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color²  作者: りくや
第一章 リアン第一支部入隊試験
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第一章(8) バイキング=クク3

先に動き出したのはミトだった。

巨漢ながらも、それなりに速いスピードでグランの方に突進する。

かかってこいと言わんばかりの表情で、にやりと笑うグラン。

段々と早くなっていく足音。

上がり続けるスピードでミトは、グランに突撃した。

ドンという音が響く。


グランは、ミトの突進を体全体と手で受け止めていた。

そのまま押し返すかの如く力を入れる。

ミトが少しずつ後退していく。力は衰えないまま、ゆっくりと。

このままではまずいと思ったのか一度手を放し、後ろに飛ぶミト。

そして間髪入れず突進をするミト。

しかし、また突進をたやすく受け止めるグラン。

その後も数回ミトは諦めることなく、グランに向かって突進をした。

だが一度としてグランが後ろに下がったことはなかった。


「そんなものかよ。俺はまだまだやれるぜ。もっと力入れてかかってきたらどうだ?」


こっちは余裕だと言わんばかりの言葉を、ミトに向けて言う。

その言葉にイラついたのかミトは鼻息を荒くし、グランに向けて再び突進をする。

しかし先ほどとは違い、速度は保ちつつ別の攻撃を仕掛けようとしていた。


「いつまでも調子に乗ってんじゃないぞ!おいらの本気の突張をくらいな!

『突進連続突張!』」


突進のスピードを活かし威力を上げ、連続で突っ張りをするミト。

グランの体に力強い音と共に突っ張りが当たる。

バチンバチンバチンバチン――。

幾度となく鳴り続ける音。そしてグランは、ゆっくりと後ろに下がっていく。

前とは違い、相手を後ろに引かせているので、効いていると確信をするミト。

だが、その考えもすぐに変わるのであった。


「それがあんたの本気か?ちょうど気持ちいいくらいの強さだぜ?」


グランが先ほどと変わらない声色でミトに話しかけた。

そんな馬鹿な、ミトはグランの顔を見る。

その表情は、マッサージを受けているのかと思うほど涼しい顔をしていた。

おいらの全力突張だぞ?そんなはずがない…。自分が本調子ではないのかと疑ってしまう。

それくらいの余裕そうな表情であった。


「いいか?突張ってのはこうやってやるんだよ。しっかり見ときな」


そう言って右手を後ろに引くグラン。

ミトが突張をしていた音の数倍大きい音が鳴り響く。

その瞬間、ミトは後ろに飛んでいた。

ガハッという声と共に、壁に当たるミト。

力の差は歴然だった。



一方その少し横では、ハクとハトが戦っていた。

ハトが皿を不規則なタイミングでハクに向かって投げている。

だが投げられた皿を毎回キャッチし、割らないよう丁寧に地面に置いていく。

この人、投げることを主体に戦うタイプかと考えるハク。

一見単純そうに見えるが、意外とコントロールは良く、的確にこちらの頭や足を狙ってくる。

このまま全部の皿を投げさせたら諦めてくれるかもしれない。なるべく穏便に事は済ませたい。

そう思って皿を割らないように、キャッチし続けている。


こうして特に被害も出ないまま投げられる皿は無くなった。

これで終わりかと思っていた矢先、大皿を手に持ち始める。

それは海鮮焼肉洋風鍋焼き中華パン揚げ和風カレー丼~お好きな麺を添えて~が入っていた大皿だった。

自分だけなら避けられるが万が一、一般客の方に当たったら大変だ。

力強く大皿をこちらへと投げてくるハト。

かなりのスピードでハクに向かってくる。

出来ればこの作戦は使いたくなかったと思うが、そうも言ってられない。

地面に置いていた皿を手に持ち、投げられた大皿に向かって投げ返す。

パリンという大きな音と共に大皿が割れた。

店長さんごめんなさいという気持ちとこれで安全が確保されたと思うハク。

しかしそうも簡単にはいかなかった。


「ガキ!お前が思ったよりできるってことは分かった。だがよ!これはどうだ?」


着ていた服の中に大量のナイフを仕込んでいた。

物騒な人だなと思いつつ警戒をさらに強める。

皿も危険だったが、ナイフはより一般客に大怪我をさせる危険性が高まる。

そしてハトは、ハクに向かってナイフを投げ始めた。

これならガキを仕留めることが出来ると考えていたハトだったが、そうはいかなかった。

何度も投げられるナイフをいとも簡単に受け止めるハク。

ハトにとってこの状況は考えられないものだった。

なぜあんなガキがそんな芸当をできる。

あり得ない……。ハトは苛立ちと焦りが募る一方だった。


ハクに攻撃が通らないこの状況に腹を立てたのか、一度攻撃を止めハトは周りを見る。


「くそっ!こうなりゃここにいる奴らも道連れにしてやる!」


手に持っていたナイフを、一般客の方目掛けて投げるハト。

それを瞬時に理解し、受け止めたナイフを投げるハク。

キィンという音がしてナイフとナイフは地面に落ちた。

一般客の方目掛けて投げるとは油断できない。

早めにこの状況を終わらせないと、危険が生じる可能性が上がる……。

出来れば攻撃はしたくなかったが、こうなった以上仕方がない。

あの人を今すぐ止めよう!


ハクがこの思考になっていた時、ハトもまた別の考えを持っていた。

あのガキはもういい。この苛立ちを全て他の奴らにぶつけてやる。

悪いのはガキのせいだ。大人しくくたばらないからと。


「ガキ!後悔するんだな!お前のせいでここにいる奴らが痛い目を見るんだからよ!」


そう言って全ての指と指の間にナイフを持つハト。

ハトは、そのナイフ全てを一般客に向けて投げようとしていた。

そして一斉に投げられるナイフ。

ハトは嘲笑っていた。これで俺の苛立ちもなくなる。ガキがすべて悪いのだと……。


だが、その嘲笑いも一瞬にしてなくなっていた。



投げられたナイフ全てが、地面に落ちていたからだ――。


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