし」


 まあ、フロルがそういうなら。


「ちゃんと世話しろよ、アリー」

「分かってます!」


 返事だけは元気がいいが、そう言うやつほど最後にはお母さんが世話をすることになるんだよな。まあ、アリーのことだから大丈夫だろう。

 幼女の癖にしっかり者だから。



「....さて、話も纏まったことだし、そろそろいくか」

「え?町によっていかないんですか?」

「え?でも早く行かないとまた追っ手が来るかも知れないだろ?」

「えぇ.....フロルさん、どう思いますか?」


 またもや上目遣い、発動。

 たじろぐフロル。


「ま、まあいいんじゃないかしら。よっていっても」


 裏切ったな!




~~~~~~




 結局空飛ぶ町に入ったのはいいのだが.....。


「なんか、視線を感じるな......」


 そう、何故か周りの人の視線が痛いほど俺たちに突き刺さるのだ。

 しかも、歓迎の類ではない、敵対の視線が。


「あわわ......」


 こんなに視線を感じるが初めてなのか、自分が町に寄ろうなんて言い出したせいでこんな視線を向けられていることに罪悪感を感じているのか。アリーはショート寸前のようだ。

 キュウちゃんはアリーの頭の上でぱたぱたと呑気に飛んでいる。


 気楽でいいな、ドラゴンは。


「これは....町の人に直接聞いたほうがいいかもしれないわね」


 町の人たちのただならぬ雰囲気に、フロルも警戒気味だ。

 フロルの言うとおりに、町の人に話しかけて事情を聞こうかと思い始めた。


 そんなときだった。


「いてっ」


 アリーが急に立ち止まる。


「どうした?」

「なんか急に石が.....」

「石?」


 ひゅっ。


「いてっ!」


 今度は俺にも見えた。

 どこかから、石が投げられている。それも、そこそこ大きな、下手をすればいたずらではすまないレベルの石だ。


「おい、誰だ!」


 バシッ。


 今度は飛んできた石を俺が叩き落した。

 

 ――いったい誰が投げてきているんだ?

 

 石が飛んできた方向を警戒していると.....。


「イタっ、痛い!」


 今度は別の方向から二つ飛んできた。

 どうやら、石を投げてきているのは一人ではないようだ。


「誰だ!いい加減にしろ!」

「いい加減にするのはお前らだ!!」


 更に飛んでくる石の量が多くなる。


「竜をつれてくるな!」

「この町に竜を入れるな!」

「帰れ、この厄病神が!」


 今のところは俺が打ち落としているが、この調子だと落としきれなくなるのも時間の問題だろう。


「危ないわね、ここは逃げたほうがいいわ」

「俺も同意見だ」

「ふえぇ....」


 俺たちは、細い路地へと逃げ出した。

新しく連載を始めました。


タイトル『不老の体とは言ったけど、魔道書なんて言ってない。』

URL『http://ncode.syosetu.com/n6945cn/』

もしくは小説情報から。


TSモノです。というか、この作者はほぼTSしかかけません。

もしよければ見てやってください。


べ、べつに、宣伝とかじゃないんだからね!

ポイントなんて、ほしくないんだから!

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