最終版第5話 黒幕
【パート13】
ヴィクターはあの建物のなかに戻っていた。視界にルークの倒れた姿が現れた。ヴィクターは現実に引き戻された。
「ルーク!」
ヴィクターはルークに駆け寄った。
「ヴィクター.....、か......。」
血で染まった服を見てヴィクターは何かを堪えた。
「あいつは.....?あの化け物は?」
「消えたよ......、」
ルークは血を吐いた。
「そうか......、ゆっくりだ。ゆっくり深呼吸するんだ....。まだ.....、」
ルークはヴィクターの肩を掴んで引き寄せた。
「約束.....、忘れてないな?頼んだぞ......、ヴィクター......。」
ルークの力が抜けていくのを感じた。
「ああ、覚えてる.....。」
ヴィクターはルークの墓を掘った。
「天国にはコーラを持っていくんだよな......。」
墓の前にはコーラが3本置いてある。炭酸の抜ける音がする。
「お前が望んだ平和.......、俺が代わりに叶える。ルーク......」
ヴィクターは歩き出した。行き先はある。
【パート14】
置き去りにされていた荷物を取って、歩き出した。
目的地が決まっていなくて、ただ彷徨うだけの前とは違った。今はしっかり自分でどこへ行けばいいのか分かっていた。
(待ってろよ。博士。)
博士のところへ行くとは言っても、こんな激戦区の場所に拠点を構えている訳がない。とりあえず激戦区から離れることにした。
(これは進むための一歩なんだ。)
ヴィクターがしばらく歩いていると、
??「キャーーーーーーー!!」
子どもの叫び声が聞こえた。ヴィクターはすぐにその声の主を探して走り出した。
(どこだ......どこにいる.......??)
ヴィクターはようやくその声の主を見つけた。そのときヴィクターは少し安心したような顔をした。そこにいたのはさっき別れを告げたばかりの博士だった。
「だって、犬怖いんだもん.......」
「落ち着くんだリリィ、ただの野犬じゃないか。あんまり大きい声を出すと、敵兵に見つかる。今のうちに拠点に戻るぞ。」
「うん....。」
(なんだ。ただの野犬か。良かった。)
ヴィクターは再会の喜びで博士に呼びかけてしまった。
「なあ、博士!........」
ヴィクターが話し終わる前に博士はヴィクターに向けて、何か銃のような物の引き金を引いた。ヴィクターは体を痙攣させて地面に倒れた。
「全く。だから大声を出すなと言ったのだ。敵兵が来てしまったではないか。たまたま電気ショック弾が残っていたから良いものを。」
「ごめんなさい....。」
「仲間を呼んだかもしれん。早く帰るぞ。」
博士は帰ろうとしたが、ヴィクターが大切そうに持っていた一枚の紙が視界に入った。
それはヴィクターが向こうの世界線から持ち越した「BLACK NINJA」の設計図だった。
(....なぜ敵兵がこれを持っている....。)
「博士、帰らないの?」
「ああ、帰るさ。この男を連れてな。」
博士は重たそうにヴィクターを抱えて歩き出した。
【パート15】
ヴィクターが目を覚ますと、そこには4人の人影が見えた。口にガムテープを貼られ、縛られているので話を聞くことしかできなかった。
「誰よ!この男は!あんた敵兵だったらどうするの??もしかしたら敵兵どころじゃ済まないかも....」
(レイだ。)
話には聞いていたが、可愛い。ショートカットに褐色肌。
「落ち着きなさいレイ。敵兵だったら博士たちに気づいた時点で射殺しているでしょう。エイゼンの手下だったら、影がないはずよ。」
(ルミノアだ。)
"お姉さん"オーラを醸し出している。長髪で髪が巻いてある。
レイが確認すると、ヴィクターには影があった。
「影は.....、あるよ。エイゼンの手下ではないみたいけど......、まだ信用できるかわからないよ!!」
「そうだ。だが、なぜこの男が私の資料室にあるはずの設計図を持っていたのかだ。この光の忍者の設計図を......。」
博士たちはヴィクターの口に貼られているガムテープを剥がした。
「聞け、若き軍人よ。なぜ光の忍者の設計図を持っている?知っていることを全て話すのだ。」
3人が何を話し出すのかと聞いていると、ヴィクターは今までに起こったことを全て話した。ヴィクターが必死に話している様子を、博士たちは真剣に聞いていた。
「ふむ。鏡に吸い込まれた先が別の世界線.....。この設計図は向こうの私から貰ってきたものだと.....。」
「そう!その通りだ博士!ようやく信じてくれたか!!」
「そうでもなければ説明がつきそうにないものねぇ。敵兵だったら知らないことを知りすぎているもの......。」
「じゃあ敵ではないんだね。リリィ出てきていいよ。」
「この人、悪い人じゃないよ。最初から分かってたもん。」
「リリィの勘は確かに当たるけど、今回はそうは行かなかったの。ちゃんと確認しなきゃ。」
「それはそうだけど.....」
リリィの勘はよく当たる。今日の天気を言い当てたり、「あっち行かないほうがいい。」と言った先に爆撃が落ちたりすることがあった。ヴィクターはそのやりとりを見ながら、博士に向かって言った。
「なあ博士、俺の潔白は証明できただろ??」
「ああ、そうだな。君のする話によれば、光の古文書の最後のほうが読めなくなっていたと言ったな。だが、この世界ではそんなことはない。そして、エイゼン・ウォーカーの名前以外何も分からないと言っていたが、この世界ではそんなこともない。」
「何だって??エイゼン・ウォーカーの詳しい情報がこっちの世界線では分かるのか!!教えてくれ!俺はアイツを博士と仲間のためにぶっ倒さなきゃならない!博士っていってもアンタとは少し違うのかもしれないけどな......」
レイは少し悲しげな顔で言った。
「こっちの博士もあっちと同じよ。ただ、少し違うのは諦めたってところよ。失った家族をね。」
「ああ、そうだ。世界線を書き換えてまで、この世界を壊してまで救うことなどしたくはない。愛する息子が好きだったこの世界だからな。
......、エイゼン・ウォーカーの詳細だったな。おい、ルミノア。」
「はいはい。分かりましたよ。」
ルミノアは薄く束ねてある資料をヴィクターに手渡しした。




