第一章(34) 入隊試験(22)
銃弾が飛んできた瞬間、誰に攻撃されたかすぐに分かった。
遠隔攻撃をしてくる相手は一人しかいないのだから。
銃弾が放たれた方向を見る。
「ちっ……!風のせいか……」
銃を構えたまま、灰色髪の男が舌打ちをする。
「やっぱりあの人か」
正直衝撃波による突風のおかげで助かったといえる。
あの突風がなかったら恐らく顔に命中していた。
あえて外したわけでなく、確実に狙ってきたはずだ。
狙いが逸れた理由としては、模造武器の影響が強いのかもしれない。
いくら本物に似せたとしても実銃と実弾のクオリティを同じレベルでは出せないはずだ。
そのため風の影響を少なからず受けたのだろう。だが、狙撃銃であること自体は変わらない。
仮に命中したとしても致命傷にはならなかったかもしれないが、かなりの痛手を食らったことは間違いない。とりあえずは当たらなくて助かった。
「やっぱり油断できないな……」
自分でなくとも誰かを狙えるタイミングはいつでもあったと思う。
二人が戦っているところを狙うこともできたはずだ。
だが、そんなことはしなかった。あの人なりにもルールみたいなものがあるのだろう。
かといって無防備な状況を逃すはずもない。戦闘が終わった瞬間に狙撃をしてきている。
「やるしかないか……」
いつまでも見ているだけなんてことはしたくないし、攻撃された以上反撃しないわけにもいかない。売られた喧嘩は買うまでだ。
攻撃を仕掛けてきた灰色髪の男へと走りだす。
「来るか」
反撃に対抗するため、立ったまま銃を構え直してきた。
まだ射撃を止めてくれるつもりはないらしい。
「簡単には近寄らせないよね……」
一般的に遠隔武器を持つ人は、比較的近接が苦手なはずだ。
理由は様々ある。体を使った戦い方が苦手であったり、単純に遠くから狙う方が長けていたりなど。
その答えを知るためには、戦ってみるのが一番手っ取り早い。
相手との距離を詰めていこうと思ったが、近づかせまいと狙撃をしてくる。
「お手並み拝見といこう」
向かってくるハクの頭に狙いをつけ、ゆっくりとトリガーを引いた。
バンという音と共に銃弾が発砲される。音といっても銃にしてはかなり小さいし、想像していたよりも銃弾の速度は遅かった。
やはり模造の銃弾ということもあり、実物よりは威力が落ちているのだろう。
射撃に合わせて体を少し動かし、銃弾を避ける。
「ほう……」
いくら威力が落ちているとはいえ、銃弾であることは間違いない。
しかし、射撃されたとしても特に慌てることなく避けている。思っていたよりはやり手らしい。
「最終試験まで勝ち進んできたことだけはある……か」
避けられたといっても焦ることはなく、コンスタントに狙い続けていく。
銃弾は全て頭部を確実に狙っており、かなりの精度を持っていた。
しかし、攻撃を避け続けながら走って向かってくる状況は変わっていない。
このままでは近寄られるのも時間の問題だろう。
「少し変えるか」
一度射撃を止め、ボルトアクションを始めた。すると銃の一部分が変形し、構造が少し変わる。
変形する光景を見て、心の中でいくつかの疑問が浮かぶハク。
えっ、いまどきの銃って変形するのと言いたくなるくらいだ。
だが考えてみれば、銃弾を再装填したところを見ていない。つまりは自動装填なのだろう。
銃を少し触れば変形もする。本当に模造武器なのだろうかとも思う。
実際使っている武器に限りなく寄せたとしても、同じ構造にできるだろうか。
時代の進歩はすごいものだと感心をする。
……そんなことを考えている場合ではない。銃が少し変形したということは、間違いなく何かが変わったはずだ。
「楽しませてくれよ?」
再びトリガーに指を掛け、射撃を始めた。
その攻撃は先ほどまでと大きく変わった点が一つあった。
「連射になった!」
かなり驚きながらも、銃弾避けつつ剣で射撃を防ぐ。
銃が途中で連射式に変わった前例があるだろうか。実際見たのは今回が初めてである。
正直かなりカッコいい。自分も銃を使っていたら同じものを使っていただろう。
ロマンあふれる武器である。
「でも正直きついな……」
連射になったことで剣を使わないと全ての射撃を防ぐのは厳しくなった。
しかも、自動装点であることは変わらないため、隙が全くない。
このままでは近寄ることすら難しい。
射撃を防ぐのは何とかなるかもしれない。だが、相手の攻撃が止むわけでもない。
あまりにもジリ貧すぎる。
「どうする……」
弾切れになるまで耐える。もちろんその作戦は使えるかもしれない。
もし全ての銃弾を自分に使ってしまった場合、後の戦いはどうするつもりだろうか。
まだ最終試験は始まったばかりだし、いきなり全力を注ぐことはないはずだ。
かといって特に残弾を気にしている様子はない。相手は射撃をずっと続けている。
しかも、銃自体の性能としては自動装填も付いているおまけ付きときた。
それなら、銃弾が尽きないなんてことも十分あり得るだろう。
つまりこの戦況を変える方法は一つしかない。
「銃撃を防ぎつつ、確実に前へ行こう!」
正直かなり危険ではある。だが、良い方法があまり思い浮かばない。
地面を攻撃して砂煙をたてるなんてことも考えたけど、そんなことをさせてくれる隙はなさそうだ。
他の案だと無理やり前に突っ込むことも考えた。前には絶対にいけるし、近寄ることもできる。
だとしても銃撃を確実に防げる保証はない。前提として近寄ることだけに重きを置いた作戦だ。
今の戦況は打破できるかもしれないけど、後の状況があまりにも不安すぎる。
銃撃を受けたら少なくとも痛手を負うだろうし、それ以降の戦いにも影響が出るだろう。
しかも、近寄れたからといって近接戦が苦手と断定されているわけではなく、あくまで予想にすぎない。
つまり、後先考えない作戦は絶対に使えない状況だ。
「思ったより冷静か……」
銃撃を防ぎながら、ゆっくりと前へ進むハクを見て判断をする。
連射を防ぐということはそれなりの集中力も必要になってくる。
つまりは、かなり精神力の消耗が激しいはずだ。
攻撃が当たる場所まで集中力を切らさずに向かって来られるだろうか。
「どこまで耐えられるか見ものだな」
男は射撃を続けながら内心楽しんでいた。
射撃を防ぎ続けるなら、防ぐことが難しいような射撃をするまで。
的としては理想的な相手だ。
「早々に音を上げるなんてことはよしてくれよ?」
的を狙う眼光がより鋭くなった。
一方、未だ戦っていないある人物が動こうとしていた――。
「俺もそろそろ行くとするかな……」
今回のお話ですが、銃について詳しい方にはご指摘を受けそうな内容になっています。
僕自身、銃にそこまで詳しいわけではないので、それは違うだろ!と言われても仕方ないですね。
こんな銃があったらいいなと思ってるだけなのでお許しください。
変形後のイメージとしては、スナイパーライフルからアサルトライフルに変わったと思ってもらえれば大丈夫です。でもアサルトライフルよりは連射性能が少し低くて、狙撃もできなくないよねくらいの感じです。正直アサルトライフルくらいの銃撃を避けれるかは怪しいですけど。つまりハク君はすごい子なんですね。




