第一章(2) 生魂力
後書きを少し変更しました。(2024/9/25)
家の中に入ると、昔ながらの道具や書物などがたくさん置いてあり飾られもしていた。
「どうだね、ワシはこういった昔からある伝統的な文化や歴史が大好きでな。ついつい集めたくなってしまうのじゃよ」
ハハハと笑うレンジさん。
でもそう言うだけあって、僕が見る限りでも一般的には手に入らなそうな物がいくつもあった。
武器や道具、神や龍に書かれた書物やオカルト的な物まで様々だ。
正直手に取ってみたいけど貴重そうなので止めておくことにした。
「君、名を何と言うんじゃ?遠くから見ておったがあの身のこなしはだだの子共ではないだろう」
するとレンジさんが話を切り返して言ってきた。身のこなしを褒めてもらったことを嬉しく思いつつ自分の名前を言う。
「僕の名前はハクと言います。明日にある政府軍入隊試験のためにケイから来ました」
するとレンジさんは少し驚いた後に話を続けた。
「ハク君と言うのか。いい名前じゃないか。そして、もうそんな時期になったのか。時の流れは早いものだな……。なぜハク君は入隊試験を受けようと思ったのかね?」
まず、政府軍に入るためには特別な事情以外には方法が二つある。
一つが政府軍のサポート体制を受けている強化学校がある。
その中で優秀な成績を収めた者が晴れて政府軍となれる。
そしてもう一つが政府軍入隊試験だ。
政府軍入隊試験というのは、政府軍が勢力強化のため二年に一度行われている行事だ。
いくつかの試験や検査を実施し、クリアしたものが政府軍に入れるということである。
なぜ入隊試験を受けようと思ったのかという質問は当たり前の疑問だろう。
政府軍は子供の憧れであり、より良い世界を作って行こうという考えのもと作られた勢力だ。
憧れで入りたいと思うものもいれば、力になりたいからなど様々な理由がある。
「僕が受けたいと思ったのは父親との『約束』を果たすためです」
そう言うとその約束とは、と聞いてきたが僕は内緒ですと答えた。
答えてもいいけどまだ出会ったばかりの人に喋っていい内容でもない。
そうかと返答するとレンジさんはある質問を問いかけてきた。
「ハク君は『力』を使いたいと思うかね?」
急にそんな質問をしてきたので少し戸惑う気持ちを抑えつつ、力ですかと返答する。
「少し長話になるが、老人の知恵とでも思って聞いておくれ」
そう言うとレンジさんは話を始めた。
遥か昔、この世界では動物や神、龍などは人間と関係が近い存在であった。
お互いに協力し合い、絆を深めていくことで様々なことを発展していったらしい。
そして、繁栄や経済成長のため、龍たちは己の『力』を一部の認めた人間に授けたのだ。
その力を『生魂力』(インラ)と言う。
生魂力は人間の力を引き上げ、身体能力を活性化させることが出来る。
この力のおかげでより世界はより発展をしていった。
だが、力というものは人を狂わせる原因にもなった。
一部の人間に嫉妬をし、新しい力を得ようと考える者や力を悪用する者もいた。
力を授かるには絆を深める以外にも、信仰をすることや新しく創造をし、強大化していくことで授かることも出来た。
こうして平和だったはずの世界に力を使った争いが起こるようになった。
そして世界の派閥は二つに別れた。
力を正しく使い、より良い世界を作って行く考えを持つ政府軍。
力を使い、欲求のままに世界を作って行く考えを持つ反乱軍。
この派閥が今もずっと続いている。
これが生魂力という力だ。
「さてハク君。老人の長話を聞いてもらったわけだが、この話を聞いた後でも君は力が欲しいと思うかね?」
少し考えた後、僕は答えた――。
ケイというのは国の名前です。