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リデルは知らないうちに店から外に出ていたようだった。また歩きだしているが、どこへ向かうべきなのか自分でもよくわかっていない。


護衛のレベラに不審がられないように、一応はアクセサリーの店を探しているような様子を装う。表面上、だけども。


「リデル!リデルじゃない!こんなところで」ミネルヴァの声がした。振り返ると、ミネルヴァがこちらを見ている。


「リデル、私の手紙読んでくれた?あれからなにも連絡取れなくて…」


あ、ミネルヴァ返事くれてたんだ。なぜ私のとこに手紙来てないんだろう…


リデルはそう思いながらも凍りついたようになり、ミネルヴァに返答できないままぼんやりと彼女を見たままつったっていた。


「それにあなた学園に来なくなってしまって。そうそう!ジェイド様とつきあい始めたとかいう噂があるんだけど!…ちょっと、リデル!どうしたの!」


頬を涙がポロポロと流れはじめた。もう止めることができない。


ものも言わず突っ立ったままの自分があたりの目をはばからず涙を流しはじめたのを見て、ミネルヴァがかなり慌てている。


「…うちの系列の店がそこにあるから、早く入って!」護衛のレベラが何か言いたそうにしていたが、こちらの様子を見てやむを得ないと思ったらしく、ついて店に共に入った。


店はアクセサリーショップではなく喫茶店だったが、ミネルヴァは二階の奥へリデルとレベラを通した。


そこは倉庫らしく様々なものが置いてあった。


どう見ても一階の喫茶店に関係ありそうもない荷物もあるが、ミネルヴァの家の商売は手広いため、おそらく系列の店の荷を共通で少し置いてあるのだと思われた。


そこにはテーブルや椅子もあり、少し休めるようになっていた。


軽い飲み物や食事を運ばせた後、ミネルヴァは人払いをした。


店の者は下がったが、護衛のレベラは、外出中はリデル様から離れるなと言われております、あまり距離をおくと解雇されてしまいますといい、下がらなかった。


ミネルヴァは仕方なく、とりあえずそのままにした。


人がいてリデルに話せる部分となると限られるが、どうにか、ある程度話せるだけ話すしかない。


リデルはその間ぼんやりとした様子で座っていた。ミネルヴァは根気よく話しかけ続け、リデルはそれにポツリポツリと答えはじめた。


リデルがミネルヴァから手紙を受け取っていない、ミネルヴァを友人としているのもジェイド様に良い顔をされなかったと言う話を聞いて、ミネルヴァの眉はつり上がった。


「…あなたはどうしたいの?リデル」


リデルがミネルヴァの目を見ると、見たことがないような怒りが友人の瞳の中にあった。


「今後、ジェイド様の言うがままに友人を選ぶなら、私とはもう話さないほうがいいかもしれないでしょ?」


「…そんなの冗談じゃないわ!」リデルは叫んでいた。


そう、冗談ではない。こんなの、何もかも冗談事じゃない!


自分がこれまで大事にしてきたすべてや、自分自身を切り刻まれて、彼の好みの人形になるかのような。


しかもその好みの人形の姿ですら、実は大して好まれていないのではないかという疑いもある。


もうすでにご寵愛のあるご婦人がおられるという事実。

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