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リデルは帰宅後、両親にジェイド様に婚約間近で真剣なおつきあいのあった女性がいたことを、彼の取り巻きの女性から聞いたと告げた。


そして、自分は婚約解消を希望している、早急にジェイド様と話したいといった。

ジェイド様はその方と結ばれるべきだと。


両親は共に驚いていたが、事実関係は本人にしないといけない、いきなり本人の確認もとれないうちに婚約解消などの大事なことを決めてかかるべきではないと、そろって主張しだした。


「人気がある方との婚約なんて、まわりの女性達はどうにか婚約者になった女性の足を引っ張ろうとするものだわ。

この話だって、真実かどうかわかりゃしないじゃない。

いちいち流されてこの先どうするのよ。」

お母様はそう口にした。


「どうも妙だな。ジェイド君は私には、リデルを本当に好いているように見えた。大事にしてくれそうだと思っていたのだが。」

お父様は首をひねっている。


それに対し、リデルは、ジェイド様にはやはり自分はふさわしくないという気持ちが拭えないのですと話した。


これまでの友人と交流を禁止されてしまうような自分では、ジェイド様の隣に並ぶにはふさわしくないと思います、とも口にした。

こう口にすると、両親はともにきまり悪げに目をそらしてしまった。彼の希望をきいてリデルとミネルヴァとの手紙のやり取りを邪魔していたためだ。


「私、これまで親しくしてくれていた友人と付き合いをやめるように言う人を夫に持ちたくはないです。

私の言ってること、きっとわがままなんですよね?


私は我慢して自分の友人関係を精算しないと、彼のような方とは婚約する資格がない、そういう女であり人間なんですよね?


自分にいろいろ足りない部分があるのは百も承知しております。

外は顔面に傷もあることですし、中はこんなで別に大したことない。

男性からみたら、きっと結婚を真剣に考える対象にはなかなか至らないんですよね。


ジェイド様はだからきっと、せめて私の中身を彼の希望にあうように、叩き直して鋳型にはめこもうとされているんですよね。


きっと私には、こんな好条件な縁談は、今後無いでしょう。


でも、我慢して結婚して、生涯ジェイド様を支えることなど到底できません。


向こうだってひどく迷惑です。

…彼は幸せにならないでしょう。こんな私とでは。


私はジェイド様とは婚約は解消します。

たとえもう、今後、縁談を得られなかったとしても、そうするつもりです。


自分の身の振り方については、自分でもできそうな仕事を探して、働こうと思っております。

なので、今後、ミネルヴァからの手紙や連絡は、私にきちんととりついでください。」


話しながら涙がこぼれてしまう。感情を制御できない。

やはり自分には淑女教育が足りない。ジェイド様にはふさわしくない人間ということなのだろう。


お父様は気まずげにわかった、というのだった。


お母様も下を向きながら小さくうなづいていた。

「…リデルがずっと好いていた相手と結ばれて、幸せになるだろうと思ったのに。」

お母様が下を向いたままそう言ったが、私にもらい泣きをしていたようで涙声だった。


お母様、不出来な娘で、ごめんなさい…


「ジェイド君には、よく話を聞いてみる必要がある。

その女性とのつきあいは、いつ頃であったのかが問題だな。


場合によってはかなり不誠実な対応をされてしまったことになるからな。

うちにもだが、相手の女性にもだ。


ただ、最初に話したとおり、まずは事実関係をよく本人から聞いてみないことにはな。

お前の気持ちはわかったが、誤解があるまま突き進んではいけない。


婚約解消するかどうかは、彼の話を聞いてからになる。

相手の側のことも考えるのだぞ、リデル」


両親はすぐにでもジェイド様と話をしたがっていたが、まずは私と話をさせてもらうよう頼んだ。


彼は毎週のようにうちへ訪れていたので、おそらく明日か明後日には話ができるだろう。


ただ、ジェイド様とこの件や婚約解消について話をすることを考えると、リデルの心は深く沈むのだった。


また、リデルは両親には母の故郷である王国が復興したという話はしなかった。


このことは、下手をして広めてしまうと危うい結果をもたらすかもしれず、今の段階では慎重になる他なかった。


お父様が伯爵の爵位を受けられて良かった。お母様はその結果、伯爵婦人となるので、なにかあっても男爵だったときより守りはきくだろうから。




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