最終版第11話 何でも上手くいくわけじゃない。
【パート29】
ヴィクターは走っていた。これを常人が見たらパラパラ漫画の一枚一枚が置き去りにされているように見えるだろう。
「すごい.....、すごいぞ!体が軽い......!」
ヴィクターは興奮しながら言った。
「そうだろう!これが私との修行の成果だ!だが、こんなものではないぞ!」
スペキュラオスが言った。
「他には......、アレだな!」
ヴィクターはそう言うと急ブレーキをかけた。
砂ぼこりが舞った。
そこでヴィクターは深呼吸をした。
「よし、やれる.....、やれるぞ....。」
ヴィクターは脚に力を入れて軽くジャンプをした。
思ったより高く飛べた。
その高さはおよそ10m。一般的な一戸建てならジャンプで屋根に乗れるほどの高さだ。
「凄いぞ!ヴィクター!しっかりと成果が出てきている!!」
ヴィクターは軽く着地した。
辺りには土煙が待っている。
「よし来た!ヤバかったな今の!」
「だが、まだ軽く跳んだだけだ。次は"本気で"やってみろ!」
ヴィクターはさっきよりも脚に力を集中した。そして一気にその力を解放した。
気づけばヴィクターは信じられないぐらいの高さにいた。
超大型巨人の頭に一回で行けそうな高さだ。
「飛びすぎだ!まだこの高さの着地の練習してないぞ!」
ヴィクターは大声で言った。
「やっただろう?このぐらいの高さの練習なら。」
スペキュラオスが不思議そうに言った。
「そりゃあ、あっちは痛覚無効だったからな!!あぁ!もう!どうすんだ!」
ここで死ぬのかもしれないとヴィクターは心の底から怯えていた。
頭のなかに一つのビジョンが思い浮かんだ。
着地の型が......。某ヒーロー映画の主人公がよくやるアレが......。
「アレだ!もうアレしかないぞ!!」
"スーパーヒーロー着地"!!
「すごいではないか!その着地方法!一体どこで覚えたのだ!」
スペキュラオスが知りたそうに言った。
「ああ、大好きな映画があってな。それのマネだ。結構ヒザにくるんだな。これ。」
ヴィクターの足元は着地の衝撃で地割れしていた。
【パート30】
基礎体力の確認をしている内にスーツの色が変わり始めた。
「おお!ヴィクター!!スーツがグレイになったぞ!!」
「そうか.....、さっきのはホワイトの身体強化も少しあったのか.....。」
ヴィクターは少しヘコんだ。
「ホワイトだけではあそこまでやれない。元気を出せ!我が弟子よ!!」
「そうだな。よし!グレイを試すぞ。」
「グレイなら瞬間移動ぐらいならできる。瞬間的な移動ってやつだ。ヴィクター、体が慣れないかもしれない。無理にとは言わないぞ。」
ヴィクターは深呼吸をして言った。
「やろう。グレイ!」
ヴィクターが地面を蹴った。
突風が遅れて過ぎ去った。
一瞬にして50mほどの移動をした。
「も、もうこんなところまで来てるぞ!!」
「だ、大丈夫か?普通の人間なら......」
「おうよ!これぐらいなら大丈夫だ!もちろん毎日訓練はするがな!」
(この男......、期待以上だ......。)
「他には、軽い物体の生成ならできるな。大事なのはイメージすることだ。今、必要なものを......、イメージするのだ。」
ヴィクターは苦しそうに目を瞑った。
「イメージ.....、イメージ......、」
ヴィクターの手元が青白く光った。
「お、できたぞ!って......、失敗か.....。」
「よくできているではないか。クナイだろう?」
スペキュラオスが不思議そうに言った。
「いや......、違うんだ......。」
「何が違う?」
「プラスチック製だ......、材質まで考えないとだったな......。」
地面に落ちたクナイは、軽い音を鳴らした。
「まあ、良くやったよ。そんなに落ち込むな......。」
「はぁ.......、練習しないとな......。」
ヴィクターは赤い夕焼けを背に歩き出した。




