第一章(31) 入隊試験(19)
一部追記しました。(2024/10/15)
グランが女の子を確認する。
「なんだ?ハクはあーいうタイプが好きってことか?ちなみに俺は強くてタッパがデケェ人が好みな……」
「いや、そういう意味じゃないよ。あの子多分隠すのが上手いんだ」
「何だよ、せっかくダチと恋バナの一つでもできるかと思ったのによ」
「ごめんごめん。言い方をグランに似せるならあの子『強い』と思うよ」
というか最初に思ったけど、グランってそういうこと話すタイプなんだ。ちょっと意外かも。
タイプか……。あんまり考えたこともなかったな。強いて言うなら……とか言ってる場合じゃない。
「そうなのか!?もし本当なら戦いたいぜ。でもよ、隠すのが上手いってどういうことだ?」
「多分強さを表に出さないのが上手なんだと思う。動物で例えると、獲物が来るまでは影を潜めて獲物が前に現れた瞬間に襲いかかる。そんな表現がピッタリかも」
「へぇ、ハクはそんなことが分かるんだな。俺には何も分からねぇよ。」
他人事のように言っているが、ぶっちゃけ強いってことを予感したり、感じたりできるグランの方がすごいと思うのは突っ込まないでおく。
「昔似たような人と出会ったことがあったからね」
あれは数年前になるのだろうか。最初はただの同級生くらいの男の子だと思ってた。
けど、戦いになると雰囲気がまるで変わる。正直びっくりした。
でも、その男の子は僕を成長させてくれた人でもある。
「めちゃくちゃ聞きてぇとこだが、あまり人様の過去に触れないのが俺のポリシーよ。
だから聞かないでおくぜ。まぁ、相手が話すなら止めはしねぇがよ」
そんな自分のポリシー持ってたんだ。これまた意外。
でも、たまにグラン良いこと言うよなぁ。たまにとか言っちゃ失礼か。ごめんグラン。
さっきからグランの第一印象と本当の性格が一致していない。
見た目で判断しちゃいけないってこういうことなんだな。学ばせてくれてありがとう。
かといっても戦闘になるとグランはなぁ……。
頭の中でグランの戦闘のイメージを思い浮かべてみる。
「(ハクの頭の中)よっしゃ!次の相手は誰だ!俺が相手になってやるぜ!かかってこいよ!ボッコボコのギッタギッ……」
おっとこれ以上はやめておこう。なぜだか分からないがビックで危険な匂いがする。
でもグランは間違いなく良い人だ。優しい心の持ち主だろう。
バイキング=ククで戦った時も温かい言葉かけてたし。ちょっと戦闘狂っぽいだけだと思う。多分だけど。
「機会があったらまた今度にでも話すよ」
「おうよ!そん時を楽しみに待っとくぜ。だがよ、ハクが気になるやつか。俺も少し気になってきたな。戦えるといいんだがなぁ」
うん。やっぱり戦闘狂であってるな。
多分違うと思ってしまった僕の考えをすぐに否定しないで欲しい。
「それとあの三人もやっぱり最後まで勝ち進んできたね」
最後まで残った人たちを全員確認した時、もちろん三人の姿もあった。
試験が始まった時から今まで何一つ様子が変わっていない。
「そうだな。俺の予感は当たってたってことだ」
さすがにもうグランの予感は信じるしかない。運任せで当てれるとは思えないし、戦闘と関係ないとはいえすごい力だ。
そんなことを考えていると前のモニター画面が暗転した。
試験者全員が前に注目をする。モニター下にある扉からブル試験官が出てくる。
「あっ……」
その時あることに気が付いた。
グランと話してて気づいていなかったけど、この控室だけ構造が若干違うみたいだ。
舞台に行くための扉は変わらず左奥にある。だが、モニター画面の下に扉はなかったし、左右には二つずつ扉が増えている。
最終試験ということもあり深く考えるのはやめた。
「それではこれより最終試験の説明を始めます」
ブル試験官が所定の位置に着いたことでアナウンスがされた。
「まずはここまでよく勝ち進んできた。善戦した者、苦戦した者もいると思う。
だがここにいる者はそれだけの力を持っているということでもある。
可能ならば全員をこのまま合格にしたいと思うが、そうもいかない」
全員の目を見ながら説明を続ける
「今回の試験は主に戦闘力を見極めることを重視している。現在反乱軍の勢力は強くなっている一方だ。奴らを止めるためにはかなりの力が必要になってくる。生半可な力では歯が立たないだろう」
この説明を受けてハクが自分の予想は合っていたことを知る。
反乱軍の力が高まりつつある現状を抑えるために、戦える人材が欲しいのではないかと考えていた。
逆に言えばそれだけ反乱軍の力が強まっているということでもある。
「だからこそ皆には戦いを通じて強さを見せてもらっている。だが、その戦いも次で最後だ。
悔いのないように頑張ってもらいたい。
そしてもう一つ皆が気になっているであろう詳細を伝える。合格者数についてだ」
集団戦で戦うという説明を受けた時に言っていたものだろう。
合格者の詳しい人数については既に決めてあり、30人まで勝ち進んだ者にその人数を説明する予定と言っていたはずだ。
「今回、既に合格という形で二名は決定している。一人はリアン第一支部育成校の卒業者。もう一人は特例のため詳しいことは言えない」
特例という言葉が出て少しざわつく。
基本的には育成校の成績優秀者か入隊試験合格者にしか政府軍には入れない。
だが特例という形で政府軍に入ることもできる。
詳しいことは知らないが、政府軍トップの人物たちが許可を出さないと特例は出ないらしい。
「そのため本来の合格者から二人分差し引いた数が、今回の合格者数とさせてもらう」
試験者たちが息を吞む。
「最終試験で合格できる者は『10名』だ」
10名。つまりは三分の一まで減らされるということだ。
「そして疑問に思うこともあるだろう。現在、試験者の人数は30名。だが集団戦の戦い方だと勝者は六名しか選ばれないのではないかと」
確かに言われてみればそうだ。後の四人はどうやって選出されるのか疑問には思う。
「残りの四名は別途私たちで選ばせてもらう。それは戦いに負けたとしても例外ではない。
敗者の中から実力のある者を選出し、合格とする。その可能性もあるので最後まで諦めないでもらいたい」
つまりは戦い方の相性が悪かった場合も考慮しているということだ。
戦いにおいて有利不利はあるものだし、本来の力を出し切れてない可能性もある。
その救済措置として今までの戦い方などで力を判断し、合格者を決めるということかもしれない。
「では最終試験の番号を発表する」
ブル試験官が言うと同時にモニター画面が切り替わり、全ての対戦グループが表示された。
上から順にグループAからEと続いている。
1011の番号は一番下のグループEにあった。
「マジかよ……!」
グランが横で驚いている。
それは喜びなのかは分からないが、興奮していることだけは確かだった。
「これは……」
ハクもまたモニター画面を見て驚いていた。
画面には16、32、562、831,1011の番号が戦うグループになっている。
「やばいかも……」
そのメンバーはハクとグラン、そしてあの三人の番号だった。




