第二回 雑耍と魔法
しみね・タヨルです。第二回までご覧くださり、本当に感謝いたします。
知名度よりも、主人公と一緒に歩んでいくことが、私のエネルギーです。
第二回から、物語は大きく動き出します。
将来、ウィリーはどのように異世界の真実を見届けるのか、ご期待ください。
教会を後にし、屋敷へ帰る馬車に乗り込もうとしたときのことでした。
先ほど、魔法の才能があると判定された子供たちが、教会の前で魔法の練習をしているのが見えました。
彼らは、呪文を唱えながら、火の玉のようなものを作り出し、それぞれ玉の色は違っていて、互いに投げ合っています。
まるで、色とりどりの雪合戦をしているかのようです。
中には、かなり高度な魔法を操る子供もいて、私は思わず歓声を上げてしまいました。
「すごい!あんな魔法が使えるなんて!」
前世の京城(※1)にも、同じような芸をする大道芸人がいました。
剣を飲み込んだり、火の玉を操ったり、石を割ったり、刀の梯子を登ったり…。
彼らの芸を見るのは、いつも楽しみの一つでした。
確かに、内力を極めれば、そのような芸当も不可能ではありません。
しかし、やはり人の技を見るのは、見ているだけで楽しいものです。
ましてや、私と同じくらいの年の子供たちが、
あんなにすごい魔法を使えるというのは、驚きです。
私は、転生前の記憶を持つ、大人の視点で、
子供たちの頑張りを応援したくなりました。
すると、兄のアレクサンダーが駆け寄ってきました。
「ウィリー、選別式はどうだった? 魔法の才能はあったか?」
兄は、私が魔法使いになれると信じて疑わず、
祝福の言葉を述べようとしていたのでしょう。
しかし、私が魔法の才能がないと告げると、
兄は一瞬言葉を失い、表情を曇らせました。
「そうか…残念だな…」
兄の落胆ぶりを見て、私は少し驚きました。
魔法が使えないことが、それほど重大なことなのでしょうか?
今の私は何も実感がない。皆、迷信を信じすぎているんじゃないだろうか?
そう思っていた矢先、兄が私に言いました。
「ウィリー、魔法が使えなくても、大丈夫だ。
俺だって、土魔法しか使えない。
だから、騎士の技能を磨くことにしたんだ。」
兄は、騎士の道を諦めずに、
努力を続けている自分の姿を、
私に示してくれたのです。
私は、兄の言葉に励まされ、
前向きな気持ちを取り戻しました。
「ありがとう、兄さん。
僕も、自分にできることを精一杯頑張るよ。」
私は、兄に感謝の気持ちを伝えました。
すると、兄は笑顔で言いました。
「ああ、そうだな。
ウィリーなら、きっと大丈夫だ。
もし、何か困ったことがあったら、
いつでも俺に相談しろ。」
兄は、私の肩をポンと叩き、
力強い言葉をかけてくれました。
は、誇らしげに剣を振ってみせました。
「へえー、すごいですね。」
私は、興味津々に剣を見つめました。
私は、兄が私の話に興味を持ってくれたことが嬉しくて、
思わず笑顔になりました。
兄との会話を通して、
私は、この世界にも、
武術に興味を持つ人がいることを知りました。
もしかしたら、
この世界で、
私は、武術家として生きていくことができるかもしれません。
そんな希望が、
私の胸に芽生えました。
アレクサンダーは、私に剣技を披露してくれることになりました。
今回は、私に見学させるためだけのようで、実際に剣を振るうわけではありません。
私は少し離れた場所で、兄の動きを見守ることにしました。
兄は、大きく息を吸い込み、全身に力を込めると、重たいブロードソードを力強く振りかざしました。
その瞬間、まるで巨大な波が押し寄せてくるかのような、凄まじい圧力が辺り一面に広がりました。
剣は、勢いよく振り下ろされ、地面に突き刺さる…と思いきや、
寸でのところで軌道を変更し、鋭く上へと跳ね上がりました。
まるで、海岸に打ち寄せる波が、勢いよく空へと舞い上がるかのようです。
そして、再び剣は勢いを増し、前方に突き出されました。
まるで、波に乗った魚が、水面から飛び出すかのような、力強い突きです。
「これが、『聖濤剣(Holy Wave)』だ。」
兄は、そう言って、満足そうに剣を納めました。
私は、その迫力満点の剣技に、ただただ圧倒されていました。
思わず、割れんばかりの拍手をしてしまいました。
「すごい…!」
私は、息を呑みました。
兄の剣技は、私が今まで見たこともないほど、
力強く、そして華麗でした。
まるで、大海原の荒波のような、
激しい剣戟。
それでいて、しなやかで、
流れるような動き。
私は、その迫力に圧倒され、
ただただ見惚れていました。
「どうだ、ウィリー?」
兄は、得意げに私に尋ねました。
「すごい…
あんなにすごい技が使えるなんて…」
私は、感動を隠しきれませんでした。
私は、兄の言葉に、心が躍るのを感じました。
いつか、私も、あんな風に剣を振るってみたい。
そんな気持ちが、私の胸に芽生えました。
※1 京城:中国の宋の時代の首都。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
初めての投稿で、至らない点も多々あったかと思いますが、
楽しんでいただけたでしょうか?
この作品は、中国武術と異世界ファンタジーを融合させたら
面白いのではないかと思い、書き始めました。
私自身、中国武術や異世界転生ものが大好きなので、
この作品を通して、その魅力を少しでもお伝えできれば幸いです。
第二回では、ウィリーとアレクサンダーの兄弟愛や、
剣と魔法の世界での武術の可能性について描きました。
少しでも楽しんでいただけたのなら、嬉しいです。
もしよろしければ、感想やご意見などをいただけると嬉しいです。
今後の執筆の励みになります。
これからも、読者の皆様に楽しんでいただけるような作品を
書いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。