第一章(6) バイキング=クク
少し会話をしながら歩いていると目的の店に着いた。
バイキング=ククと大きく書かれており、その下には若者を応援していますとも書かれていた。
随分と変わった店だなと思いつつ、入り口のそばにあるメニューを見てみる。
そこには、グランが言っていた海鮮焼肉洋風鍋焼き中華パン揚げ和風カレー丼~お好きな麺を添えて~の名前もあった。
相変わらずすごい名前だな…。でも確かに30分以内に食べたら無料と書いてあるし、政府入隊希望者限定とも書かれている。
写真も載っていたが、うん、でかすぎ。こんなの一人じゃ食べられないわ。
二人以上というのも納得できる。
「どうだ?美味そうだろ。こんな料理一目見ただけでも食べたいって思うに決まってるよな!」
確かにグランが言った通り美味しそうには見えるが、食べたいとは思…うか。ギリギリ。
でも確かにグランほどの体格ならこれくらいの量でも食べられそうかも。
店の前でずっと立っているのもあれだし店の中に入ろうか。
店の中に入ると想像以上にお客さんが入っていた。
これ全部政府軍に入ろうと思っている人なのかと思ったが、そういうわけでもないらしい。
あくまであの料理が名物と言うだけで、バイキングということもあり、基本的には色々な種類の料理を扱っている店のようだ。
家族連れや高齢者まで老若男女問わず人気みたいだ。
二名様ですかと店員に聞かれ、席に案内される。
料理は決まっているので、席に着いた同時にグランが商品を頼む。
やる気満々だな。しかし、そう言ってもいられない。僕も微力ながら食べないといけないのだ。
食べられるかなぁ。でも、残すなんて選択肢はない。たとえ間に合わなかったとしても、最後までは食べ切ろう。
そう意気込んでいるとグランが話しかけてきた。
「なんだ?さては食べ切れるか心配か?ハハハ!安心してくれ。俺は意外かもしれないが、色々な店の挑戦料理を失敗したことがないんだ。だからハクが食えなくても俺が全部食べてやるからよ。大船に乗ったつもりでいてくれよ!」
うん、意外ではない。逆にその体格で小食だったら心配するレベルかもしれない。やっぱり大食い出来るんだな。それなら安心した。
「こうして知り合ったんだ、せっかくだしハクのことを聞いておきたい。
入隊試験を受けるってことは当たり前だが政府軍になりたいってことなんだろ?
良ければでいいんだが、教えてくれないか?」
当然の疑問だろう。政府軍に入りたいといえ、入るには入るなりの理由が伴う。
憧れや使命感。ただの興味本位でという人もいる。
「詳しい内容は言えないけど、『約束』を果たすためかな」
約束か…なるほどとグランは答える。
「まぁ、ハクみたいな強いやつの約束だ。よっぽど大事な事なんだろうな。
これ以上は追求しないでおくわ」
意外と言ってはあれだが、追求はしてこないんだな。人の真相を触れるのは控えてくれる人みたいだ。
そして今度は、僕がグランに同じ質問をしてみた。
「俺は人を守るっていうことが使命だと思っている。体もそのために強くたくましくなったと両親も言ってくれていた。だからこそ俺は政府軍に入って多くの人を守りたいんだ」
答えてくれたグランの目はまっすぐな目をしていた。
心の底からそう思っているのだろう。そして、その思いがグランを強くしているのだろう。
そう感じることが出来た。
「そうだ。ハクは剣で戦うのか?リュックの中から剣が見えていたけど。間違ってたらすまねぇ」
いや、合ってるよと答える。
当たり前だけど、リュックの中に剣を入れている人はせいぜい僕くらいだろう。
リュックの先に柄が見えているし目立つと言えば目立つ。
なぜこんなことをしているか疑問には思うだろう。
理由としては二つ。まず……リュックが便利だからだ。
ここまで歩いてくるのに手ぶらなわけにもいかない。何だかんだ一年経ってたし…。
道具を入れたり、食料を入れたりとなくてはならない存在だ。
そしてもう一つの理由はというと…意外とこの方が剣を取り出しやすいという事だ。
リュックを背負うという事は、それだけ剣を持つスペースが失われる。
そこで考えたのが、リュックの中に入れたら楽なんじゃないか作戦だ。
実際入れてみたところ、個人的にはこっちの方が合っていた。
まぁ昔、リュックの中に違うの入れてたもんな…。あの経験が活きているのかもしれない。
「剣か、カッコイイじゃねぇか!俺も昔、剣を持ってみたんだが俺の戦い方的には合わなくてよ。それからは使ってねぇなぁ」
言われてみれば確かに、グランは武器になるような物は何も持っていなかった。
武闘家かかな?当たり前だけど、拳や足で戦う人も多いし。
グランは拳とかで戦うのと聞くとこれまた変わった返答がきた。
「うーん、近いようで遠いかもしれねぇな。もちろん拳も使う。ただ、俺の戦い方の軸となるのは「身体」だ」
身体そのもの?初めて聞くことに疑問を持つ。
「もしかしたらハクと入隊試験で戦う事になるかもしれねぇ。詳しくは言えないが、簡単に言うなら、身体そのものを使って戦うって感じだな」
なるほど。あくまで憶測ではあるが、動物のように突進したり守ったりするって感じか。
何となく想像は出来るけど、そんな戦い方もあるのか。
けど、普通の人にそんなことできるのか?グランのような体格なら問題はないだろうけど。
でも、身体そのものを使う戦い方っていうくらいだ。もしかしたらグランは……。
そう思った時、店の奥から怒号が聞こえてきた。