第一章(18) 入隊試験(6)
一部分が想定していた記載と違っていたので直しました。(2024/9/28)
男の方を見てみると暇そうな表情をしており、こちらに話しかけてくる。
「こっちは二人相手に一人で終わらせてんだぜ?なのによ、そっちの戦いはずっと攻撃し合ってるだけ。芸術のかけらもねぇ。飽きてくるぜ」
そう言いながら指で何かを回し始めた。
「あれは『チャクラム』かな?」
相手の様子を見ながら考える。
「あの武器も書物で見たことがあったかも。主に当的武器として使われていたはずだけど、どうやって他の二人を場外に出したんだ?複数戦が得意そうには見えないし、かなりの使い手かも……」
「特にそこのガキ!お前は攻撃を全くしやしねぇ。見てるだけでもムカついてくるぜ」
チャクラムを回している男がハクに向かって話す。
「そうはいっても相手の力量は見たいからなぁ……」
だが相手からしてみれば一方的に攻撃をされているように見えるのだろう。
反論しても余計に反感を買いそうだと思っていた時だった。
意外にも先ほどまで戦っていた相手が反論を始めた。
「君にはこの子が反撃をしてこないだけに見えるかもしれない。
だがこの子は、君が思っている以上に強いと私は思っているがね」
あら、思ったより優しい人だった。
そんなこと言われたら照れはしないけど嬉しく思う。
優しいお言葉ありがとうございます。
「あぁん?どこにそんな根拠があるんだよ」
反論に対してさらに反論をしてくる。
「君はこの子と戦いを交えていないだろう。私の攻撃を的確に捌き相手の様子を探っていたのだろう。私の武器をおとりにした攻撃をも瞬時に判断して防いだ。あの攻撃に騙される人が多い中でだ」
攻撃しながらも相手が様子を探っていると予想していたことに驚く。
さすが最初の試験を勝ち進んできただけはある。
「あぁそうかよおっさん。ガキ!お前は後で相手してやる。お前のことが強いとかほざくおっさんを潰すまで手を出すんじゃねぇぞ」
なぜかこの戦いを勝手に仕切られている気もするが、これ以上怒らすのも嫌なのでいう事を聞くことにした。
「じゃあおっさん!その勘違い頭はこの試験には必要ねぇんだよ。とっとと場外に落としてやるぜ!」
「君のその言葉を正さないといけないみたいだな。私が逆に君を場外へと落としてあげよう」
果たしてこの場にいる必要があるのだろうかと考えるハク。
チャクラムの戦い方も見れるので、まぁいいかという考えに至った。
そして戦いが始まった。
「では私から行くぞ!」
チャクラム男の方に走っていく。
「おっさん!俺の近くに来るなんてことは不可能だ」
そう言うと同時にチャクラムを投げ始める男。
「そんなもの効かぬわ!」
チャクラムを容易く弾く。しかし、弾かれたチャクラムは男の手元へ戻ってくる。
「おっさん、武器が一つとは限らねぇんだぜ?」
服に忍ばせていたチャクラムを指へとかける。
そのまま連続で投げ始めた。再び向かってくるチャクラムを弾くが、また手元に戻ってくる。
そして投げるたびに数が増えていくチャクラム。
三つ、四つ、五つと数を増やしていき、遂には10を超えた。
「おいおい、さっきの威勢はどうしたおっさん!まだまだこんなもんじゃねぇぞ!」
人差し指だけで回していたチャクラムを小指にも引っかけて回しだした。
さらに数が増えていく。その数は20に迫っていた。
最初は簡単に攻撃を弾いていた男も、次第に弾くことが出来なくなっていく
体中に攻撃が当たり少しづつ後ろへと下がる。
もう何もできないという状況だった。
「これで終わりだ!『狂輪の舞踏会』!!』
無数のチャクラムがかなりのスピードで相手へと向かっていく。
その攻撃はもちろん防ぐこともできず、そのまま場外へと落ちていった。
「美しい!多数のチャクラムが相手に襲い掛かり、相手に何もさせずに戦いを終わらす。芸術そのものじゃないか!」
自分の攻撃に感動をしている様子を何とも言えない目で見るハク。
その視線に気づいたのか自我を持ち直し話しかけてくる。
「これで邪魔なおっさんは場外に落ちたってわけだ。ガキ、後はお前だけだぜ?
ただ、安心しな。そのまま場外に落としてやるからよ。仲良くおっさんと脱落するんだな!」
いかにも反乱軍のようなセリフである。
本当に政府軍側の人なのだろうかとまで思う。
「ごめんけどそうなることはないから安心してよ。さっき僕のことを強いと言ってくれたお兄さんのためにも負けられないし」
言葉を聞いて笑いながら喋ってくるチャクラム男。
「あぁそうかよ。おっさんが言ってたことが間違いだったことを証明してやるぜ!
お前の場外へと落ちる姿でな!」
戦いの第二ラウンドが始まった――。




