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母と途中まで同行してアクセサリーの店まで来たリデルだった。ゆっくり見てらっしゃいと言い残し母は去った。


ミネルヴァの商家の系列ではない店の前におろされたのだが、まあこの際仕方ない。


まだ見て回るだのなんだかんだいいながら、そちらの系列の店へと移る予定だ。


最初の店を出た時、意外な人物に出会った。ふくよかな美女がこちらに目をとめている。どうやらいつの間にか学園の下校時になっていたらしい。


「おや、まあ」先方は目を見開いた。「ちょっとお話よろしいかしら?そのあたりのカフェとかでも。」


その女性はティタス子爵家のシェリル嬢だった。ジェイド様の取り巻きの一人だ。


学園が終わる下校時には、学生は街に出る場合もある。


ただ高位貴族でなければ、そば付きの者などはいない場合がある。男爵家だった頃のリデルのように。


シェリル嬢は子爵だからか、一人でいた。


もちろん、一人で行動するといっても、安全な人通りの多い場所に限られる。


貴族は街へ出る場合は自分の馬車を街に止めて待たせておき、帰りはそれに乗って帰宅する。


平民は乗り合い馬車を利用して移動するか、徒歩だ。


シェリル嬢はおそらく馬車をこの近くに止め、待たせているのだろう。


護衛のレベラが許可を得たアクセサリー店以外へ出向くのを躊躇っているようだが、少し休みたかったリデルはシェリル嬢の話を受けた。適当なカフェに入り二人で座った。


「あなたうまくやったもんだわね。」シェリル嬢はため息をつきながら運ばれてきた果実水を一口飲み、そう口にした。


「うまくやったとは?」リデルは首をかしげながら聞く。


「何って…ジェイド様との婚約の件よ。


あ、私、これでも取り巻きの中心人物にあたるから、まだ発表されてないけど二人が婚約したという情報は入ってくるのよね。


ジェイド様はね…


あの方、思い合う女性が、秘密裏にいらしたの。


ジェイド様は、そう遠くない時期に、自分の両親に彼女のことを打ち明けて許可を得たら、すぐに二人の婚約を発表するつもりだと言われていたの。


だから私達、ジェイド様とどうにかなることは諦めていたのよねえ。


あ、これは取り巻きの中心人物、ほんのわずかな者しか知らないことだから、あなたが知らなくても不思議ではないことなの。


ジェイド様のご両親だって知らないことよ。」


思わず腰を浮かせるリデルをとどめてシェリル嬢は話を続けた。


「それが、蓋をあけたら、その方ではなく、あなたを選ぶなんてね。」


「…その話、詳しく聞かせてもらってよろしいですか」話しながら自分の声と手が震えているのがわかる。


シェリル嬢はこちらを少し気の毒そうに見ながら言った。「そうね、あなたは知る権利があると思うの。」



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