第一章(40) 入隊試験(28)
お久しぶりです。また投稿期間が空いてしまってすみません。
今回のお話は、前回より三千字多くなっています。この調子だと一話で一万字超える日も近そうで怖いですね。
内容に関しては、想像以上に話を膨らませてしまったので、もしかしたら分かりにくい所があるかもしれません。
最近一気に寒くなっていますので、皆さんも体調にはお気を付けてお過ごしください。
「色々と考えているようだが、大丈夫か?」
真剣に考えているハクに問いかける。
男から見ても攻撃してくれと言っているくらいには隙だらけだった。
そんなチャンスを逃すはずもなく、手に持っている銃を動かす。
「……えっ?」
「私から攻撃しないとは一言も言ってないぞ」
ハクの顔に銃口を向けて狙いを定める。
男の目と表情は絶対に仕留めてやると言わんばかりの気迫を見せていた。
「ハク!危ないぞ!」
どんな状況かいまいち理解できていないハクに向けて、グランができる限りの大声で危険を知らせる。
自分がハクのためにできることはこんなことしかない。
それでも今すぐ危険であることを伝えなければ手遅れになってしまう。
「……!」
グランの声を聞き、瞬時に状況を理解する。自分はかなりの窮地に立たされている。
避けるか避けないかでこの先の運命が決まってしまう、そんな状況だろう。
頭にある全ての思考を避けろという考えに変換し、体を動かそうとする。
「頼む……!」
奇跡でもなんでもいいから避けてくれと心の中で強く思う。
こんなこところで脱落してもらいたくはない。別れにしてはあまりにも早すぎる。
その後、必死に無事を祈るグランの先で発砲音と共に銃弾が撃たれた。
「あっぶな……」
間一髪といったところで顔を動かし、銃弾を回避することに成功する。
この場所から動かないと不利な状況が続いたままだと思い、距離をとるために後方へと跳んでいった。
その途中、男の顔を見てみると何かを考えているのが見えた。
「攻撃してこないのかな……?」
相手の方が有利な対面だったはずにも関わらず、追撃してくる様子は全くなかった。
普通であれば、逃げる間を全く与えず追撃することでそのまま決着をつけることもできたかもしれない。
だが実際には攻撃する素振りもなく、こちらの顔をずっと見ているだけで動いてくる様子はない。
自分の顔に何か付いてでもいるのだろうかと思ってしまうが、なぜ避けられたのかを考察しているだけだろう。
「でも、助かったな……」
グランの声が無ければ間違いなく避けることはできなかった。
もし当たっていたならなんてことは想像したくはないが、模造の銃弾とはいえ、当たれば一溜りもないことには変わらない。
死に至ることはないだろうが、気絶することは断言できる。
それはつまり負けを意味している。ルール上、気絶した時点で戦うことができない状態と判定されてしまうからだ。
真剣に考えるのは悪いことではないが、考え過ぎてしまうと逆に相手に隙を見せてしまうだけかもしれない。
少なくとも相手と距離が近い時は目の前のことに集中した方が良いと自分の心に決め込んだ。
「はぁ、本当に良かったぜ……」
普段情緒を乱すことがあまりないグランだが、今回ばかりはさすがに焦っていた。
作戦を考えてくれと頼んだのは自分だ。今だって相手のことを分析してくれていたに違いない。
ハクは目の前に相手がいる状況で隙を晒すような人物ではないからだ。
これでハクを負けさせてしまった場合、完全に自分のせいになってしまう。
もしそんなことが起こってしまえば、一生後悔するだろう。
無事で良かったと胸を撫で下ろした。
「あの至近距離で避けたか」
男はハクが後方に逃げて行く前の段階で、自分の銃撃が避けられたと既に察していた。
確実に頭を狙ったはずだが、どうやって避けたのだろうかと不思議に思い、問いただしてみることにした。
「正直驚いた。どうやって避けた?」
あそこまでの近距離で銃弾を回避できる者は、世界中でも数えられるくらいの人数しかいない。
力の片鱗を垣間見たのかもしれないと思ったが、決してそういうわけではなかった。
「そんなに驚くことでもないですよ。正直勘で避けましたし……」
ハクは、微笑しながら話す。
今嘘をついたところで特にメリットがあるわけでもないし、どうせ嘘だと気づかれるからだ。
あの時もう終わったかもしれないと思った。最低限やれるとしたら、とりあえず咄嗟に顔を動かすことしかできなかった。
それでも結果的に運よく当たることはなかった。本当にラッキーだったと思う。
「そうか……」
謎に期待を裏切られたような感覚に浸る。
しかし、実力ではないにしても、勘だけで避けたことが本当なら相当な運に恵まれていることは確かだ。
まるでここで負けるべきではないと神から見放されていないほどに。
「豪運といったところか」
「言ってしまえばそうですね……」
もしまた同じ状況になったら避けられる可能性は限りなくゼロに近い。
あの人レベルの強者なら、似たようなシチュエーションがあった場合、同じ失敗がないように必ず相手の動きを見てから攻撃をする方針に切り替えるはずだからだ。
「ちなみにですけど、ここからが本番ってことですかね?」
二人でかかってこいと挑発された後も攻撃してくることは一切なかった。
しかし、今はもう攻撃をしてきている。
それに戦いを続けようとしているわけではなく、あくまで終わらせようとしてきている。
顔を狙ってきたのも偶然ではなく意図的に狙ってきたはずだ。
手加減なんてことは絶対にしてくれないだろう。
「そう思ってくれても構わない」
自分の動きが相手に通用するのかは確認することができた。
つまりは、もう様子を見る必要がなくなったわけだ。
懸念点を強いて挙げるとするならば、他の『二人』の状況が分かっていないことだろう。
あれから少しの時間しか経っていないため、未だ煙は消えてはいない。
そのため、中の様子を見ることもできない。
だが、あれだけの力を扱える二人なら動き出そうと思えば動ける時間になってきている。
しかし、攻撃をしてくる様子もなく、動きも全く見られない。
相打ちという可能性もあり得る。一応、頭の片隅に留めておくことにした。
「よし……」
ハクとの会話が済んだことで、戦いの気持ちへと切り替える。
近距離射撃を避けられはしたが、その豪運がいつまでも続くことは決してない。
「行くぞ」
標的を変えることはせず、ハクの元へと一直線に進み、射撃を始める。
「させねぇぜ!」
その様子を見ていたグランが男の横から突進をして攻撃を妨げようとする。
ハクは既に戦いに集中しているとはいえ、先ほどまで脱落するかしないかの瀬戸際だった。
そんな危機的状況のすぐ後に激しい戦いはしてほしくないと思い、少しでも休憩させる時間を与えたいとグランは考えていた。
「またお前か」
ハクに攻撃するのを一時的に止め、サポートに入ろうと向かってきたグランに視線を変える。
体を動かしたまま体に狙いを定め、銃を発砲した。
「隙だらけだな」
真っ直ぐ突っ込んでくる相手に外すわけもなく、銃弾は確実に体へと命中した。
痛いだの、しまっただの悔しがる言葉でも吐きながら倒れると思っていたが、予想していた言葉とは真反対のことを言われることとなったのである。
「ん?なんかしたか?」
突進しながら何事も無かったなかったかのような様子で言葉を返す。
体に銃弾が命中した人とは思えないセリフである。
決してグランが単純だからといって体の痛覚まで単純というわけでは決してない。
例えるなら精一杯の力で肩を揉んでも、相手からしてみれば気持ち良い程度の強さであった時のようなものだ。
グランにとって銃弾は、その程度の痛みにしか感じなかったのである。
「まさか効いてないのか?」
男は驚愕してしまう。
生身の人間で銃弾が効かない前例など聞いたことがない。
「残念だったな!俺の皮膚は硬ぇんだ!銃弾なんか効くかよ!!」
自分の皮膚の硬さを得意気に自慢しながら、勢いを弱めることなく突進し続けるグラン。
「ちっ……!」
思いがけない事実を知り、攻撃から回避行動へと咄嗟に切り替える。
動揺しながらもギリギリのタイミングでグランの突進を横に躱すことができた。
「くっそぉ、避けられたか」
男の傍を突進で通り抜けていきながら悔しそうに反応をするグラン。
結果的に相手が油断していたところを狙えたが、それでも攻撃が当たることはなかった。
「仕方ねぇ、あいつには攻撃方法変えるしかねぇかなぁ……」
自分としては真っ向勝負が圧倒的に好きだが、相手は正面からの攻撃を嫌っている。
このまま突進をしているだけだと攻撃が通る見込みは低い。
苦渋の選択ではあるが、攻撃方法を変えるのが一番状況を変えうる策なのかもしれない。
「銃弾全く痛くないんだ……。初めて知った」
ハクもまたグランの新事実に驚いていた。
グランの言う通り、銃弾が効かないくらい皮膚が硬いのだろう。仮に実銃だとしても効かないのか気になるところではある。
「銃弾が効かない……か」
その時ハクの中で一つの考えが浮かぶ。
グランが今嘘を言うわけはないので、効かないというのは確定だろう。
それならグラン独自の特性を活かせる戦い方が何かあるかもしれない。
言い方は悪いが囮、もしくは盾になるなんてことができるわけだ。
「新しい作戦考えとこうかな」
今知ることのできた特性は相手にとって相当警戒しないといけないことだろう。
相手の目線で考えれば、グランという敵は突進攻撃が当たれば一溜りもなく、自分の攻撃も一切効かない圧倒的不利な相手になっている。
逆に言えば、こちらにとっては大きなアドバンテージになった。
グランと上手く戦うことができるなら、勝ち筋が見えてくるかもしれない。
「少年を狙う他ないか……」
自分のかなり後方にまで通り過ぎて行ったグランをチラリと見てから判断をする。
現状グランに対して有利を取れそうな攻撃は全くなかった。かといって何もしないままだと状況が変わることはない。
「仕方ない」
つまり、ハクを狙い続けて脱落させることでしか戦況を変える方法はないと考えることしかできなかった。
再び攻撃をするためにハクの元へと走って近づいていく
「やっぱり僕狙いになるよね」
現状グランに対抗する手段は全くないに違いない。それなら倒せる可能性がある相手を狙い、倒すだけでも戦況は大きく変わる。もし、自分が同じ立場でもグランは後回しにして別の相手を狙うはずだ。
「大男が来るまでに片を付けたいが……」
突進攻撃の弱点として、すぐには止まりたいところに止まれない。
全力の突進となれば、制御がより難しくなってくる。
一瞬後ろを見た際に確認したが、先ほど自分にしてきた突進攻撃はまだ止まる様子がなかった。
つまり、こちらに来るまでまだ時間の猶予がある。
しかし、また戦いが始まれば、大男が少年のためにすぐ駆けつけてくるのも確かなことである。
それまでに戦いを終わらせるのが理想だ。
「急がなければ」
ハクに対して攻撃のタイミングを計られないようなテンポで射撃をする。
連続で撃ったり、一発ずつで撃ったりと工夫をして確実にハクとの距離を縮めていく。
「タイミング分かりにくいけど、これくらいなら大丈夫そう」
剣を使わず、最低限の体の移動で射撃を躱す。
ハクにとっては、最初の連続射撃に比べれば比較的避けやすい攻撃にしかならなかった。
「近接戦お望みって感じかな」
射撃を避けられたとしても走るのを止めることなく近づいてくる。
そして、次第に距離が近くなっていき、ハクは剣を使って射撃を防ぎ始めた。
「そっちがその気なら!」
元々近接戦を仕掛けたいとは思っていたが、相手からその状況を作ってくれている。
こちらからしてもありがたいことではあるが、相手目線でもこの状況がベストだと考えての動きではあるだろう。
「始めるか」
軽く呟いた瞬間に一気に距離を詰めて、射撃のテンポを上げ始めた。
「まだ早くできるのか!」
少し想定外の出来事ではあったが、集中を高めて弾道を予測して射撃を防ぐ。
それだけでなく、二、三メートル先にいる男に向かって反撃をしようと動き出す。
「やはり攻撃してくるか」
攻撃してくるのが分かっていたかのように素早く反応してハクの攻撃を躱す。
「まだまだ!」
ハクもすぐに追撃をするために斬りかかろうとした。
しかし、男は足元や頭を狙って追撃してくるのを簡単にはさせないようにする。
その後も男が射撃をして、ハクが防ぐ。その後は剣で反撃をするという展開が何回も行われていた。
時には同時に攻撃が起きたり、連続で攻撃が続いたりしていたが、その度に両者適切な行動へ切り替えて対抗していた。
ハクは素直に近接戦もできる相手だなと心の中で思った。
実際に戦ってみても不得意だと感じることは全くなかったのである。
「ふっ、やるな」
付かず離れずの距離で射撃を続けているが、攻撃が当たりそうにはない。
この距離だとしても弾道を予測して、射撃を防ぐことができる力を身に着けている。
想像以上に厄介な相手だと感じていた。
「そっくりそのままお返しします」
ハクもまた似たようなことを感じていた。
正確な射撃を続けたまま、回避行動もしっかり行い近接戦を続けてきている。
とても遠隔武器が主体の相手だとは思えないほどだ。
「わりぃハク!遅くなった!」
その時、聞き覚えのある声が耳に入る。
「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」
グランが男の後ろから突進をしてくる。
ハクへの攻撃を止めさせようと試みていた。
「そろそろ来ると思っていた。ちょうどいい、一応確認しておくか」
男の考えとして、もしかしたら銃弾の痛みをただ我慢しているだけということも完全には捨てきれてはいなかった。
今度は十発以上グランの体に向けて射撃をしてみる。
「効かねぇって言ったはずだぜ!!」
「痩せ我慢ではない……か」
今回も間違いなく全弾体に命中はしたが、相変わらず痛がる素振りは一切ない。
グランが嘘を言っていなかったと理解する。
「おらぁ!」
グランは突進攻撃から手を前に突き出し、拳による打撃へと攻撃方法を変えた。
「やろうと思えばそんなこともできるのか」
少し感心した様子でグランの攻撃を見る。顔に向かってくる拳をそのまま受け流して攻撃を躱した。
苦渋の選択をしてまで攻撃方法を変えたが、それでも攻撃は当たることはなかった。
「やっぱり気になってはいたのかな?」
グランにしてきた射撃にそこまでの敵意は感じられなかった。
もう一度体を攻撃した点とグランの攻撃の後に追撃する様子がなかったからだ。
もしかすると再確認という形で攻撃をしたのかもしれない。
そして、銃弾が効かないということが本当だと理解したはず。
つまり相手は、完全にグランへの攻撃手段がなくなったことになる。
「今がチャンスかも……」
もしその予想が正しければ、何としてでも僕を脱落させたいと強く思うようになったはず。
そうだとしたら、さっき思い付いた新しい作戦を使えるかもしれない。
「正直悩むところだけど、一か八かやってみよう」
この作戦は完全に賭けだ。失敗しても責任を問われるのは必ず自分になる。
そうだとしてもやらなければならない。相手の意表を突く作戦はこれくらいしか考えられなかった。
でも、成功した時のメリットはかなり大きい。やってみる価値は十分にある。
「まずは移動しよう……」
少し歩いてグランのちょうど反対側になる位置へと移動する。
「……なんだ?」
ハクが移動したのは見ていたが、剣を持つ構えがいつもと違うことに気づいていた。
まだ見たことがない新しい攻撃をしてくるだろう思っていたが、その攻撃は予想を上回る手段だった。
「おりゃっ!!!!」
ハクは持てる限りの力を込め、あるものを男に向けて投げつけたのである。
「はっ……?」
男は普段なら出さないような声を出して驚愕してしまう。少年が投げつけてきたのは彼自身が使っている剣だったからだ。
「どういうことだ……」
考えても全く理解することができない。
自分から使用している武器を投げつけるなどブーメランでもないと戻ってこないからだ。
体術もできるという可能性はあるが、とてもそうは見えない。
「焦った……のか?」
少年としても自分がずっと狙われる状況を変えたかったのかもしれない。
そしてその気持ちがあだとなり、ここにきて気が動転でもしてしまったのだろうかと考える。
自分から勝ち筋を捨ててしまったようなものだ。
その後、横に移動して剣を躱し、無防備になったハクに対して銃を向けた。
「グラン!」
ハクは全力でグランの名前を呼びながら男に向かって走り出す。相手に剣を投げた理由を悟られては意味がないからだ。
必要最低限の言葉でグランに自分の意図を伝えるしかない。
伝わらなくても仕方がない。その時は最終手段をとる覚悟でいる。
「ハクの奴なんてこと考えやがる」
グランは考えるのではなく、直感でハクの意図を感じ取った。
自分ならそんな作戦は絶対に思いつかないだろうと思う。
結果がどうなるか分からないが、色々考えるよりもとりあえず行動に移す。
こういうシチュエーションは、グランにとって最高に燃えることだった。
「おうよ!!」
グランは、突進を始めるだけでなく、一、二秒してから自分の元に向かってきた剣を軽々しく左手でキャッチした。
「お返しだ!」
ハクに向かって再び剣を投げ返す。
それだけでなくグランは突進のスピードをさらに上げた。
恐らく剣は避けられる。だとしても、ハクが必ずキャッチするはずだ。
そして、キャッチしたあとはそのまま剣で攻撃する。
自分も加われれば、攻撃のタイミングを予測させないようにしつつ、同時攻撃も可能になる。
相手からしてみれば、踏んだり蹴ったりな状況に陥るだろう。
「まさか!」
グランの声を聞き、後ろを振り返える。
一度避けたはずの剣が再度向かってくるのを見て、今自分が置かれている状況を理解する。
「考えたな!」
完全に自分の考えが甘かったと後悔する。
あの少年が意味もなく剣を投げつけてくるはずかなかった。
判断が早く、分析力も長けているから警戒しなければと決めていたはずだ。
そして、それだけではなかった。この二人の意思疎通能力を完全に舐めていた。
名前を呼ばれただけで何をしたいかを瞬時に理解したのだろう。
あの大男をただの単純男と思っていたが、単純だからこその頭の回転力が速い。
この状況は、自分の油断が引き起こした最悪の結果である。
「っ……!」
再度向かってきた剣を気が動転しながらも何とか体を動かして回避する。
「まだ終わってないですよ!」
ハクは避けられた剣をそのまま掴み取り、追い打ちをかけるかのように攻撃をする。
そこにタイミングよくグランの攻撃も合わさり、完璧な同時攻撃が完成することになった。
「くっ……!!」
予想もできないような連携攻撃に冷静に対処できず、慌てて上空に跳び上がり攻撃を回避した。
「これならやれる!」
ハクの真の狙いはこれだった。上空に逃げたところを二人で攻撃する。
空中なら細かい動作をすることはできないため、簡単に避けることはできなくなる。
そして二人攻撃なら正面だろうが後ろだろうが関係ない。
ハクとグランは、上空に逃げた男に向かって同時に跳び上がり、息のあった攻撃を仕掛ける。
「まずい……!!」
一人なら上空でも何とか回避することは可能だ。しかし、二人同時となると話が変わってくる。
動けたとしても一人避けるだけの動きしかできない。
「やむを得ないか……!!」
できれば最後に使いたかった手ではあるが、このままでは二人同時の攻撃を避ける間もなく負けてしまう。それだけは絶対に避けなければならない。
何もせずに終わってしまうわけ結末など求めてはいないからだ。
男は少し迷いながらも決心をした。
そして、手に持っている二丁拳銃を交差させ、目を閉じようとする。
男が集中を始めると、周りの空気が少し変化する。
完全に目を閉じようとしたその時だった。
「なんか面白そうなことやってんじゃねーか」
戦っていた二人以外の声を聞き、閉じようとしていた目を開ける。
男の目の前には、頭の片隅に置いていた人物の姿があった――。




