第5話 明かされるエイゼン・ウォーカーの秘密
ヴィクターが目を覚ますと、タイムトラベルをしたときのあの鏡の前に戻っていた。ヴィクターは現実に引き戻されたような感覚が走った。
そうだ、あの化け物がいるんだ........。警戒しながら建物の周辺をクリアリングした。クリアだ。
あの化物がいないかしっかりと確かめた後でサリバンたちの死体を確認した。ヴィクターはサリバンたちを土に埋めて、全員の墓を作った。ダニーの墓にはしっかりとコーラをかけてやった。もちろんペプシの方だ。きっとダニーも、天国でペプシマンごっこをしていることだろう......。
置き去りにされていた荷物を取って、夢から覚めたように銃を装備して、歩き出した。
目的地が決まっていなくて、ただ彷徨うだけの前とは違った。今はしっかり自分でどこへ行けばいいのか分かっていた。
(待ってろよ。博士。)
博士のところへ行くとは言っても、こんな激戦区の場所に拠点を構えている訳がない。とりあえず激戦区から離れることにした。
(これは逃げじゃない。進むための一歩なんだ。)
ヴィクターがしばらく歩いていると、
??「キャーーーーーーー!!」
子どもの叫び声が聞こえた。ヴィクターはすぐにその声の主を探して走り回った。この地獄のような世界で、一つでも救える命があるのなら救わない手はない。
(どこだ......どこにいる.......??)
ヴィクターはようやくその声の主を見つけた。そのときヴィクターは少し安心したような顔をした。そこにいたのはさっき別れを告げたばかりの博士だった。正確に言うとこの世界線の博士だ。だから、ヴィクターとは面識がないというわけだ。
「だって、犬怖いんだもん.......」
「落ち着くんだリリィ、ただの野犬じゃないか。あんまり大きい声を出すと、敵兵に見つかる。今のうちに拠点に戻るぞ。」
「うん....。」
(なんだ。ただの野犬か。良かった。)
ヴィクターはついさっきとはいえ、再会の喜びで博士に呼びかけてしまった。
「なあ、博士!........」
ヴィクターが話し終わる前に博士はヴィクターに向けて、何か銃のような物の引き金を引いた。ヴィクターはビリッと音を立てて地面に倒れた。
「全く。だから大声を出すなと言ったのだ。敵兵が来てしまったではないか。たまたま電気ショック弾が残っていたから良いものを。」
「ごめんなさい....。」
「仲間を呼んだかもしれん。早く帰るぞ。」
博士は帰ろうとしたが、ヴィクターが大切そうに持っていた一枚の紙が視界に入る。それはヴィクターが向こうの世界線から持ち越した「BLACK NINJA」の設計図だった。
(....なぜ敵兵がこれを持っている....。)
「博士、帰らないの?」
「ああ、帰るさ。この男を連れてな。」
博士は重たそうにヴィクターを抱えて、自分の拠点へと向かった。
ヴィクターが目を覚ますと、そこには4人の人影が見えた。口にガムテープを貼られ、縛られているので話を聞くことしかできなかった。
「誰よ!この男は!あんた敵兵だったらどうするの??もしかしたら敵兵どころじゃ済まないかも....」
(レイだ。)
話には聞いていたが、可愛いじゃないか。ショートカットに褐色肌。身長は平均だが、悪くない。
「落ち着きなさいレイ。敵兵だったら博士たちに気づいた時点で射殺しているでしょう。エイゼンの手下だったら、影がないはずよ。」
(ルミノアだ。)
こっちは"お姉さん"オーラが出ている。長い髪は下の方がクルクルと巻いてある。身長は高い。高いぞ。こっちは色白といった肌色だ。
レイが確認すると、ヴィクターには影があった。
「影は.....、あるよ。エイゼンの手下ではないみたいけど、まだ信用できるかわからないよ!!」
「そうだ。だが、なぜこの男が私の資料室にあるはずの設計図を持っていたのかだ。この光の忍者の設計図を......。」
博士たちはヴィクターの口に貼られているガムテープを剥がした。
「聞け、若き軍人よ。なぜ光の忍者の設計図を持っている?知っていることを全て話すのだ。」
3人が何を話し出すのかと聞いていると、ヴィクターは今までに起こったことを全て話した。ヴィクターが必死に話している様子を、博士たちは真剣に聞いていた。
「ふむ。鏡に吸い込まれた先が別の世界線.....。この設計図は向こうの私から貰ってきたものだと.....。」
「そう!その通りだ博士!ようやく信じてくれたか!!」
「そうでもなければ説明がつきそうにないものねぇ。敵兵だったら知らないことを知りすぎているもの......。」
「じゃあ敵ではないんだね。リリィ出てきていいよ。」
「この人、悪い人じゃないよ。最初から分かってたもん。」
「リリィの勘は確かに当たるけど、今回はそうは行かなかったの。ちゃんと確認しなきゃ。」
「それはそうだけど.....」
リリィの勘はよく当たる。今日の天気を言い当てたり、「あっち行かないほうがいい。」と言った先に爆撃が落ちたりすることがあった。ただ勘が良いだけではないのかもしれない。ヴィクターはそのやりとりを見ながら、博士に向かって言った。
「なあ博士、俺の潔白は証明できただろ??」
「ああ、そうだな。君のする話によれば、光の古文書の最後のほうが読めなくなっていたと言ったな。だが、この世界ではそんなことはない。そして、エイゼン・ウォーカーの名前以外何も分からないと言っていたが、この世界ではそんなこともない。」
「何だって??エイゼン・ウォーカーの詳しい情報がこっちの世界線では分かるのか!!教えてくれ!俺はアイツを博士のためにぶっ倒さなきゃならないんだ!博士っていってもアンタとは少し違うのかもしれないが......」
レイは少し悲しげな顔で言った。
「こっちの博士もあっちと同じよ。ただ、少し違うのは諦めたってところよ。失った家族をね。」
「ああ、そうだ。世界線を書き換えてまで、この世界を壊してまで救うことなどしたくはない。愛する息子が好きだったこの世界だからな。......、エイゼン・ウォーカーの詳細だったな。おい、ルミノア。」
「はいはい。分かりましたよ。」
ルミノアは薄く束ねてある資料をヴィクターに手渡しした。




