第一章(12) 入隊試験開始
部屋にいた全員の目線が、言葉が聞こえた方へと向かう。
そこには一人の男性が立っていた。
真っすぐに伸びた綺麗な姿勢を維持したまま、入隊希望者全体を見る。
「私が今回の試験官を担当するリアン第一支部監査のブルだ。よろしく頼む」
それは、昨日クアル村で出会ったブルさんだった。
クアル村にいたからてっきり副支部の人かと思っていたが、違ったようだ。
「今回の入隊希望者は1500人ちょうどとなっている。
もう二人ほど多い予定だったようだが、来れなくなったようだ。
そしてここにいる皆は、政府軍の一員になりたいと思ってくれている。
その気持ちは、私たちとしてもとてもありがたいことである。
しかし、気持ちがあるだけでは政府軍に入ることは出来ない。
皆にはその気持ちと共に『力』を証明して欲しい」
二人多い予定と言っていたが、恐らく昨日戦った二人組だろう。
一応、本当に入隊試験受けるつもりだったんだな。
元々入隊試験は戦える力だけでなく、技能や学力等の全てを判断して入隊できるものを決めていた。
力と言っても色々な力がある。知力、感力、活力など。
それを見極めたうえで合否を出していた。
しかし今回は、シンプルに力を示せという内容だ。
反乱軍の力が高まりつつある現状。それを抑えるために戦える人材が欲しいという事なのだろうか。
「まずは、今から渡す装置を腕に装着してもらいたい。今回の試験において大切なものだ、紛失などしないように注意してくれ」
そう言った後、係員たちが装置を渡し始めた。
順番に受け取っていく入隊希望者たち。
ハクたちも装置を受け取り、腕に装着する。
すると数字が浮かび上がり、1011と記載されていた。
「今数字が出てきたと思う。それは皆にランダムで付けられた番号だ。
よく覚えていて欲しい」
装置を見ていると映し出されていた数字が消え、別の画面が浮かび上がった。
そこには273と1011の数字が書かれていた。
「画面が切り替わったと思うが、今表示されている番号同士で戦ってもらう。
順番に番号を呼んでいくので、呼ばれたものは奥の部屋へと向かってほしい。
番号を呼ばれていながら部屋に来なかった者は、失格とするので注意するように」
すると、前にある巨大なモニターに数字が表示された。
自分の番号は書いてなかったので、もう少し時間がありそうだ。
「そして最後にもう一つ注意事項がある。
各々武器を使用する者もいると思う。今回の試験では、持ち込んだ武器の使用は禁止する。
代わりと言っては何だが、武器の模造品で代用してもらう。
異論は認めない。それでは健闘を祈る」
ブルが言い終わったと同時に、モニターに表示されていた数字がアナウンスで呼ばれ始めた。
持ち込んだ武器の使用は禁止というのは納得できた。
まず、今回の戦いは殺し合いではない。あくまで力を見極めるための戦いだ。
持ち込んだ武器の中には、殺傷能力が高い武器もあるだろう。
それに何か細工を仕掛けている武器もあるかもしれない。
殺傷能力のない模造品を使う事で、大事に至らないようにし、元々の力を図るための配慮なのだろう。
僕の持っている剣は、特に細工も何もしてない。けど、心配な点はあることにはある。
でも些細なことだし大丈夫だ。
そんなこと考えると、グランが話しかけてきた。
「ハクは何番だったか?まさかとは思うが俺の対戦相手だったりしねぇよな?」
若干心配しながらもお互いの数字を確認する。グランの方には125と831と書かれていた。
良かった、少なくとも相手の番号ではなさそうだ。
数字が違ったことを確認したグランも安心したようだ。
戦いという以上、相手になったとしても手を抜くなんてことは出来ない。
そんなことグランも望むはずがない。
でも、知り合いと戦うなんてことも出来れば避けたくもある。
グランと戦うことがないように祈るだけだ。
しばらくするとモニターに映っていた画面が切り替わり、新しい数字の組み合わせに変わった。
そこには、273と1011の数字が書いてあった。
書かれていた数字が順番に呼ばれていき、273と1011の数字も呼ばれる。
「呼ばれたな。ハク、お前なら大丈夫だ!俺も勝ってそっちに行くからよ!」
グランが声をかけてくれる。
心強い言葉。背中を押される。
「ありがとう!グランも頑張ってね!勝って会おう!」
グランに言葉を返す。
おうという言葉と共にグッと親指を立てる。
いよいよか……。
緊張も少しだけある。だが、楽しみという気持ちの方が強い。
ここで負けたら約束も何も果たせなくなってしまう。
そんなことは自分の心が決して許さない。
今まで培ってきた力を存分に活かして、勝ち進んでいかないと。
そのためにここまで来たんだから。
部屋の先にある戦いの場へと足を運んだ。




