第一章(11) リアン第一支部
今までは、政府軍と書いて政府軍と呼んでいました。
今後は、軍と付く場合には政府軍という表記。本部や第〇支部と書かれている場合にはリアンと表記します。
例:政府軍に入りたい。 リアン本部かリアン第一支部に入りたい。
少し複雑ですが、把握の方よろしくお願いします。
一人の男の子が走っていた。
地面をたたきつけるほどの激しい雨。
空から降り続ける雨は泣いているかのようだ。
草木も揺れ、葉も垂れ下がるその光景は悲しそうにも見える。
何も喋らずに走る。
顔から落ちる水は、雨なのか涙なのか分からない。
しかし、表情は曇っていた。
痛みや哀しみ、悩み。
彼は何を思っているのか。
後ろから大きな音が聞こえた。
豪雨の音を貫通してくるほどに。
衝撃波のようなものが背中に伝わってくる。
懸命に走る。ただ真っすぐ。
後ろを振り返ってはいけない。
振り返れば後悔する。
だってあれは、あんなことは。
『お別れ』をしたのも同然だ――。
ピピピピという音と共に目を開ける。
カーテン越しに見える光は、明るく晴れを表す色だった。
ゆっくりと立ち上がり、カーテンを開ける。
外には散歩をする人や店を開ける準備をする人も見える。
いたって普通の日常風景だ。
そのまま少し外を眺めてから、支度を始めた。
一通りのことを済ませたハクは、チェックアウトをしてホテルを出た。
あれから時間が経ったこともあり、人も多くなっていた。
それに入隊試験を受けるような人も数名いる。
目線を上へと向ける。その奥には大きな建物が見えていた。
今日試験が行われる、『リアン第一支部』である。
「よし、遅れないように早く向かおうか」
ハクはリアン第一支部に向けて歩き始めた。
歩き進めると建物の全貌が見えてきた。
正面には大きな入り口があり、その上には何層かの壁が連なっていた。
横には空へと伸びている高い塔が建っており、支部から繋がっているのだろう。
上空には浮いている建物が何個かあり、何かを研究しているような施設にも見えた。
周りも水と木々、花などで囲われていて自然も活かされている場所だった。
そして隣には、リアン第一支部育成校が建っているのが見える。
育成校は6歳からの入学が認められており、15歳まで日々勉学や鍛錬を積んでいく。
この育成校の目的としては、政府軍に入ろうと思っている若者を支援する学校だ。
反乱軍を止めるために戦う力を身につけようとする者。
裏方に回り事務作業や医療業務、開発などをしてサポートをしたい者などジャンルは様々だ。
そんな若者たちを幅広く手助けする存在になっている。
ただそのまま卒業しても、簡単に本部や支部に配属されるわけでもない。
本部や支部に配属されるのは、成績優秀者に限られる。
そのため大半の学生は、支部の下にある副支部へと配属される。
副支部は世界中に建てられており、本部と支部では抱えきれない身近に起きる事件などを解決してサポートをしている。
「随分変わったなぁ。十年前はこんな感じじゃなかったのに」
そう思わせるほどに建物や景色は変わっていた。
あの頃が懐かしいと思いつつ、階段を上っていった。
その後、建物の中に入ると広いエントランスが迎えてくれた。
周りを見てみると、受付をしている人や業務をしている人、たくさんの人が話をしている。
他の場所へと続く通路や階段、大きな電子モニターなどが並んでいる。
受付をしているところへと向かい、入隊試験の説明を受ける。
試験のかかるおおよその時間や禁止行為など。
個人情報や手荷物検査などは勝手に行われるとのことだ。
ここは最新の技術が組み込まれている場所だろうし、受付を済ますこれまでの間に、恐らくだが自動で行われていたのだろう。
何か検知されると受付をした時にでも対処されるのだろう。
また、試験の詳しい内容については試験が始まる直前で伝えられるとのことだった。
受付を済ませると別の係員の人に案内され、別室へと案内される。
ゲートが空くと多くの人が試験を受けるために待っていた。
入念にストレッチをしたり、神経を集中していたり人それぞれ色々な準備をしていた。
係員と別れた後、グランを探すことにした。
周りを見ながら歩いていると、見覚えのある体格と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
ジャンプをして腕を回し、体を温めているようだった。
おーいとグランに向けて声をかける。
こちらの声に気づいたようでグランが歩いて来てくれた。
「よう、ハク!昨日ぶりの感動の再開だな!また会えて嬉しいぜ!
昨日は大変だったが昨日は昨日。今日は今日だ!悔いのないように頑張ろうぜ!」
それは感動の再開と言えるのだろうかと突っ込みたくなるが、またこうして会えたことは嬉しい。
「そうだね。悔いの残らないよう全力を尽くそう!」
言葉を返す。
グランは、昨日会った時と変わらない声色や雰囲気だった。
昨日の出来事が、今日の試験に影響を与えていることはなさそうだと感じさせてくる。
確かに言われた通り、今日が一番大事な日だ。昨日のことを考えても仕方がない。
試験の時間が迫ってきているのかさっきよりも人が多くなっており、新しく部屋に入ってくる人も少なくなってきていた。
僕もそろそろ集中しておこうか。
軽く体を動かし、体を温める。
身体を動かし始めて少しすると、グランが話しかけてきた。
「ここに俺が来た時、すでに人はある程度いたんだ。そんで俺の予感が感じたんだよ。
強いやつは間違いなく多くいる。ただな、少なくとも三人はただものじゃないと思うぜ」
グランの予感か……。正直半信半疑だったけど、昨日の店長さんのこともあって割と本当なんじゃないかと思ってきている現状。
昨日はグランの戦いを少し見ることが出来たが、強者だと確信した。
そのグランがただものじゃないと言うくらいだ、余程腕が立つ三人なのだろう。
少し気になることは気になる。
外見だけじゃ判断は出来ないが、使う武器などは見ることが出来る。
グランに聞こうと思ったその時、大きな声が部屋に響いた。
「長らくお待たせした。それではこれより、リアン第一支部入隊試験を開始する!」
入隊試験が遂に始まった――。




