第4話 再び現る影の化け物
「というのが私についての話とこの壁中にある鏡の謎だよ。鏡はタイムトラベルを可能にするゲートだったというわけだ。」(まあ、形にできたのは鏡を通したタイムトラベルのみだが.......)
校長先生のありがたいお言葉ぐらい長かった。体感そのぐらいだった。だが、もっと要約できてれば、体育教師のありがたいお言葉ぐらいにはなっていただろうに。ヴィクターは頷きながら何か思いついたように口を開いた。
「あんたの話はよーく分かった。」
「うむ。これから君にやってもらうのは、タイムトラベルを駆使して、この悲劇を無かったことにすることだ。」
「ああ、分かったよ。協力する。あの化け物のことも気になるしな。」
「ありがとう。嬉しいよ。今までずっと一人だったからな。寂しさが消えるというものだ。さて、腹が減っただろう。どうだ?このルミナスシティで食事でも。」
ヴィクターは驚いて、飲んでいたコーヒーを吹き出した。今までの話は全て耳が受け入れていたが、急に耳と体が拒絶したのだ。
「な、何だって??」
「だから、食事でもどうかと.....。」
「違う!!違うぞ!!その前だ!ここがどこだって??」
「ん?あ、ああ。ここはルミナスシティ。戦争に巻き込まれていない平和な街で.......」
「そこだよ。そこだ。俺の記憶では8年前のルミナスシティはもう戦争に巻き込まれている。」
博士は驚いたような顔で言った。
「何だと.......!?」
博士はしばらく考えたあと、ハッと気づいたような顔をして部屋に積み重なった資料の山を漁り始めた。そこから一枚の紙を取り出して、しばらく見つめたあとに博士はこういった。
「........、あぁ、なんということだ。ずっと考えていても分からなかったが、この欠けて解読ができなかった部分.....、なんということだ.....。」
「おい、どういうことだ!説明しろ!」
博士は古文書を震える手でヴィクターに渡した。博士は顔面蒼白という言葉が似合うような顔をしている。真っ青だった。
「どうやら私は少し早まりすぎたようだ....。取り返せないミスを犯してしまったかもしれない……..。」
「何が言いたい?」
「どうやら世界線が変わってしまったようだ……….。いや.....、正確には君の世界線だが………..。」
ヴィクターは全て繋がったというような顔をした。こういうときに出るのは、軍で培った冷静さだ。
“君から元の世界を奪ってしまったかもしれない。”
ヴィクターは5分間考えていた。何かブツブツと言っているが、5分経つと顔を上げて言った。
「なるほどな.......、そういうことか.....。」
"鏡を通した光情報の時間移動には世界線の変動が伴う……."
「これこそがこの古文書の読めなかった部分の内容……..、というわけか。」
博士は申し訳なさそうな顔をして言った。そしてヴィクターは勢い良く立ち上がって言い放った。
「なあ、アンタには悪いが、俺は元の世界に戻りたい。家族だっているんだ。その家族を置いていくわけにはいかない。」
しばらく博士は考えていた。この男を手放すのは惜しいという考えが巡ったようだ。だが、しばらくして博士は決断を下した。
「そうだな.......、物理学者の友人から聞いたことがある。その世界線にいた人間が元の世界線に戻らなければ、君のいた世界線が消えてしまう可能性があると......。だが……..、やっと現れた希望が行ってしまうのは少し惜しいな……。」
「博士、アンタはこの装置を作れるまでになったじゃないか。世界線が変わってしまったとはいえ、この装置は成功しているわけだ。そのうちすごいメカを作るだろうよ。」
博士の心から何かが抜けていくような気がした。悪い何かが抜けていくかのような、そんな感覚だった。
「ありがとう……..。失敗してしまったが、落ち込むにはまだ早いな。君を元の世界へと戻そう。よし、作業に取り掛かるぞ!」
装置が作動したようだ。また鏡から不思議な音がした。パソコンが起動したときの音、掃除機の吸い取っているときの音を再び連想させた。
博士から焦りが消えたような気がしたので、ヴィクターは少し微笑んだ。古文書の束から一枚の紙がヒラヒラと床に落ちた。ヴィクターはそれを拾い上げて、何が描いてあるのか広げてしばらく見つめた。
「なあ!これはアンタが描いたのかい??すごいイカした衣装じゃないか!」
「これは、(懐かしむように。)この古文書に書いてあることから可能と考えられる装備や武器、それを息子の好きだった異国の忍者と呼ばれる人間たちの服装と重ね合わせたものだ。」(もうすぐお別れだ。)
「聞いたことあるぞ!海外のスゲェ奴らだろ??ニンジャか………、(何か閃いた様子で)これ、貰ってくよ博士!」
「あ、ああ。」(名前を聞こうと思っていたのだ。)
「向こうの世界のアンタはきっと救われるだろうぜ!この俺、BLACK NINJA様の手によってな!!我ながら良い名前思いついちまったな!」
「(クスッと微笑みながら)もし向こうの私に会ったら、しっかりしろと言っておいてくれ!!あまり復讐心に狩られるなと!ルミノアの忠告を聞けと!」(名前を……)
「ああ!分かったよ!ガツンと言ってやる!」
(今しかない!)
「君の名前は!名はなんという!」(間に合うだろうか)
「俺の名前はヴィクター・クロウだ!!じゃあな博士!!」
ヴィクターは鏡から溢れ出す青白い光に包まれた。
すると、ヴィクターは再び青白い空間に飛ばされた。
(何回見ても不気味な場所だな......)
その青白い空間は、先ほどいた誰もいない洗面台へと姿を変えた。それは子供用服の撫でると色が変わるスパンコールのようだった。
小うるさい軍人はいなくなり、残ったのは老人一人。博士は振り返るように言った。
「BLACK NINJA…….、か。」
その日の夜、博士は眠っていた。静かな街に不気味な音が響き渡る。
シュル......、シュル......
シュル......、シュル......
シュル......、シュル......
博士は何か視線を感じて、目を開けた。そこにいたのは、あの影の化け物と若い男だった。
「な、なんだ貴様らは!!」
化け物は言った。
「こいつか。お前が探してたの。」
「ああ。感謝するよ。さて、博士。もう片方の古文書を渡してもらおうか。」




