第一章(3) 色玉
「力はやっぱり魅力的だと思うし、使ってみたいと思います。でも、使うとしてもそれは正しく使っていきたいです。世界が平和になっていくように、人々が幸せになれるように……」
そう僕はレンジさんに伝えた。
この返答は心からの本心だ。
力は元々僕ら人間が持っていた力ものじゃない。それに、力を託してくれたのも悪用するためでもない。
実際さっきの盗賊のように、ここ最近は事件や悪事が多発している。それも、反乱軍の勢力が強くなっているからだ。理由は分からないけど……。
反乱軍のせいでここ最近の状勢は悪くなっているのも、ここまでの道のりで痛感した。
貧困層の増加や食料不足、行方不明など。それを食い止めるためにも力を使ってこの情勢を少しでも良くしたい。
返答を聞いたレンジさんの表情が笑っていくのが見えた。
そうかという言葉を言った後こちらの目を見つめて喋った。
「君の返事を聞いて安心したよ。その気持ちがあれば君は立派な政府軍の一員になれるさ。
私が保証してあげよう」
そう言って肩を優しくポンと叩いてくれた。
その後レンジさんは家にあるコレクションを見せてくれた。
僕が住んでいたケイにある古代の書物や龍の国『ドラーク』にある伝統的な刀など。
普通では見られないような物をたくさん紹介してくれた。
ただ、レンジさんのコレクションの中で一番気になっている物があった。
それは先ほど盗賊から取り返した水晶だ。
あれだけ普通のものではない雰囲気を感じる。
聞くのも迷惑と思ったが、せっかくだし聞いてみることにした。
さっき盗賊が盗んだ水晶のような物は何かと……。
するとレンジさんは笑った後に水晶の説明をしてくれた。
「これはちょいとした遊び道具みたいなものじゃよ。名前を『色玉』(しきぎょく)と言うのじゃ。この色玉を持って目を閉じ、自分の心の鼓動を聞く。そうすると色玉を持っている人のイメージカラーみたいなものが映し出されるというわけじゃ。せっかくだし試しにワシがやってみようか」
そう言うとレンジさんは、色玉と言われる玉を持って目を閉じた。すると、色玉が黄色に変わった。しかし、それ以外には特に何も起きず、ただただ色玉が黄色に光っているだけだった。確かにレンジさんが遊び道具と言うのも頷けるかもしれない。
色玉を見ていた僕にレンジさんがハク君もやってみるかと言ってくれた。
色玉を受け取ると先ほどまで黄色に変わっていたのが元に戻った。
どういう原理で色が変わったりするのかは分からないが、それでもすごい代物であるのは間違いないだろう。
レンジさんに説明をされた手順で目を閉じた。
特に特殊な力を得るわけでもないので何の体の変化もなく目を開ける。
すると、色玉には何の色も浮かび上がっていなかった。
なんか僕壊しちゃいましたかね……と焦りを感じつつレンジさんの方を見ると何やら考え事をしているようだった。
やっぱり壊したかもしれないと思っているとレンジさんが話しかけてきた。
「これも随分使っているからたまに色が浮かび上がらないときもあるんじゃよ。壊れてもおらんから安心しなさい」
良かった……遊び道具と言っていたけど貴重なものに変わりはないだろうからなぁ……。
一応色玉をゆっくりと返す。でも僕のイメージカラーって何色だっただろう……。
情熱的でもないしクールでもないし優しくはあるか……。でも自分で優しいかと考えていたが結局レンジさんと同じ黄色でいいやという事にした。
その後もう少しだけ談笑し、お開きにすることにした。
「ハク君や、老人のコレクションやらつまらない話を聞いてくれてありがとう。なかなか若い者と話す機会もないからついつい長話してしまった」
いえいえ、そんなことないですと返す。
レンジさんの話を聞いて初めて聞くこともあったし、良い経験になったのは間違いない。
貴重なコレクションも見してもらえたし。
それに、入隊試験前に応援してもらえて良かった。レンジさんも君なら立派な政府軍の一員になれると言ってくれたし、その言葉を裏切るわけにもいかない。
その後家を出た後会釈をし、別れを告げた。
ありがとうございましたと言ってレンジさんに手を振る。
よし、休憩もしっかり出来たしこの調子でいけば数時間後には着きそうかな。
ひとまずは、目的地の政府軍入隊試験がある『イラト』に向かおう!
少し時間が経ち、声も聞こえなくなる距離まで行くとレンジがボソッと言った。
「あれが例のハク君か……。興味深い子だ――」
イラトは国の名前です。