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第十三話

「申し訳ございませんでしたァッ!」


目の前でアリーが秘密兵器、土下座をぶちかます。そんな微笑ましい(!?)状況を見て苦笑いする俺達。これって周りから見てどうなんだろうか。幼女を無理やり土下座させてニヤニヤ笑う怪しげなローブの男と女。いや、この場合は女と少女か。前者なら「おまわりさんこっちでーす!」だが。ご、誤解だー。


「いやいや、大丈夫ですよ。だから顔を上げてください」


そう言ってフロルさんは苦笑いしながらなだめる。が、アリーはまったく顔をあげようとしない。それどころか、地面に額を打ち付けだした。そのあまりにシュールな光景に、思わず噴き出しそうになるが、本人はいたって真面目に謝っているつもりなので、どうにか我慢する。


本人は謝っているつもり....プククク。


「いやいやいや、森神もりがみ様をわざとではないにしても殺めてしまうところだったのです!こんなことで許されるはずもございませんが、申し訳ございませんでしたッ」


ガンガンガンガンガンガン――

粗末な竪穴式住居の中に幼女アリーの額と地面がぶつかる音が響く。ってかガンガンって。ガンガンって!どれだけ頭固いんだよ。プクククク。


「ま、まあアリー落ち着けって。それに、アリーだって知らなかったんだろ?俺達が――玉ねぎを食べれなかったってこと」


そう、俺達は玉ねぎが食べれなかったのだ。


たまたまアリーが作ったご飯の中に玉ねぎが入っていたと言う理由だけで、俺達は死にかけたのだ。


よく犬には玉ねぎを食べさせてはいけないと言うが、それがなんとフェンリルであるフロルさんにも適用されているようだ。狼なのに。俺はフェンリルの獣人だからだろうか。


しかも犬でも個人差はあるものの、死にいたるケースがあると言うのに俺達はそれ以上に玉ねぎに対して敏感だった。食べたとたんに意識を失ってぶっ倒れるほどには。


「ああ.....神を殺しかけてしまうなんて......この罪は万死に値するぅッ」


アイテムボックスから俺があげた安物ともいえないが高級品とも言いがたい微妙な値段だった短剣を出すと、自分の喉にあてがった。表情を伺うに、本気と書いてマジと読む感じの顔だ。

これはやばいと思った俺は、即座にアリーの腕を捻り上げると、短剣を奪いマウントポジションを取る。


「ひっぐ、ひぐ、ううぅ」


涙と鼻水を垂らしながら泣きじゃくる幼女を拘束する.....危ない香りがしてきたぞ。

それにしても.....


「あんた、ホントに神様なの?さっきこいつが森神様とか言ってたけど.....」


俺の股のしたでえぐえぐ泣いているアリーを指差して問う。アリーは見た目は幼女だが(実年齢は俺も知らない)こんなに泣いたのは見たこともないし、ましてやいきなり情緒不安定になって自殺未遂をするなんて、絶対に無いと思っていた。ただ単に俺とアリーの付き合いが短いだけと言うのもあるのかもしれないが。


「ああ、私はここら辺の森を統治する神です。これでも結構大きい土地を治めてるのもあってここら辺では有名なはずなんですが....」

「だから森神様というわけか」

「はい」


これでさっきからアリーが敬意――と言うにはちょっと行き過ぎているが――を払っている理由は分かった。だが、やはりアリーがあそこまでひれ伏すのは何か引っかかる。あいつのさっきの行動からは何か.....恐怖のような感情が見て取れた。


そんなふうに考えている俺の感情を表情から読み取ったのだろうか。フロルさんが口を開く。


「実は、私が今収めている森は昔は私ともう一人の森神で納めていたんです。そのもう一人の森神はすごく厳しい神でした。規律を守るものには普通に接していたのですが、少しでも規律を破ったものには、それはもう厳しい方でした」

「は、はあ」


いきなり話し出したフロルに戸惑うが、いきなり関係ない話をするはずは無いだろうと相槌を返す。


「それなのにアリーちゃんはエルフの規律を破って森の外に出た。数年前のことです。それに怒った前森神様がアリーを咎めた。その際に何をされたかは知りませんが、きっと怖いことでもされたんでしょう。それでアリーちゃんは森神を恐れるようになってしまったんです」

「へぇ~....なんでそんなこと知ってんの?」


アリーが昔の森神に何か恐ろしいことをされて森神が苦手になったのはわかる。だがなんでフロル現森神様はそのことを知っているんだ?


「私だって自分の森のことばかり考えていればいいってわけではないんです。イレギュラーな存在が現れたときはたとえ隣の森でも監視するのが森神ですから」


そういうものなのか、森神って。なんか俺の中での神様像が崩れ去っていく気がする。ハッ、もしかしてこの人は偽神様.....ってことは無いか。アリーの様子からして。


ま、そんなこんなでアリーは森神様という存在自体が怖くなってしまったってことか。それにしてもいったい何をされたんだ?森神自体が怖くなるほどって.....。それに、イレギュラー?ってなんの話だろうか。まあその辺は神様事情っぽいので突っ込みはしないが。


「私は怖いことなんてしないんですがね~。こんな可愛らしい子に怖いことなんてできるわけないじゃないですか」


いやその黒い笑みを引っ込めてから言って下さい。こら!変なところを触ろうとしない!


「じゃ、娘さん探し、がんばってくださいね」

「だからあなたが私のむすm――」

「スイマセン、俺達は手伝うわけには行かないんですよ。少し事情がありまして....」

「いや、だからあなたが――」


フロルさんが“なにか”を言おうとした瞬間。


――プルルルルルル


電話の着信音のような音がなった。


「あ、通信符つうしんふだ」


通信符というのは、まあ、電話みたいなもののことだ。手のひらぐらいの長方形の布に魔方陣が描かれており、その魔方陣の中心に小さな魔石――電池みたいなもの――がついている。通信符のいいところは安価であり、通信符同士を登録していればいつでも通話が可能というところだろう。近年、爆発的に広まってきている魔道具の一種だ。


「誰からですか?」


フロルさんは言おうとしていた言葉を飲み込んで、俺の通信符を覗き込む。覗き込んだところで誰からかかってきたかは分からないのだが、それは雰囲気というものだろう。


「たぶんギルマスですよ」

「ギルドに所属しているんですか?」

「まあ、成り行きでな」


暗殺者ギルドに所属しているとばれるといろいろ面倒なので、適当に言葉を濁しておく。話の内容が聞かれるとまずい類のものかもしれないので、少し距離をとってから真ん中の魔石を押して、耳に押し当てる。フロルさんも常識が無い人というわけでも無いようで、こちらに来ることはない。


最初の出来事は......俺のことを探している娘さんと間違えたようなのでテンションがあがって仕方が無いだろう。愛嬌があっていいことだ。


『もしもし、ケイスケか?』

「そうだけど?なんかあったの?おっさん」

『おっさんは余計だ。俺はまだ若い――まあそれは置いといて。どこからか情報が漏れたらしい。そっちに一小隊が向かっている。名目は国家反逆罪を犯した逆賊の処刑だ』

「.....え?」


俺はしばらく、声が出せなかった。

主人公氏は純血のフェンリルなのですが、自分は獣人だと信じて疑っていないようです。


いや、気づけよ。


あと、獣人は姿を変えたりは出来ません。


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