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リデルは口を開いて話し始めた。

声が震えず普通に話せていることを、奇妙に感じながら。


「ジェイド様の魅了の力を、こちらのお守りがはね返したんだと思うのです。


このお守りは、身につけている時に精神支配の魔法にかけられると、魔法をかけた者の目を見た時に、鏡のごとくその力をはね返してしまうというものなのです。


私は少年の装いをしていた時も、学園で最初に話をしたときも、目を合わせた時に、貴方様の魅了の力をはね返していたのでしょう。


貴方様は、御自分の魅了の力にかかったのです。


貴方様が私を愛していると思っていたのは、鏡のごとくはね返されたご自身の力…錯覚なのです。」


「そんなことが…いきなり何を言い出すのだ。」ジェイド様は目を見開いている。


「…この魅了の力にかかっている人物は、これは魅了にかかっているのですと教えられると、術がとけて、目が覚めるそうなんです。

私への思いとやらは、まだあるのでしょうか?」


ジェイド様はリデルを見たが、目をパチパチとさせた。

そして目を閉じて頭をふった。

「いや、しかし、これは…」

そして口ごもった。「今までとは、貴女が違って見える…」


ああ、そうなんだ。やっぱり…

やっぱりそうだったのね。


リデルは心が潰れそうになりながらも、笑顔を作った。


…私の足りないであろう淑女教育の成果、なんとかその力を発揮して!ここが踏ん張りどころよ…最大限に!

笑って!リデル、笑うのよ!


リデルは必死に笑顔を作り話を続けた。

「貴方がおつきあいされている女性の方へのお気持ち、今はどんなふうに感じられますか?


…魅了の影響が消え失せた今、以前の気持ちがよみがえったように思えてはいませんか?」


ジェイド様はぎゅっとまぶたを閉じた。そして両手で顔を覆った。

「…レイチェル…

…そんな、私はなんてことを…

彼女に合わせる顔がない!」


「おかしいと思っておりました。私を愛しているように話をされていても、私の中身は気にいらないような…


今思えば、愛する人と呼んで婚約した相手が、私であってその彼女でないことを、きっと貴方様は心の奥底では拒絶されていたんです。


友人が身分の高い方ばかりであるとか、お話にあったその女性の特徴ですものね。


私にむかい、身分が低い者とつきあうのをやめろと言ったのは、おそらく…


貴方様は彼女と私と、違う部分に違和感がありすぎて、なんとかそれを解消しようとされていたのではないでしょうか。


それに、学園で初めてお話した折、貴方様が私に対しああいう物言いをしたのは、彼女への思いを忘れさせて、私の方へ魅了されてしまうことに、心が支配されてしまうことに抵抗しようとされたからではないでしょうか?


私のこと、きっと悪しき魔女のように思えて、無意識にののしるような発言をされてしまっていたんじゃないでしょうか。」


リデルはそっと近づいて、両手で顔を覆ったままのジェイド様に話しかけた。

「ジェイド様はその方を裏切ったりしてはいなかったのです。

ずっとその方ただ一人を愛されていたのです。

魔法にかかって惑わされていた時期があるだけ…


大丈夫です、まだ間に合いますよ。

婚約の話は、正式に広めたわけではないですから。」

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