第一章(21) 入隊試験(9)
「空間?そんなことできるのか?」
何を意味わからないことを言ってるんだという顔をしている。
もちろん僕もそんなことを普段から思ったりしているわけではない。
ただ、場所を新しく創る方法がそれくらいしか考えられなかった。
「まだ憶測でしかないけどね。でも僕が最初の試験部屋に入った時、違和感みたいなものを感じたんだ。自分でも何言ってるのかって思うけど、そこには存在してるけどしてないみたいな感じかな」
「なるほど?」
頭の上に?マークがいくつも浮かんでいるように見える。
急にこんな話された上に憶測でしかないことを言われてもそうなるはずだ。
「実際さっきの舞台も、本部にある闘技場に見立てたものだとは思うけど、試験のために何個も作る必要あると思う?」
「確かにそれだけ聞くと必要はなさそうだな。あの大会も本部だけでやるもんだし、なんでだろうな」
さっきの舞台を見た時、周りの観客席も含めるとかなりの大きさだった。
それが何個もあるとは正直思わない。
「まぁ、そこまで気にしなくていいよ。今回合格したら聞けばいいだけのことだし。
それで真相が分かるはず」
「それもそうだな。にしてもそんなことに気づくハクもすげぇなぁ」
バシンと背中を叩きながら褒めてくる。
だから叩くのめちゃくちゃ痛いんだってぇ……。
背中を抑えながらプルプルと動くハクを見て悪い悪いと言いながら背中をさすってくれる。
さっきの考えの真相は、恐らくだが政府軍の人たちは知っていることだと思う。
係員も特に言及することなく同じ部屋にいた。
今いる場所の上空に浮かんでた建物も何か関係があるかもしれない。
というか建物浮くってなんだ。どういう原理ですか。
めちゃくちゃスルーしてたけど、あの時にもう違和感に気づけたじゃないか。
変わりまくった建物の姿に感動していたのかもしれない。
ハク!ちゃんと気づきなさいと自分にツッコミを入れる。
そんなことを考えていると、腕に着けている装置に数字が浮かび上がってきた。
装置には、448,602,953,1011,1390の数字が書いてある。
前のモニターの画面も切り替わり、数字が並んでいる画面になった。
そして番号が呼ばれ始める。試験の続きが始まる合図だ。
「全員がこの場所に集合したってことか。くぅー、次も楽しみだぜ!」
グランの表情が明るくなる。
ずっと話をしていたから余計に体を動かしたいのかもしれない。
短い付き合いだけど、細かい話はいいから力で解決!みたいなタイプだと思ってるし。
間違ってたらごめんだけど。
何はともあれ、これで次の試験が始まるわけだ。
今回もグランと戦う心配もない。他の三人も気になるけど、少なくとも32の番号は僕にもグランにもなかった。
「ハク、三人のうち二人の番号が分かったぜ。灰色髪と赤髪のやつらだ」
「えっ、グラン番号知ってたの?」
グランの思いがけない発言に驚く。
「いや、そうじゃねぇ。俺もあいつらの番号が気になっててよ、番号が呼ばれたと同時に奥の部屋に歩いていく人たちを見てたんだ。さっきは最初の方に呼ばれたのもあって確認できなかったからな。ずっと見てたら、その二人が歩いていくのが見えて番号が分かったってわけよ」
グランの言う気になるは戦いたいという意味合いだろう。
実際僕も戦ってみたくはある。あのグランが気になる人たちだし、どれくらいの力量なのか見てみたい。
「番号をほぼ同じタイミングで知れたってことは、その二人が戦うってこと?」
「戦うグループは違うみたいだが、呼ばれる順番が近かっただけだ」
つまりはグループの最後の番号と別のグループの最初の番号が該当したって感じかもしれない。
「ちなみに二人の番号は?」
肝心な部分を聞いてみる。
「灰色髪が16番、赤髪のやつが562番だ」
「なるほど、ありがとうグラン」
「これで青髪の番号が分かれば全員のことを把握できるんだがなぁ」
その言葉を聞いてその人の番号を知っていることを思い出す。
そういえば番号を知っているのは僕だけだった。
グランにも伝えておいた方が良いだろう。
「さっきの試験で番号が呼ばれるのを待ってる時にその人の番号分かっちゃったんだけど、グランも知っておいた方がいいよね」
「そうだったのか!?早く言ってくれよ!ちなみに何番だ?」
体を前のめりにして聞いてくる。
待て待てと落ち着かせたいくらいの勢いである。
「番号は32番だったよ。今回の戦うグループにいる?」
「いや、いねぇなぁ。くっそー!戦えるチャンスは次が最後ってことかよ……」
今回も戦えないことを知ったグランがショックを受けている。
そんなに戦いたかったんだ。しかも今回勝って次に進むことは確定してるんだね……。
グランなら大丈夫だとは思うけど。
状況を軽くまとめよう。つまりこれで全員の番号を知ることができた。
今回僕もグランもあの三人と戦うことはない。
けど、最後の戦うグループで当たる可能性もある。番号は既に知ってるから直ぐに判断できるのは良かったかもしれない。
状況を整理できた時タイミングよくグランの番号が呼ばれ、その少し後にハクの番号も呼ばれた。
「おっ、一緒に奥の部屋行けそうだな。行こうぜハク!」
力強く言葉を掛けてくるグラン。
いよいよ試験も終盤に近くなってきた。
このまま勝ち進んで、できるならグランと一緒に合格したい。
そのためにも次の試験だって負けることは許されない。
「うん!」
グランの声量に負けないくらいの声で返事をする。
ハクとグランは次の試験に向けて奥の部屋へと歩いて行った。




