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color²  作者: りくや
第一章 リアン第一支部入隊試験
35/40

第一章(35) 入隊試験(23)

グランが腕を回しながら、煙が上がっている方を確認する。

まだ煙は収まっていないため、さっきまで見応えのある戦いをしていた二人の結末は分からないままだ。


「まぁ、大丈夫だろうな」


もうじき煙が晴れるはずだが、それまで待たなくとも予想できる。

考えるにお互い痛み分けといったところだろう。

あそこまでの力を持つ者なら簡単に倒れるわけがない。今はまだ様子見をしている段階のはずだ。戦えるチャンスはいくらでもある。


「そんで今は……」


現在戦いが行われている方を見てみる。

ハクと灰色髪の男が戦っている。戦況からしても大きな実力差が付いているようには思えない。着実に距離を詰めているし、銃撃もまだ食らってはいない。

近寄れるのも時間の問題だろう。このままハクのことを見守って応援するのも良いかもしれない。

だが、正直戦いたいという気持ちの方が強い。未だ戦っていないのは自分だけだ。


「やっぱ見てるだけってのは性に合わねぇな」


我ながら戦闘狂だなと思う。目の前で戦ってるのに手を出さずに我慢しろ!なんて言われているようなものだ。(言われてない)

そろそろ動き始めても文句は言われないはずだ。

いや、文句もクソもないかもしれない。これは試験であって戦いでもある。

途中で手を出しては駄目という決まりはない。それなら何も問題はないだろう。

だだ、そんなグランでさえ一つの懸念点があった。

ハクに申し訳ないということである。今の戦況はハクが作り出したものだ。

簡単には近寄れない。だとしても着実に前には進む。その考えを体現したものが目の前で行われている戦いだ。

自分が急に参戦することで状況が悪化しないだろうか。迷惑をかけることだけは避けたい。

考えたくもないが自分のせいで万が一なんてこともある。

だがなぜだろうか。そんなことは起こらない気がする。

不思議にもハクなら大丈夫と信頼できる。逆に自分が参戦することすらも考慮しているのではないかと思うくらいだ。

短すぎる付き合いだが、最初に感じた強さは確かな『(もの)』だった。

バイキング=ククで戦った時も片鱗しか見ていない。

いずれ見ることになるであろう本気の姿が楽しみで仕方がない。

そのためにも今はお互い合格することが最優先だ。


「さて、どうするかねぇ」


戦っている二人をもう一度見てみる。

ハクは変わらず遠距離からの攻撃を避けたり防ぎながら、着々と距離を詰めている。

まだ銃撃を受けてはいないし、焦っている様子もない。

灰色髪の男も攻撃の手を止めないままだ。

少し遠い場所から見ていても正確に頭を狙い続けていることが分かる。

集中力の維持や正確な射撃も相まって、かなりの手練れであることは間違いない。

目の前の敵に集中しているとしても、新手が来たら確実に対応してくるはずだ。

そんな相手に自分がまずやるべきこと。


「そんなの決まってるわな!」


グランは体全身に力を込め始めた。狙う相手は灰色髪の男。

避けられるだろうが、戦況は大きく変わるはずだ。

やっと戦えることに喜びを感じる。


「突っ込む!」


体全身に溜めた力を解き放ち、灰色髪の男へ体当たりをしようと走り出した。

ドシドシと大きな音が鳴るほどの勢いで進み続ける。


「誰か来るな……」


頭を狙う視線の中に攻撃を仕掛けてくる姿が新しく映りこむ。

目の前の標的を狙った攻撃ならありがたいがそうではないらしい。

目線が完全にこちらへと向けられている。

グルの可能性もあるが、それにしては攻撃を仕掛けてくるタイミングが遅い。

たまたま、もしくは遠隔武器だから狙ってきているのかもしれない。

相手の目論見は分からないが、その突進を避けるまでだ。


「オラァァァァァァァ!!」


距離がある程度近くなると大声を上げ始めた。

ハクがその声に気づく。


「グラン!?」


なかなか攻撃しないとは思っていたけど、このタイミングで仕掛けてくるか。

個人的にはとても助かる状況だ。グランがそのまま突っ込んでくれたら多少の隙は生まれる。その隙をついて相手を崩すチャンスがあるはずだ。

かなりの時間銃撃を避けたり防ぐことはできるけど正直疲れるし、集中力は削られる一方だ。

まぁ、僕を狙った攻撃じゃないのが大前提だけど……。さすがに大丈夫だと信じたい。

グラン信じてるよ!と叫びたいくらいだ。


「やはり私狙いか」


ハクが危惧していた状況は起こらなかった。

グランがハクのすぐ横を通り過ぎて行ったからである。

これで誰を狙っているのかが確定されることになった。


「とりあえずは良かった」


グラン信じてたよ!と心の中で叫ぶ。やっぱり友達を最初に狙ったりはしないよね。

いやー、グランならそうしてくれると思ってましたよ。嘘ではないですよ。本当です。

一度安心し、これで攻撃が止むと思っていたが、そうではなかった。


「まだ攻撃を止めない……?」


グランが突進しているというのに、僕のことを狙い続けている。

一般的には相手との距離が近い方が危険視されやすい。相手の戦い方が近接主体なら尚更だ。今の状況ならグランに狙いを変える方が賢明な判断だろう。

しかし、攻撃を止める気配は全くないし、グランの方を狙うわけでもないようだ。

つまりは突進を避けられる自信があるか、別の作戦があるかのどちらかだろう。

遠隔武器を使う人の特徴を考えつつ、あの人の強さを買いかぶるなら答えは前者の可能性が高い。

ということは、近接戦もできるということではないだろうか。


「後で確かめないと……」


ハクが思考している間も攻撃は止むことはなく、途中で標的が変わることもなかった。

だが、戦況が大きく変わろうとしていた。


「行くぞ!」


グランの攻撃は灰色髪の男に当たる距離まで近づいていた。

全身の力を込めた突進をぶつけようとする。


「単純な攻撃だな……」


攻撃が命中すると思われるよりも少し先に軽々横へと避ける。

その勢いを生かして、走りながら射撃を始めた。


「器用すぎるでしょ!」


グランの突進を避けた後も隙が生まれることは全くなかった。

それだけでなく、ハクに対する攻撃は続いているままである。


「かなりの身体能力もあって隙も全くない。走りながらでも射撃の精度が下がらないくらいの集中力と腕前を持ってるってことか……」


遠隔武器を使う相手としてはかなりの強敵だ。さすが最終試験といったところだろう。

だとしても今は二対一の有利状況。一人じゃできないことも色々とやれる。必ずチャンスは作れるはずだ。

それにグランもあの攻撃だけじゃ終わるはずがないだろう。

だんだんグランの性格が分かってきている僕の予想が正しければ……。

銃撃を防ぐ視線の先には、体の向きを変えている影が見えた。



「単純な攻撃?褒めてくれてありがとよ!」


グランは今まさに追撃しようとしていた。

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