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「…あなたの言う通り、私には精神支配系の魔法への防御力とやらがある、そう書かれているようだった。ミネルヴァの予想当たっていたわ。
どうして私にこんな力があると予想できたのか教えて!
さっき、お父様からではなくお母様から引き継いだのだろうとは言ってたけど、そうそう推測できるものでもないでしょ?」
ミネルヴァはうなづいた。
「いとこのクガヤなんだけどね。実は復興した王国の王様と友人関係にあるのよ。
そこの王様って本当に対等に人を扱うらしいの。
誰かさんとは違う感じよね。」
あまりの話の展開にリデルは固まってしまったが、ミネルヴァは話を続けた。
「その王様に、クガヤから直接、あなたのお母様について話を聞いてもらったのよ。
以前の王国が火山の噴火で滅んだ時期に、帝国の端くんだりまで物見遊山に行った王族の女性について知らないかって聞いたんだって。
そしたら思い当たる節があるって。
リデルのお母様のお名前や姿形も伝えた上でのことらしいわ。
どうやら、王様の母君の、末の妹…王様の叔母上にあたるんですってね、あなたのお母様。」
ミネルヴァの話は続いた。
かの王様は、リデルの母アデルについて、たしか精神支配系魔法への防御の力の持ち主だったはずだと証言した。
そして今、鑑定した結果により、血筋を通してリデルにその力が伝えられているとはっきりしたのだ。
「リデル、その、いとこのクガヤがその王様と親密な繋がりがあることは、秘密にしてほしいの。
あの王国が復興したことは秘されている。
国境とかのことで、あまりはっきり国を再興したと広めてしまうと、この帝国と戦になる可能性もあるらしくて。
そうなると、いとこも敵国と商売して利益を得たことになるから、私の家も含めて、無事では済まなくなる。」
「そ、そんな、もちろんよ!」
「…それにリデル。あなたも下手すると敵国の王族の血を引く者として、あなたのお母様共々、人質扱いされる可能性がある」
「決して誰にも言わないわ!」
ミネルヴァはホッと息をついた。「その、一族の秘密を明かしたけど、これ、あなたとも一蓮托生だからね。」
「うん」素直にうなづくリデルを見て、ミネルヴァは緊張した様をほどいて少しニコッとした。
…ミネルヴァが腹を割って話をしてくれたので聞きたかったことは聞けたが、心配ごとがおさまったわけではなかった。
リデルの表情を見てミネルヴァは口を開いた。
「…リデル、婚約は解消する方向なのね。」
「…そう。」リデルはぼんやりと答える。
「両親に話してみるわ。あとジェイド様にも。…みんなどう反応するかわからないけど…」
「なんかね、本当にあなたに魔力があると周りに知れたら、今の婚約を解消するのって難しくなるかもしれないわ。」
リデルが首をかしげているので、ミネルヴァは説明した。
「少し前に話したと思うけど、魔力の持ち主とされている大貴族連中は、ほとんど魔法が使えなくなって来ているのよ。
その状況で使える者が判明して、それが婚姻可能な若い女性なら、まず間違いなく囲い込みに来るわよ。」
「そんな、ジェイド様に魅了の力があるのなら、彼だって数少ない使える魔力の持ち主だわ。
結婚相手が魔力を持っていなくても大丈夫なんじゃないかしら。」
「いやいや、そんな単純な話じゃないから。魔力持ちがバレたら、必ず囲い込みに来るから。
ジェイド様本人の婚約の本当の目的がどうあれ、そうなるとヴァンダル伯爵家が決してリデルのことを手放さないようにすると思うわ!」
自信を持って言い放つミネルヴァを見て、リデルは困ってしまった。
リデルはなんとか円満に婚約解消に持って行く方法はないかと、ミネルヴァと話しながら、考えていたのだった。
自分に魔力があるとジェイド様にもらしたら、かえって婚約解消ができなくなる可能性が出てくる。
それは困る…




