表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
color²  作者: りくや
第一章 リアン第一支部入隊試験
38/40

第一章(38) 入隊試験(26)



「あの銃を何とかしないと」


銃を拾わせないために男の元へと全力で走る。

相手の主力になっているのは間違いなく落ちている狙撃銃。

必ず拾ってくるはずだし、何としてでもそれだけは阻止したい。

今だけでもあの狙撃銃を使わせないようにしたら、攻撃が通る可能性がより高くなるはずだ。


「まずは銃だ」


ハクの予想通り、男は狙撃銃を拾おうとしていた。

グランがした攻撃も直接的な攻撃は食らっていないため、そこまでの身体的影響はない。

銃を落としたからといっても、拾い上げてしまえば戦況は元通りになる。

左右を確認し、銃の位置を探す。


「そこか」


右後ろを見た時に落ちている銃を発見した。

急いで拾い上げようと銃の元へと駆け寄る。


「させない!」


銃の位置を把握し、駆け寄る姿を見てハクは走るのを止めた。

そして、勢いよく男の元へと跳び、銃を拾い上げようとした手に向かって剣を力強く振るう。


「ちっ……!」


銃を拾い上げるよりも先に剣を振るう方が早く、寸前で阻止をする。


「よっ!」


それだけでなく剣で銃を弾き飛ばし、すぐには拾えない場所へと移動をさせた。

ハクの銃を拾わせないという作戦は成功したのだった。


「やはり狙ってくるか」


男にとっても予想通りのことだった。

相手にとって一番の脅威は銃。その攻撃を止めることができるだけでも戦力は大きく下がると考えても不思議ではない。

実際痛手であることは間違いなく、圧倒的不利な状況に変わった。

無理やり銃を拾うこともできたが、あのまま手を出していたら間違いなく攻撃をされ、後々の戦いに支障が出てしまうことは目に見えていた。

状況が悪くなったとはいえ、まだ銃を拾うチャンスは必ずあるはずだ。

それに攻撃手段は『一つ』だけではない。

いつか訪れるであろうそのタイミングを狙えばいい。


「よし、ひとまずは成功。でも、まだ終わってない!」


ハクはすぐさま体を反転させ、追撃するために再び男の元へと跳ぶ。

銃を拾わせないというのは作戦の第一段階でしかない。

この後、近接戦が得意かどうかを確認しないといけない。

決して簡単ではないが、このまま押し切ってしまうのが理想的ではある。

考えるよりもまずは攻撃。相手に隙を与えさせないことが一番大事だ


「……」


追撃をしようと戻ってくるハクを見て、男は少し目を閉じた。

目を閉じたといっても諦めたわけではない。『もう一つ』の攻撃を始める準備をしていた。


「まだ使うつもりはなかったが、仕方がない。出し惜しみして負けるのだけは御免だからな」


コートの中に両手を交差させながら何かを取り出そうとする。

一瞬で手を出すと二つの拳銃が握られていた。


「二丁拳銃か!」


ハクは追撃する気でいたが、相手に先手を取られると勘づき、咄嗟に地面へと着地をする。

そして、瞬時に回避行動へと切り替えた。


「避けられるか?」


男はハクが距離をとろうとしているのを見ながら、真上へと跳び上がった。


「『スピニングバラージ』!」


空中で体を高速回転しながら二丁拳銃を使って連射を始める。

先ほどまでと違い正確に狙うことはない、無慈悲な弾幕の嵐がハクを襲う。


「っ……!」


あんなこともできるんだーすげーなどと考えている場合ではない。

空中から撃ちつけられる弾幕を全力で防ごうとする。顔、腕、腹、太もも、足など体全身へとランダムに撃ち続けられている。

どこを狙っているか分からないため正確な射撃よりも回避が困難になっていた。

しかし、後退しながら回避行動をとり、剣も使いつつ弾道を予想することで何とか防ぐことができていた。

しばらく射撃が続いていたが、回転が終わり攻撃は止んだ。

そのまま男は地面に着地し、ハクの方を確認する。

全身を見てみるが、銃弾が命中した形跡は全くなかった。

それはつまり銃弾を全て防いだということを意味していた。


「ふっ、避けきったか」


少し笑いながらも、ターゲットを狙う眼は鋭いままだった。

また、攻撃が全て防がれたことに対しては何も思っていないようにも見えた。


「危なかった。あのまま突っ込んでたらただじゃ済まなかった」


近寄っていたら回避するのがさらに困難になってはずだ。

近寄れば近寄るだけ銃弾との距離が近くなる。つまりはそれだけ銃弾が当たる確率も上がるってことだ。

恐らく全ての射撃を防ぎきるのは難しかったと思う。

逆に言えば離れれば離れるほど銃弾同士の間隔が空くから避けやすくなる。

それにある程度の弾道だって見ることができた。

相手の大まかな位置くらいは把握してるだろうけど、正確には狙えてないだろうし、距離が遠いほど狙うのは難しくなるはずだ。


「状況は変わらず悪いまま。相手は攻撃の一つも食らっていない。次はどうするか」


元々スピニングバラージは、近接戦を仕掛けて来る者のカウンターとして考えた技の一つ。

遠隔武器を使うという印象を生かした良い反撃手段だと思っている。

だとしても今回は完全に防がれた。しかも対処法まで考えられていた。

だが、考えたからといって実践できる者は少ない。最終試験まで勝ち残った相手だからこそ考えた行動を実現できている。

正直一発くらいは当たってほしかったものだが、簡単にはいかないものである。


「良い機会だ。自分の力を確かめてみるか」


体を少し動かした後、男は予想だにしない行動を起こしたのだった。


「えっ?」


「おっ?」


かかって来いという表情をしながら、『二人』に向けて手招きして挑発をする。

ハクだけではなく、グランにまで挑発をしたのだった。


「どういうことだろう?」


ハクは少し戸惑いながらも、相手の行動を分析する。

圧倒的不利な状況にもかかわらず挑発してきた。

対処できる方法があるのかもしれない。だとしてもわざわざグランまで挑発する理由は何だろうか。

効率よくまとめて倒すくらいしか考えられない。


「分からん……」


一方グランもあることに悩んでいた

あの男は自分に向けて何をしていたんだと。

明らかにハクと自分に手を少し動かしていた。ただ、それが何を意味しているのかが分からない。

グランは挑発を理解していなかった。いや、正確には挑発などされたことがなかった。

幼少期からの力強さや体格の大きさから相手に舐められるという経験がなかったのである。


「なんかのサインか?俺も手を動かすとかか?意味が分からん……」


考えれば考えるほど分からなくなっていくグランであった。


「せっかくだし挑発に乗ってみよう。何か作戦があるんだろうし」


ハクは少し考えた結果挑発に乗ることにした。

どんなことをしてくるか分からないが、相手もそれだけの自信があって挑発してきているはず。それならこちらもぶつかっていくまでだ。


「ちなみにグランはどう……ってすっごい煙出てる!」


ハクがグランの方を見てみると頭から大量の煙が出ていた。

懸命に考えたようだが、正解にはたどりつかなかった。


「グランどうしたの?」


さすがに心配になりグランに声を掛ける。

あそこまで煙が出るほど考え事だ。さそがし難題に違いない。


「ん?あーハクか。あいつがした手のサインでいいのか分かんねぇが意味分かんなくてよ」


「あーなるほど……」


これっぽっちも難題ではなかったが、確かにグランなら挑発されたことはないかもしれない。

正々堂々戦う人だし、相手もそういう人が多かっただろうから見る機会がなかったんだろう。


「えっと、簡単に言えばかかって来い!みたいな意味だよ。僕とグラン両方にしてきたから二人同時にきても問題ない!って感じかな」


本来ならもっと挑発的な意味を持つが、ここは分かりやすい言い方がグランにとっても良いだろう。


「そういう意味なのか!ありがとよハク!やっぱなんでも知ってんだな!ハッハッハッ!」


大声で笑いながらハクに感謝を伝える。

頭の上にモクモクと上がっていた煙は、跡形もなく消えていった。


「やはり分からん奴だ」


男はグランの性格に調子が狂わされそうになりながらもなんとか持ちこたえる。

変な奴だと思っていたが、想像以上の変わり者だったようだ。


「それなら良かった。それでどうする?あの人と戦う?」


意味を伝えることができたので、本題の戦うか否かを聞いてみる。


「当たり前だ!かかって来いってんなら行くまでよ!」


拳を片方の手にぶつけながら力強く返事をする。戦う気まんまんのようだ。


「了解!じゃあ同時に行こう!」


「おうよ!」


ハクが一息入れてからタイミングを見極める。


「今!」


ハクとグランはほぼ同時に男の元へと走り出した。

主力の狙撃銃は持ってない。それだけでなく二対一の人数不利の戦い。

傍から見れば負けるのも時間の問題だと思うに違いない。


「よし、やるか……」


両手に持っている拳銃をくるくると回す。

二人を待ち構える姿は自信に満ちあふれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ