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color²  作者: りくや
第一章 リアン第一支部入隊試験
36/40

第一章(36) 入隊試験(24)

再び全身に力を込め、攻撃を仕掛けようとする。

一度攻撃を避けられたといって諦めるようなたちではない。


「だが、言い方は変えてほしいな。正々堂々真正面からの攻撃ってよ!」


キメ台詞のように言った後、突進を始めた。最初の突進よりも速度を上げ、男の元へと突っ込む。


「何を言っている……」


私の性格とは正反対の男らしい。話を聞いているだけでも暑苦しく感じる。

間違いなく単純な攻撃であることには変わりないが、真っ向から狙ってくる攻撃ではある。

あの男が例えているように、正々堂々ということはあながち間違っていないのかもしれない。


「後ろから行くぜ!」


不意打ちにならないように攻撃をすることを伝える。

正々堂々が嘘にならないようにするグランなりの方法だった。


「分からん奴だ……」


暑苦しいだけの奴だと思っていたら、次は攻撃をするタイミングを教えてきた。

余裕の表れ、もしくはあくまでも正々堂々と戦いたいのか。

どちらにしても変な相手ということには変わりないだろう。


「『突進投縄(ラッシュラリアット)』!!」


さらに勢いを増した突進が男に襲い掛かろうとしていた。

距離が着々と近付いていく。だが、後ろを見て突進攻撃との距離を確認することはない。

このままでは避ける暇もなく攻撃が当たってしまうと思われた。

しかし、後ろを確認することもなく、華麗に空中へと跳び上がり、回転しながらグランの後ろへと突進を避けたのだった。

その最中すらもハクを狙う射撃を止めず、着地した後も一切の表情の変化は見られなかった。


「やるな!」


グランが嬉しそうな反応を見せる。

攻撃を避けられたことよりも、喜びが勝っていた。

自分と同じ、もしくはそれ以上の強者であるという事実に。


「あれも避けられるんだ……」


最初の突進攻撃は正面からの攻撃だった。避けることは比較的簡単なはずだ。

一方今さっきの突進は後ろからの攻撃なため、避けるのも一筋縄ではいかないだろう。

だが、後ろを確認することもなく、タイミングよく攻撃を避けた。

いくら強者だとしても、相手の攻撃を見ることなく簡単に避けられただろうか。

どんな方法で攻撃が来るタイミングを計っていたのかは全く分からない。

背中にも目があるといった非現実的なことを考え始める。


「さすがにあり得ないよなぁ」


技術が進歩しているからといって人間自体まで進化するわけではない。

急に腕が四本になるとか、体からミサイルが打てるとか。


「いや、体からミサイルは改造すればいけるな。んー、後で考えよう」


脱線しすぎというのも自分らしくないと思い、余計なことは忘れて今の状況を考えることにした。

今はグランに感謝しないといけない。グランの攻撃を避けたことで分かったことがあった。

あの動きを見るに近接戦は間違いなくできるということだ。

理由として二つのことが考えられる。

一つ目は体の使い方が自然だったということ。

攻撃を避けるとしても、わざわざ体を回転させながら後ろに避けるだろうか。

避けるだけなら横に回避したりする方が簡単なはずだ。

でもあの人は難しい方法にもかかわらず、自然な動きで攻撃を避けた。

つまり、普段からあれくらいの動きをしているのかもしれない。

二つ目は焦る様子が全くないということ。

遠隔武器を使う人は近接戦が苦手かもしれないという考えは変わらない。

それならグランのような突進攻撃の場合は最優先で警戒するはずだ。

自分の攻撃にうろたえることなく、突進してくるのだから。

それでもあの人は全く焦ることがなかった。突進されたとしても対処できる力を持っているからだ。

以上の理由から近接戦ができる可能性はとても高い。


「ってなると……後は相手の作戦か」


これで大体のことは整理することができた。だけど、作戦がよく分からない。

狙撃を始めた時からずっと僕のことを集中狙いしてるし、射撃を止めるつもりもないみたいだ。

そこまでして狙ってくる理由が分からない。


「話すだけ話してみようかな」


何か聞き出せるかもしれないと思い、ハクは男へと話しかける。


「すごいですね。後ろを確認することもなく攻撃を避けられるって」


しかし、男は喋る様子はない。急に話しかけられたとしても相手は敵。

わざわざ話す義理もないだろう。それでもハクは諦めずに会話を試みる。


「しかも空中で回転しながら射撃を止めてもいない。かなり強い方だと思いました。

相手にとって不足なしです」


相手にとって不足なしというワードを聞くと少し笑い、返答をした。


「ありがとうと言っておくべきか?だが君もやるな。私の射撃を避け続けてる」


意外にも返事をしてくれた。思っていたより物静かな人ではなさそうだ。

この調子なら話を続けてくれるかもしれない。


「ありがとうございます。でもかなり集中力使ってますよ。そろそろ止めてくれたりしませんか?」


「それは無理な話だ」


「ですよねー」


そうしてもらえたなら助かったけど無理に決まっている。攻撃を止めるメリットがない。

しかも攻撃を続ける何かしらの理由があるなら尚更だ。


「ちなみに弾切れとかってします?」


気になっていたことを聞いてみる。答えてくれるかは怪しいが、聞かないよりはマシだろう。

弾切れになることが分かれば、新しい戦略を考えることができる。


「さぁな。弾切れになると思ってるならそれまで耐えればいい」


「無茶なこと言いますね」


苦笑しながら返事をする。

分かってはいたけど答えてくれるはずないか。

でもあの言い方なら僕の予想で間違ってなさそうだ。弾切れになることはない。

つまりはこのまま戦っていても僕の集中力が削られるだけだ。


「君もしたんだ。私も一つ質問してもいいだろ?あの男とは知り合いか?」


何も間違ったことは言ってないはずだ。

質問をしたならこっちにも質問を返す権利はある。


「そうですね……」


当然気になることだろうし、あの人も薄々気づいているはずだ。変に否定しても怪しまれるだけだろう。

こういう時にこそぴったりの言葉が一つある。


「ご想像にお任せします」


ハクは腰に手を当てドヤァというサウンドが流れても違和感がないようなドヤ顔で答えた。


「簡単に言うはずもない……か」


私自身、弾切れになるかは明確に答えていない。

恐らくは分かっている。弾切れになることはないと。

聞くだけ聞いてみたといったところか。


「まぁいい、君と少し話せて良かった。だが会話もここまでだ」


「えっ、まだ聞きたいことがたくさんあるのに」


会話を無理やり終わらせた理由は何となく分かる。

とりあえずは今回の会話で一番聞きたかった質問をできてもいなし、得られた情報も全くなかった。

お互いの懐を探っただけで終わったが、逆にいえば相手も同じ状況であることには変わりない。


「そうか」


返事をした男の瞳には、グランが空中へと跳び上がる瞬間を映していた。

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