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しかし結果としてリデルの父が伯爵家を継ぐことになった…
そこまで考えたとき、もしかしたらジェイド様や彼のご両親が、男爵家の自分との婚約に嫌な顔をしなかったのは、このことを知っていたからなのではないかという考えが浮かんだ。
そのまま口に出すと、「もちろん話し合いの時に先方には伝えたさ。
もう国の許可を得た後であったし、こちらが男爵であるというよりは、有利な条件で話し合いができるだろうと思っておったからな。
だが、婚約するとなるといずれにしろ親戚になるから早いうちに言わないといけなかった。
結果としていい判断だったな。
ところで、正式に伯爵となるのがまだ先なのだ。
すまないが婚約の発表は、その後にすることになるからな。
これは先方の意向でもあるからな。」
そう父はいうのだった。
…そうか、先方のご両親がすんなり認めてくださったのは、おそらくお父様が伯爵になるからで正解みたいだわ。
でも、お父様の爵位がいずれ伯爵になるとしても、
私自身は生まれも育ちも男爵家なのよね…
リデルは釈然としないのだった。
混然とした心の底にあったのは、ジェイド様が生まれ育ちで身分の低い人物を嫌がる様子を見せたことと、自分への求愛の行為が矛盾していることだった。
それらはリデルの意識の上にはっきりとのぼってはこないものの、モヤモヤと溜まった汚れのように心の底にとぐろを巻くのだった。
「…ジェイド様は、なぜ私と婚約してもいいと思ったのかしら…
お父様が伯爵を引き継ぐという話は、確かにそれなりに先方に利はあるだろうけども、
私自身は男爵家の育ちなのに…」
「それは普通にお前のことを好きになったんじゃないか?お前がそれを疑う心情が俺はわからんぞ。お前は結構かわいい。実を言うともっと上も狙えたと思う。」兄が言う。
父もうなづいている。「そうだよ。リデルは可愛らしいからな。」
リデルはこれって家族だから身内びいきだわ、と思った。でも嬉しくて笑顔になった。
「実を言うとね、この私の出自も関係あるかもしれないのよ」母が突然言い出した。
「私の滅びた王家の血筋は魔力を多く持つの。私もその血を引いているから魔力は高いはずなのよ。
当然、娘の貴女もその魔力は受け継いでるはずなのよね~。
その強い魔力なんたらで、思う相手を虜にできたのかもしれないわよ?…なんてね。」
「…それは無いわ。
もしそうなら、前からジェイド様の方から、私へ近づいて来られてたと思うわ。」
魔力なんてここしばらく聞いたこともないような話なのだが、ここ帝国では一昔前は普通に魔法を使えていたらしい。
今ではこの帝国ではこの帝国の大貴族の血筋にしか魔力はない、また滅多にそれらは行使されないとされている。
そのせいか次第にそれらが本当に存在するものか疑いを持つ者が増えてきている。
魔力や魔法などは、かつてあった伝説に過ぎないと言われだしているくらいだ。
もちろん、魔力を持っているかどうか判定する魔道具なるものだってあるが、それらは、大貴族にしか利用することはできない。
これはつまり、その魔道具が本当に魔力を判定できるかどうかは、実際は不明ということになる。
また、魔力が本当に判定出来たとしても、大貴族らが魔力を本当に持っているかどうか証明して見せることもないため、他の者は判断できない。
これらのことが近年疑惑を呼び、魔法自体の存在に疑いを持つ者たちだってでてきている。
この時流の中で母のように、自分は魔力を持つ血筋なのですという主張を人前でしたら、疑わしい目で見られるかもしれないわ。
リデルはそう口に出そうとしてふと気づいた。
ジェイド様自身、帝国の大貴族の血を引いている。確か縁戚に大貴族がいると話されていたような…
そして私の母は、帝国ではない、滅びた王国の王家の血筋。本人曰くで証拠はないんだけども。
母の言うように魔力とやらが、関係しているの?この婚約…
魔力でお互いに引き合っているとか?…まさかね…




