第一章(26) 入隊試験(14)
それぞれが手に持っている鞭と鎖を反対の手で引っ張りながら、少しずつ距離を詰めてくる。
「それじゃあ私たちからやりましょうか」
「そうね、たっぷり可愛がってあげなくちゃ」
少し話したと同時に攻撃の構えを取り始めた。
先ほどまでと空気が変わる。
お話タイムはもう終わりといった感じだ。
「どう来る……?」
一度だけ攻撃を見たといっても戦い方はまだ全く見ていない。
ハクもまた防御の構えを取った。
「それじゃあ行くよ!坊や!」
向かって左側にいる女が鞭による攻撃を始めた。
かなり早い速度を維持したまま、体に目掛けての一撃。
鞭のリーチもかなり長い。
「とりあえずはあの人たちの戦い方を知りたい。いつも通り様子を見よう」
その一撃を後ろに跳んで回避するハク。
攻撃を避けたと思ったがそうもいかなかった。
「甘いよ!」
ハクが後ろに跳んだと同時に右側の女が鎖を振り回した。
こちらもリーチは長く、後ろに跳んで距離が空いても届くくらいだ。
初速は鞭より劣るがだんだんと速度を上げていく。
空中では回避できないため剣で攻撃を捌く。
ガキンという大きな音が鳴る。
「重っ!」
想像以上の威力に体が吹っ飛ばされる。
何とか受け身を上手く取り、次の攻撃に備えた。
「まだまだこんなものじゃないわ!」
二人同時に走ってくる。
鎖を持ち、投げるような動作を取る。
頭を狙った上から下への攻撃。
かなりの力を使っているようだが、簡単に扱っている。
「それなら!」
今度は空中には回避せず、体を横にして避ける。
鎖の攻撃はそのまま地面に当たり、かなり大きな音を立てた。
地面の一部分が壊され、煙が舞い、瓦礫の破片が飛び散る。
「すごい威力」
攻撃された方を見て驚く。
その隙を見逃さない者がいた。
「そっちを気にして大丈夫かしら!」
もう一人の女が鞭の攻撃をする。
回避が間に合わないと判断をし、腕の防御で攻撃を抑えた。
しかし、それだけでは攻撃は終わらなかった。
横から鎖が向かってきていたのだ。
地面に攻撃が当たった鎖は、一時的に煙で隠されていた。
そして鞭の攻撃が当たったと同時に、再び鎖の攻撃を始めたのだ。
「ぐっっ……!」
なんとか剣で防御をすることができたが、再び体を吹き飛ばされてしまう。
さらに攻撃を続けるつもりなのか、女二人はハクの方へとゆっくり近づいて来ていた。
その間に体勢を立て直しながらハクは考える。
「連携攻撃か……」
先ほどの戦いと違い、今度は完全に協力をして攻撃してくる。
しかも思った以上に息が合っている。
「結構厄介かも……」
二度攻撃を受けただけではあるが、そう思わせてくるような攻撃だ。
鞭と鎖の特性を考える。
鞭は扱いやすさもあり、速度も速いため攻撃がとてもしやすい。
ただ威力は低いため決定打にはなりにくい。そこで鎖の出番だ。
鎖は鞭よりも重く攻撃の速度は遅い。しかし、その分威力はあるため決定打になる。
だからその分警戒もされやすい。二回目の攻撃は囮として使われたのだろう。
それぞれが起点を作り、作られた隙を生かして攻撃をする。
つまりはお互いのメリット、デメリットをそれぞれカバーし合っているということだ。
「始まったばかりだけど大丈夫?まさかこれくらいで終わったりしないわよね、坊や?」
「まだ全然大丈夫です。そちらも本気出してないと思いますし」
実際まだ本気は出していないと思う。
まだ小手調べといったところだろう。相手も相手で様子を見ている。
「良かったわ。あれくらいで終わったりでもしたらつまらないもの。あなたもそう思うでしょう?」
随分余裕そうな表情である。
「まぁ、子供にしては頑張ってる方ね。私たちの攻撃を完全には受けていないんだし」
「そうね。鞭もちゃんと防いでるし、あなたの鎖も防いでいる。あの男たちと一人で戦ってただけはあるわ」
仲良くガールズトークをしているとも言える。とはいっても内容はかなり物騒である。
これがデザートやファッションの話だとしたらどれだけ平和だろうか。
「それじゃあもう少し楽しみましょうか」
そう言うと女二人は別々の方へと歩き始めた。
左右に分かれてハクを挟む形になった。
二対一をする場合は圧倒的に有利になる陣形である。
「まぁ、もちろんそうしてくるよね」
だが、ハクもこうしてくることは予想していた。
今までは二人を同時に視界に入れることができていたが、これで不可能になった。
しかも今回は息を合わせて攻撃してくるため、かなり戦略的にも適している。
ここからが本番かもしれない。
「どっちから攻撃するでしょうか?考えてみてね」
完全にこちらを弄びながら戦っている。
どっちかと聞かれたら圧倒的に後ろの可能性が高い。
前にいる人は鞭を持っている。つまり後ろは決定打になる鎖だ。
前を見つつも、後ろの警戒に集中をする。
「それじゃあ行くよ!『暴れ回る鎖』!!」




