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最終版第2話 平和な過去

【パート4】

ヴィクターは膝から崩れ落ちて泣いていた。


(ルークが死んだ.......、死んだ.......。)


そこに金属音が鳴り響いた。


「成功したのか.....、私の最後の希望.....。教えてくれ。君に起こったことの全てを.....。」


白髪の老人がこちらを見下ろしている。


「な.....、なんだ.....何なんだアンタは!」


ヴィクターは銃を探したが、鞄が見当たらなかった。


「混乱するのも無理はない。若き軍人よ。ここは君からしたら過去の時代だ。」


老人は髭を触りながら言った。


「過去.....??何を言ってるんだ......、アンタは!」


ヴィクターは老人の言葉を呑み込めなかった。


「君はタイムトラベルをしたのだよ。」


老人は告げるように言った。


「バカげたことを言ってんなよ!!タイムトラベルなんてものができるなら、ルークを.......、アイツを......、」


ヴィクターはまた泣き出した。


「その通りだ。失った全てを取り戻すのだ。そう、平和な世界をな。」


老人は歩きながら言った。


【パート5】

「平和な......、世界......?そうすれば......、ルークも.......?」


静寂な研究所に泣き声としゃっくりが一定のリズムで鳴り響いている。


「だから、そう言っているだろう。タイムトラベルを駆使して、未来を変えるのだ。」


「本当に過去だという証拠は........?ルークを取り戻せるなら協力する......。」


ヴィクターは立ち上がった。


「ふむ、百聞は一見にしかずと言う。君自身の目で確かめることだ。」


老人はそう言うと、壁にある大きな赤いボタンを押した。

巨大なシャッターがそれまで見えていなかった世界を見せた。視界に入ったのは戦争の「せ」の字も感じさせない平和な風景だった。

緑豊かな木々、その下で遊んでいる沢山の子供。鳥の鳴き声。元気な八百屋のばあちゃんまで、ヴィクターの知っている戦争が起きる前の"平和"があった。


「平和......、だ......。」


ヴィクターの瞳からは感動の涙が頬を伝った。


「どのくらい過去なんだ.........」


ヴィクターは老人に質問をした。


「信じる気になったか。」


「過去じゃなきゃこの光景は説明できない.....、戦争なんてなかった頃の......。」


「残念ながら戦争はすでに始まっている。あれからもう5年は経過している。」


「何だって?戦争が始まって5年って言うと巻き込まれてない場所なんて数か所しか無かったはずだ.....。」


「そうだ。その平和な数カ所がまさにここだ。5年経った今でもこの場所は巻き込まれていない。いずれこの地も......。」


ヴィクターはさっきから気になっていたことを質問した。


「平和を取り戻すって言ったって、何をすればいいんだ.....?」


「そうだな。やっと流れ着いてきた希望だ。君には説明をしておかなければ。ついてきなさい。全て話そう。」


老人はヴィクターに手招きをした。


【パート6】

ヴィクターが連れてこられたのは、歴史を感じる資料室だった。

そこには辞書を2冊分の厚い資料集が置いてあった。


「これが私の5年間だ。戦争に家族は殺され、全てを失った......。それ以来、この戦争を無かったことにして、愛する家族を取り戻すことだ。」


老人は話しながら資料をヴィクターに渡した。


「少し......、時間をくれ。」


そこに書かれていたのは、この戦争の発端となった悪の元凶。憎しみと憎悪の現れだろうか、ペンで何回も塗り潰したような跡がついていた。



"この戦争の元凶は、エイゼン・ウォーカー。"


ヴィクターはその名前を聞いて全くピンと来なかった。聞いたことのない名前だった。だが、ヴィクターはこの名前を聞いて少し鳥肌が立った。


「エイゼン.......、ウォーカー......??」


「そうだ。私も初めてこの名前に辿り着いたときは訳が分からなかった。エイゼン・ウォーカー。この男は確かに色んな事件の写真に写り込んでいる。」


「こいつを倒せば......、戦争を回避できるのか.....?」


老人は険しい顔で頷いて言った。


「そうだ。だが、この5年で突き止めることができたのは名前のみ。いろんな写真に写るこの男の名は確かにエイゼン・ウォーカー。これは間違いない。だが、これほど大きな戦争を巻き起こした男が本名を名乗る可能性はとても低い。そして、何よりこの男の居所が分からない。」


ヴィクターは閃いた顔で言った。


「タイムトラベルは.......?どうにでもなるだろ?」


「それはもう考えた。だができないのだ。」


「できないのか......、じゃあなんで俺だけ?」


老人は難しそうな顔で言った。


「君がここへ来れたのは奇跡なのだ。私は考古学者だから、理系の知識はさっぱりでな。この技術はまだ不完全というわけだ。」


老人はゴホンと前置きをして言った。


「君も気になっただろう。どうやって君が過去に来ることができたのかを。」


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