第一章(4) 光明の国 イラト
タイトル名の変更及び、タイトルに関係する部分を本文に追加しました。(2024/9/25)
クアル村を離れてから数時間が経った。すると目の前に大きな近未来溢れる街並みが見えていた。
「着いたー!」
両手を上に上げ大きく背伸びをする。
ずいぶん回り道したとはいえ、何だかんだ一年くらい時間経っていたのか…。
というか普通は歩いては来ないんだよな。車とか飛行機とかあるし。
まぁ、自分から頼んだことだし仕方ないけどね。
これまでの道のりを思い出しつつ、歩みを前に進める。
ここは、世界の中でも二番目に栄えていると言われているイラトという国だ。
別名として、光明の国とも言われている。
他の国より一年中晴れの日が多いことや、世界の中心に位置していることが理由とされている。
「ここに来るのは5歳の時だから、10年ぶりってところかな」
あの時の面影は少しあるが、全くと言って違う景色になっていた。
あんな道なんてなかったし、それになんだあの機械…環境エネルギー的な物を作ったり使ったりするものか。
でも未来過ぎず、自然も残されてどこか懐かしい雰囲気もある。
少し離れた場所には大きな花畑らしきものも見えていた。
あの頃と変わったといえ、住みやすいバランスの取れた街並みになっている。
せっかくだし周りを散策してみようかと歩き進める。
食料を売っている店や料理店、遊び場など昔からあるところも多くあった。
それに色々な会話も聞こえてくる。
入団試験が明日に迫っているのもあるだろうが、日常的にある風景なのだろう。
一般の人々も笑顔溢れていている。
そして、ある程度進んだところで大きな広場に出た。
この街の代表的なスポット的存在だ。
ゆっくり前に歩いていき前を見る。
そこには大きな像が立っていた。
剣を握り真っすぐ目線を向け堂々と立っている…。
僕が憧れ、そして目指す人の像だ。
「ただいま……」
像に向かって言葉を伝える。
気づけば、数分間その場所に立っていた。
すると少し強い風が吹く。
目の前に帽子が落ちてきた。
あっと思いその帽子を拾う。すると小さな女の子が走ってきた。
「お兄ちゃん帽子拾ってくれてありがとう!それ弟の帽子なんだけど渡してくれない?」
僕に言ってきた女の子の後ろには、弟らしき子が走ってきていた。
はいと言って女の子に渡す。その後、弟の手に帽子が渡り大事そうに被り直していた。
お父さんご飯食べたいと姉弟が言って走っていった。
ご飯か…。そう言えば今日何も食べてなかった。
レンジさんの家でお茶をご馳走になったくらいだし、この辺で何か食べようかな。
そう思ったハクは、料理店が多そうな方に向かうことにした。
「んー、めちゃくちゃ悩む」
美味しそうな料理店が数多く並んでいた。
肉に魚、和から洋まで料理の種類も多様だ。
どうしたものか…。ここ最近はずっと野宿だったから、自分で作る料理しか食べてなかった。
久々に食べるものにしようかなぁ…。とは言っても好きな料理も食べたくなるしなぁ。
いつもだったらすんなり決める方ではあるのだが、これだけ並んでいると迷うものも迷ってしまう。
へぇー、大食い成功したら無料なんて店もあるんだ。
大食いはそんなに得意じゃないからなぁ…。
お金はあるからいっそのこと、出店で何個か買って食べるとかもありかもしれない。
うん、そうしようかと決めたその時だった。
「あんたも入隊試験受けに来た人か?」
後ろから急に話しかけてくる者がいた――。