第一章(14) 入隊試験(2)
「はああああああ!」
力強い言葉と共に接近をしており、右手には細剣が握られている。
そして、細剣を突き出してきた。
攻撃が体へと当たる瞬間に攻撃を避ける。
身体に存在しているいくつかの急所を正確に狙ってくる攻撃。
ただ見るだけでは習得することが出来ない、流れるような動き。
しかし、動きは完璧だが速度はそこまで早いわけではない。
突き攻撃をしてくる度、体に当たらないよう躱し続けるハク。
何度も攻撃をするが当たらない。その状況に焦りを感じたのか、一歩後ろへ下がるジェントルマン。
再び細剣を構えて走り出してくる。
先ほどの攻撃とは変わり、かなり早いスピードを維持したまま連続で突いてくる。
ホラホラホラホラと聞こえてくるかのような突き攻撃。
さすがに避け切れないと思ったのか、剣を鞘から出して対抗する。
スピードは間違いなく早くなった連続突き攻撃。
一般の人なら間違いなく捌くことが難しい芸当。
だが、それでもなお攻撃を捌き続けるハク。
突き攻撃をしていく度に息が少しずつ上がっていく。
一方でハクは息一つ上がらず、試験が始まった時と何も変わらない。
このままでは攻撃が通らないと悟ったのか、一度攻撃を止めた。
「ユー、なかなかにやりますね。かなりの強者と見受けられます。
いいでしょう!ミーの最強の奥義をあなたに見せてあげましょう!」
ジェントルマンは細剣を上へと向け、少しジャンプをする。
足が地面へと着いた瞬間に前に走り出す。
そして、細剣を後ろに素早く引き、渾身の一撃を浴びせようとする。
「ある程度力を見ることは出来たかな……」
ハクが頭の中で考える。
ここまで攻撃を躱したり、捌いてきたけど攻撃はこちらには通じなかった。
そして今は、最強の奥義を繰り出そうとしてきている。
つまり、彼の攻撃はほぼ全て確認することが出来たはずだ。
それならもう、こちらから攻撃をしても問題はない。
「ごめんよ、ジェントルマン」
そう言うと同時に、なにか壊れたような音が響く。
ジェントルマンの持っている細剣の剣身部分が、二つに割れる。
割れた剣身部分が、地面へと落ちていく。
カンという音が鳴った。その音を聞いたハクは、持っている剣をゆっくりと鞘へ納める。
「え?」
その声は、戸惑いと困惑を抱えたものだった。
ジェントルマンからしてみれば、渾身の一撃がハクの体に命中しているはずだった。
しかし、目の前にあるのは細剣が折れているという結果。
想定していたものとは全く別の状況である。
「何を……したのだ?」
ハクへと問いかける。
「簡単なことだよ。細剣を僕が折ったんだ。
君の細剣ならそんなことはしないけど、今回はあくまで模造武器だ。
それなら君に被害は出ないし、降参させることも出来る。
そしてもう一つ。僕がどうしてこんな事をしたかについて。
今回の戦いが最初の試験。つまり、ここに来た試験者が大体にはなるけど、どれくらいの力なのかを確かめたかったんだ。相手と自分の力量の差が分かるからね」
ハクは、ジェントルマンが攻撃を仕掛けたと同時に回避をした。
そしてそのまま素早く剣を取り出し、細剣の剣身へと攻撃を仕掛ける。
かなりのスピードと力を込めた一撃は、細剣の耐久力では耐えることが出来ず、二つへと割れてしまった。
ジェントルマンが見たのは、攻撃を躱された後に何かしらの反撃をされたということでしかない。
説明をされたことで、今置かれている状況を理解する。
「ミーの負けだよ。降参さ。ミーとユーの力の差がここまでとは。
試験という状況で、力量を確かめようとする行動力。
そんな事をする余裕すらもユーにはあったのか。
ミー……いや、私もまだまだ未熟であったということですね」
持っていた細剣を、地面に落ちている剣身の隣へと置く。
ジェントルマンが前へと歩いて来て右手を前に出した。
「ありがとう。君のおかげで自分の弱さを知ることが出来た。
私はまた……いや、今まで以上に鍛錬に励んでいこうと思ったよ。
試験はまだ始まったばかりだし、次の試験からは勝ち進んだ強者たちが君を待ち構えているのだろう。それでも、君には最後まで頑張ってほしい。私の分まで」
自分も右手を前に出して力強く握手をする。
「応援してくれてありがとう。あなたの期待を裏切らないように合格してみせるよ」
握手が終わると係員が話しかけてくる。
「試験お疲れさまでした。勝利された1011番の方は、この先にある扉の方に進んでください。
そちらが次の控室となっております。それではご検討をお祈りします」
そう言った後、係員はジェントルマンを連れて来た道の方へと向かっていった。
そのままエントランスまで案内されるのだろう。
ひとまずは、合格まで一歩前進することが出来た。
ただ、まだまだ安心することも出来ない。
さっきのジェントルマンも言っていたが、次に待ち構えているのはこの勝負を勝ち抜いた強者たちだ。簡単には勝たせてくれないだろう。
「よし!とりあえずは扉の先に向かおうか!」
言われた扉の方へと歩いていく。
入ってきた扉とは、デザインが少し異なる見た目をしている。
まるで第二の関門と例えるべきか。扉の重さは先ほどと全く変わらない。
ゆっくりと扉を開ける。
そこには既に多くの人が、次の試験が始まるのを待っていた。
その中に、少し前に見た姿があった。
身長は190に近く、身体もかなり屈強な作りをしていて、ストレッチをしている。
既にグランは、試験を通過していた。




