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第十八話

 目の前の男は機能性を重視したミスリル製のよろいを身に着けている。ミスリル製の鎧は頑丈で軽いが、男がつけているものはミスリル製だろうと動きを阻害しかねないほどに体全体を覆っていた。

 あれでは関節の動きも制限される上に、重さですぐに体力を奪われてしまうだろう。


 だが、あの男の圧倒的なまでのオーラは、それらの要素を全て含めてもまるで勝ち目がないように思わせる。

 それほどまでの、圧倒的な力の差が彼我にはあった。


「我が名はオルトン。オルトン・ランスだ。貴様らに1対1の決闘を申し込む」

「なっ.....」


 決闘とは、絶対に逃げ出したり卑怯な手を使わないと紙に宣誓した上で行う、1対1のデスマッチだ。実際は卑怯なことをしても何かペナルティがあるわけでなないが、その者の信頼は地に落ちる。


 つまりオルトンは、俺たちのうち誰かと決闘することによって他の2人が仲間を見捨てて逃げ出せないようにするつもりなのだ。

 確かに、仲間を見捨てるのは後味が悪い。どうにかしてこの決闘を断らねば。


 そうじゃなくとも、3対1のこの状況で決闘を受けるなんて、よく考えてみればこっちに有利なことなんて1つもないじゃないか。


「嫌だ」

「なっ、貴様!決闘を断るというのか!決闘には長く深い歴史があってだな、古代より古く利用されてきた決闘の――」


 もしかしたらこいつ、馬鹿なんじゃないだろうか。

 .....とは思ったものの、こうやって決闘の解説(?)を通津得ている割には構えが一切ぶれていない。というか、より殺気が増していっている気もする。


 フロルとアリーはそれに気づいているのかいないのか、急に解説を始めたオルトンをポカンとしてみている。これは気づいていないのかもしれない。


 解説の声とともに徐々に高まっていた殺気が頂点に達した瞬間。


「何はともあれ、決闘を断るなんて――フッ」


 オルトンが消えた。

 いや、消えたかに見える速度で突進してきたのだ。俺にもかろうじて見える程度。

 そして突進したさきは――


「きゃっ」


 俺の現世での母さん、フロルだった。


「女に手を出すというのは少し忍びないが、貴様も神であろう?これぐらいなら問題はないはずだ」


 先ほどよりも数段低い声で話すオルトン。

 どうやら、フロルがそこそこに力のある神だということがばれていたようだ。


「だ、大丈夫ですか!?」


 あわてて駆け寄るアリー。だが、敵がいる状況でその隙は――


「ふむ、貴様はただの魔法使いのようだな」


 槍でなぎ払われ、吹っ飛ばされるアリー。

 オルトンから目を離さないようにちらりと2人の様子を伺うが、どうやら槍の刃の部分ではなく、つばの辺りで殴ったようだ。

 気絶してはいるが、命に別状はないだろう。


「残りは貴様1人か」


 そういってこちらに槍を構えるオルトン。対して俺の武器は、いつも使っている短剣よりもさらに短いクナイのようなものが2つだけ。

 勝ち目はないといってもいいだろう。


 だからといって諦めるわけがない。諦めてしまえばそこで試合.....人生終了だ。


 意識を集中して、氷を精製する準備をする。これで一瞬にして氷を生成できるはずだ。


「フッ――」


 息を軽く吐きながらこちらに突進してくる。だが、その突進に先ほどのスピードはなかった。だからといって、油断できる相手ではないが。


 俺に向かって走るオルトンの足元に、ブロック状の氷を精製する。これで足止めできれば、だいぶ楽なんだが――。

 なんて、考えが甘かったようだ。


 足元の氷をぶち壊して、オルトンは突進してくる。

 正直、ここまで突進力があるとは思わなかった。魔法で補助でもしているのだろうか。だが、そう簡単に死ぬわけにも行かない。


 即座に横に飛んで、唸りを上げる槍をかわした。

 まさかかわされると思っていなかったのか、少しよろめくがすぐに耐性を立て直される。無理なかわし方をして耐性を崩したのはこちらも同じ、攻撃する暇はなかった。


「なかなかやるな。だが次で終わりだ」


 ぼそり、と何かを呟くオルトン。

 直後、オルトンの魔力が爆発的に膨れ上がった。その暴力的な魔力は荒れ狂う風となり、俺の体を打った。


 そして、オルトンは突進の構えを取り――


「呪い、魔力強奪」


 フロルの声が聞こえた瞬間、地面に崩れ落ちた。




~~~~~~



「で、あれはなんだったんだ?」


 獣形態になった俺たちは、宿から離れるように走っていた。

 そろそろ敵の姿も見えなくなってきたころだし、少しぐらいは気を抜いてもいいだろう。

 そう思い、さっきあった出来事、つまり急にオルトンが倒れたことについて説明を求めた。まあ、最後にフロルが言ってた言葉で大体の想像はつくが。


「あれは呪いといってね、神が年に1回だけ使える能力なの。

 呪いにも色々種類があるんだけど、今回使ったのはしばらく魔力が練れなくなる呪い。あのオルトンって人は身体能力強化魔法が異常にうまかったから、これを使わせてもらったのよ」


 そういってふふふ、と笑うフロル。

 だがそんな能力、簡単に使ってしまっていいのだろうか。


「まあ、あんまり呪いをかけすぎると神としての格が下がっちゃうんだけど、ここ30年はつかってなかったし、大丈夫よ」


 まあ、そういうことならいいのだが。


 なにはともあれ、みんな無事でよかった。

 今回はフロルの呪いがあったからよかったものの、次はフロルの手助けは望めない。もし、また追っ手が来たら、俺はどうすればいいんだろうか。


 砂漠の終わりが見える中、俺はそんな風に考えていた。


エタってませんよおおおお

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