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次の日、学園に行く時は非常に気が重かった。


身支度は自分でしているのでそんなに着飾ったりはしない。平民の女性が着るような服よりやや華美な格好である。ちなみに古着だ。ミネルヴァのお家の店で購入した。


ミネルヴァにつきあってもらって、学園の女性の古着と被らないようにこの帝都の仕入先ではないところの服を教えてもらっている。


髪はあげることもなく適当に流している。


身支度を手伝ってくれるメイドさんは通いで短時間しか来られず、また日によって来る人が違う。


だいたい母の支度をしたら帰られ、こちらの支度はしない。最初はしてもらっていたが、自分の身支度は別料金だという話を聞いたので断ったのだ。


自分で支度するようになってから、一月近くになる。


それほど慣れていないため、自分だけだと、髪や格好などは、ごくごく簡単にしか整えられない。


母からは、このことで、また服のことでも貧乏くさいことはやめなさいなどと、文句を言われつづけている。


しかし家計を考えると、そこは節約したかったのだ。


何度か、お母様がそんなに服を買ったりしなければここまでお金で困らないのに、と言ってみたが、あまり相手にされなかったのだ。これでも少し控えてるのよ!とは言われたが。


ともあれ、自分で身支度をするようになったのには家計以外にも理由がある。


それは、通いのメイドさんが自分の身支度をまだしてくれていた一月近く前の話だった。


その日のメイドさんは、マリーと言うリデルより少し年上の生真面目なタイプの女性だった。


母は奥様方の集まりとかでこちらより早く出かけようとしていた。「じゃ、娘の身支度をお願いね」


メイドのマリーは言った。「奥様、リデル様は髪をあげたほうが印象が明るく見えると思います。最近、若い女性の間で流行りなんですよ。

リデル様の髪を結い上げてよろしかったでしょうか?」


「そうね、あなたの良いようにして頂戴な。」母は言い残すと出かけて行った。


「さ、リデル様はおぐしをあげましょうね」マリーは慣れた手付きで鏡の前に座る自分の髪をまとめていく。


「生え際もまとめましょうか…あ、あら…」マリーの手がとまった。リデルの髪の生え際に傷があるのが彼女の目に入った。

「そ、そんな…」彼女の手が震えだした。


リデルは思った。


…やはり近くで見たらわかるわよね…


これまでのメイドさんには髪はあげないように言ってきたけども、マリーは今回初めて私を担当して、しかも母に髪をあげる許可を直接とってしまった。


こちらでやめてほしいと言うと、母にも不審に思われてしまう…言えなくなってしまったのだった。


でも心中、流行していると聞いてその髪型をしてみたい気持ちもあったけど…


傷口は前より目立たないように思うから、近くでじっと見ない限り大丈夫かもしれない、そうも思った。


でも駄目だった。


こんな髪型を学園でさらしてたら、思い切り目立つとこだったかもしれない。


外で髪をあげるのはやはり諦めよう。



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