第一章(37) 入隊試験(25)
投稿遅くなりました!すみません!楽しみにされている方には申し訳なく思ってます。
今後たまにこういう時もあると思うので、その時は気長に待っていただけたらと思います。
「よっしゃあ!」
グランが勢いよく空中へと跳び上がり、攻撃の構えをとり始める。
「また何かしてくるつもりか……」
攻撃を避け続けられているにもかかわらず、諦めるつもりはないらしい。
まだ全力を出していないだけか、ただの馬鹿かは分からない。
少なくとも単純な攻撃を止めない限り、私に当たることはないだろう。
「油断すんなよ!」
ニッと笑いながら男に向けて警告をする。
「油断……か」
その言葉を聞き、グランの構えを一瞬見る。
今までの攻撃はただ突っ込んでくるだけの体当たり。
勢い任せで作戦も一切考えていない攻撃だ。だが、今回は攻撃方法自体を変えてきているようだ。
「警戒しておくか……」
一方、攻撃を避け続けているハクも今の戦況について考えていた。
「やっぱりグランが攻撃を始めてるんだ」
あの人が会話を止めたのはグランの可能性が高いと思ってたけど、その予想は合っていた。
それに声の位置的に空中にいるように聞こえるから、突進とは違う方法で攻撃してるってことになる。
攻撃方法を変えた理由は分からないけど、作戦があるってことは間違いないはずだ。
「どんな攻撃するんだろう」
今までに見たことのない攻撃方法に、ハクは期待を膨らませていた。
「行くぞ!」
グランが大声で叫びながら、空中で力を込める。
その後、男に向かって狙いをつけ、拳を突き出した。
「来るか」
射撃の手を止めることなくグランの攻撃に警戒をする。
体全身の力を適度に抜いて、どんな攻撃が来ても全方向に避けられるように体勢を整えた。
「『地面』……!」
力を込めたこととグランの体格もあり、落下速度は速くなっていた。
それら全ての要素がプラスされ、これまでの攻撃とは段違いの威力が出ており、大きな音と共に舞台上へと衝撃が走った。
「甘いな」
しかし、グランの攻撃は軽々と後方に避けられてしまう。
空中からの攻撃といえ、警戒してさえいれば避けるなど簡単なことだった。
「ふっ……やはり単純か」
期待した私が馬鹿だったようだ。
変わった点を挙げるなら空中から攻撃をしたくらいだろう。
それ以外は全く同じと言っていい。ただ相手を狙うだけの単純な攻撃。
威力が上がったことは認めるが、当たらなければ意味がないのだ。
「いや、まだ何かあるはず……」
ハクが心の中で考える。
あの人が言うように単純な攻撃をするだけなら、空中から攻撃を仕掛ける理由がない。
その理由を考えれば答えが出るはずだ。
「ん?」
グランの姿を見て、違和感を感じる。
攻撃を躱されたのに動き出す様子がない。
普段のグランなら追撃をしてもおかしくない状況だ。
背中で隠れて確認することは出来ないが、右拳が地面に置いたままに見える。
「もしかして……!」
一つの考えが思い付いた瞬間、ハクは少しジャンプをした。
「何の真似だ?」
急にジャンプをするという意味の分からない行動に頭が追い付かない。
しかし、ハクがジャンプした答えは直ぐに分かることとなった。
「『衝撃』!!!!」
グランが更に地面へと力を込め、衝撃を与える。
舞台全体が大きく揺れ動いた。
「なっ……!」
予想だにしていない攻撃と想像以上の揺れも相まって体勢を崩す。そして、手に持っていた銃を地面へと落としてしまう。
「すごい威力だなぁ……」
グランの方を見てみると、舞台の一部分に穴ができていた。
穴の周りには亀裂が入っており、その威力を確認することができる。
「さすがグランって感じだ」
ハクは銃が地面へと落ちたことで生まれた隙を見逃すことなく、地面に足が着いたと同時に男の元へと走り出した。
「ありがとう」
グランの横を通り過ぎる一瞬の間に、お礼の言葉を告げる。
「ハクはすげぇな」
距離的にもハクにそこまでの被害は出ないと思っていたが、影響が全くないわけではない。
避けられるならそうしてくれた方が助かるが、跳べなんて言ったら相手にも知られてしまう。
事前に打ち合わせできていたら良かったが、そんなことをする時間もなかった。
それでもハクはどんな技なのか予想して回避をした。一度も『地面衝撃』を見せたことがないというのに。
「やっぱり熱い男だぜ!」
グランは一人で興奮していた。変な男である。
「油断していた……!」
攻撃を躱した時、それで終わりだと思っていたが、そうではなかった。
衝撃による二回攻撃。いわば時間差の攻撃といっても良い。
あの少年がジャンプした理由も分からなかったが、今なら理解できる。
衝撃が来るのを見越して空中へとジャンプし、攻撃を回避した。
事前に打ち合わせしていたかもしれないが、少年の表情的に恐らくそれはないだろう。
観察眼に優れているといったところか。
「油断するな。あの男が言った通りになったな」
どこまでも正直な男だと思う。
そういった発言は、後々命取りになりかねないというのに。
「まぁいい。私の怠慢が導いた結果だ。まだ負けたわけではないし、少し隙が生まれただけのこと。いくらでも立て直していけるだろう」
心を落ち着かせ、こちらへと向かってくるハクに視線を向けた。
「次は僕が頑張らないと……」
ハクは走りながら、どんな攻撃を仕掛けるか考えていた。
グランが作ってくれたチャンスを無駄にするわけにはいかない。
僕自身のあの人に攻撃され続けてそろそろやり返したいと思っていたところだ。
「よし!」
ハクの反撃が始まろうとしていた。




