プロローグ
初の小説執筆です。
執筆の遅いヘタレ作者ですが、連作ミステリということで更新を続けていきたいと考えています。
暇潰し程度に読んでいただけると幸いです。
「おーい!健斗!置いてくぞ!」
「悪い、悪い。つい見とれてさ」
「何だ。お前はいつから女たらしになったんだ?」
「違うよ。部活動が盛んだからつい感慨深くなってたんだよ」
そういいながら俺は、男の横に並んで歩いた。
「そうか?俺の中学校はこことあまり変わりないが」
「俺の中学校は部活動が盛んじゃなかったんだよ。
部活動なんて、勉強の二の次だった」
そうだったのか、といいながら男は筋肉質の腕を見せてきた。
「見よ!この筋肉!中学3年間で鍛えたこの身体を!」
かちかちやぞ、と大声で笑いながら、俺に向かってそう叫んだ。
周りの他生徒に、クスクスと笑いながら見られているのを気配で感じた。
こいつといると、恥ずかしいことばかりだ。
俺は、苦笑しながら言った。
「鍛えた身体が自慢なら、文化部は見学しなくてよかったんじゃないか?
文化部で活動できる気質じゃないだろ。雄太は」
「いやいや!折角時間があるんだ!全ての部活動を知った上で決断したいだろ」
だろ、て聞かれても。その気持ちはわからないでもないが、無理がある。
この高校に部活動がいくつあると思ってんだ。
「よく考えてみろ。この高校には部活動が25個もあるんだぞ。
しかも、運動部は11、文化部が14。
運動部に絞った方が合理的だと俺は思うが」
「そうかな?楽しかったじゃないか。文化部の見学は」
「どこがだよ!意味がわからなくて頭が痛くなったわ。
オセロ部ってなんだよ。パズル部って部活として成立するのか?
しかも、将棋部とチェス部両方あるのってどうよ?
俺はどっちもどっちだと思うね」
俺はおもわず、ツッコミを早口で話してしまった。
それを雄太は聞いた途端、腹を抱えて笑い出した。
「俺は楽しかったよ」
「お前だけだよ。楽しんでたのは」
文化部の部活動見学の時、雄太は俺を見てゲラゲラ笑っていた。
何故なら、活動説明のとき心に生じたツッコミを口に出してしまっていたからだ。
説明している部員の真面目な対応がさらに笑いのツボにはめたのだろう。
「まあまあ。次の文化部で最後なんだから過ぎたことは気にするな。
次の見学が終わったら、どっかで買い食いしようぜ」
「次か・・・」
実は、次の部活動には大きな期待を持っていた。理由は一言では語れない。
まあ、いつか話すことにはなるかもしれないが。
「バイオケミカル部ってどんな部活動なんだろうな。
理系で難しいイメージしかわかないが」
「さぁ。眼鏡かけた真面目男子がもくもくと実験してるんじゃないか?」
「勉強部か。健斗にはぴったりだな」
「いや、俺には似合わないよ。むしろ、活動できない」
「どうしてだ?小学校の時、理科博士と呼ばれた男が。
毎回、理科のテストを100点とって先生泣かせだとも呼ばれてたのに」
よく覚えてるな。変なことだけは記憶しやがって。
そういえば、こいつには中学校のことを全く話してなかった。
「いや、俺実はさ・・・」
最後まで話そうとしたとき、雄太が立ち止まった。
「どうした?」
不思議に思い雄太の顔を覗き込むと、突然腹を抱えて膝をついた。
「おい、大丈夫か!」
心配になって肩を支えた。
しかし、その心配が杞憂だと言うことに直ぐわかった。
「・・・腹が痛い」
「・・・は?」
「笑いすぎて腹が痛くなった。WCいってくるわ」
WCというところで、語調を強めた。
「最後の部活動見学はどうすんだよ?」
「先にいっててくれ。後からいく」
そういって、雄太はWCに駆けていった。とんでもない早さだった。
本当に運動部に絞った方がいいと思うが。
そんな言葉にならないことを一人考えていたら、急に寂しくなった。
どうしようか。仕方ない。一人でいくか。
栃木県にある県立N高校の1号館の校舎から、自分の教室のある2号館に向かった。
バイオケミカル部のある、実験室に向かうためである。
この時、俺は高校一年だった。まだまだ若い、16歳である。
◇◆◇◆
俺の名前は中原健斗。とりあえず前置きしておく。
これは、実験と科学の物語だ。当然、科学を学ぶ人間の話である。
「科学は人を神にしてしまったんだ」
俺はこの言葉を、半分冗談で、残りは真実だと考えている。
それが社会にとって有益なのか、俺はいまだに答えが出せずにいる。
しかし、答えを出した女性科学者を俺は知っている。
その女性について、これから書いていくことにしよう。
俺を魅了した実験や不思議な事件と共に・・・。
まずは彼女との”出逢い”と俺の「体質」について書いていくことにする。