表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/96

 あれから1ヶ月。


 一応宇宙を掘ろうとして検討したが、早期に意味がない事が分かった。

 仮に宇宙を掘ってダンジョンを作れたとしても、地球は太陽の周りを凄い速さで公転してるので、ダンジョンは宇宙に置き去りになるからだ。

 よって、別の可能性を検討した結果、普通に、いや奇抜に乗り物で月に行く事になった。


 俺は船体のほとんどがミスリルの惑星間航行ダンジョンをサクッと作った。

 惑星間航行ダンジョンとか御大層な名前だが、本質は以前作った強襲揚陸ダンジョンと変わらない。

 ミスリルの砂から掘り出した惑星間航行ダンジョンは、銀色で少し歪んだ船体だった。


 船名は国際ダンジョン連盟で決めると無駄に時間がかかりそうだから、俺が『ダンジョン号』と決めた。

 関係者は全員不満だったが、こんなもん他とかぶらなきゃ何でもいいんだ。


 ダンジョン号はダンジョンだから気温の調整も空気清浄もやってくれるし、ミスリルで作ったから、有害な宇宙線やデブリはみんな弾いてくれる。

 ついでに糞尿やゴミは全部ダンジョンが吸収するので汚れない機能までついてる。


 エンジンは、ダンジョン丸みたいなダンジョン推進機関は微生物がいない宇宙では使えない。

 そこで水牢の罠をエンジンにした。

 なぜ水牢がエンジンなのか。

 真空だと水の沸点は0℃だ、つまり温度がプラスだと氷から蒸気に昇華するのだ。

 液体の水を0℃を越えた真空に放り込めば、一発で蒸気になる。

 ダンジョン号は水牢の罠から無制限に供給される水を蒸気として噴射することで推進力としているのだ。

 ぶっちゃけただの湯気だが、イオンエンジンなんぞ比較にならない出力だった。

 魔力が濃いこの世界だからできる荒業である。


 宇宙船をダンジョンにするだけで必要な機能のほとんどを省略できた。

 宇宙をダンジョンで航行するのは、実は理に叶っていたのだ。

 いやー、宇宙船で宇宙に出る奴の気がしれないわ。


 問題があるとすれば、エアロックの小窓から『探知』の魔法で覗かないと外の様子が分からない事と、カステレジョダンジョンと同じく、魔物として用意したミスリルゴーレムが襲ってくる事くらいだ。

 ただ、ミスリルゴーレムは軽い上に、ゴーレムとしては力が弱かったので、『装甲』の魔法には手も足もでなかった。

 ただ、ひたすらウザい。


 船体は総ミスリル製なので、総重量わずか100kgだが、エアロックだけはギミックでどうにもならなかった。

 とても軽かったのたのに、アダマンタイト製のエアロックを取り付けたら、総重量は500kgになった。


 月に空間型ダンジョンの出入り口を置いてくるだけなので、月から飛び立つ機能もない、むしろ省ける物は全て省こうと、着陸する機能すら省いた。

 アポロ計画の技術者が聞いたら卒倒するようなシンプルさだ。

 唯一アポロ計画の宇宙船より複雑なのは、スラスターが複数あることだけだ。


 昔は種子島から大型ロケットで打ち上げたもんだが、今は反重力ユニットがあるので、宇宙に出るのはさほど難しくない。


 俺とターミナルダンジョンの出入り口を乗せたダンジョン号は、その辺の野原から静止軌道に打ち上げられた。


 今回はターミナルダンジョンの出入り口もあるので、無限に補給できる。

 ポテチもマンガも持ち込み放題だ。


 ガスコンロみたいなツマミを回し、エンジンを始動する。

 今までは、緻密な計算のもと慎重に出力を調整してたが、ダンジョン号はいくらでも方向転換できるし、補給も容易だから、細かい事を考えず月を目指して進めばいい。


 2週間後、俺が操縦するダンジョン号は、音速の50倍の速度で無事月に墜落した。

 『装甲』の魔法がなかったら、確実にあの世行きだろう。俺ならあの世から空間型ダンジョンをつないで帰ってこれる気もするけど。


 俺が意識的に移動させてきたターミナルダンジョンの出入り口は、月についた途端に俺が意識しなくてもその場にとどまり続けた。

 月の自転に合わせて移動する可能性もあったが取り越し苦労だった。どうやら重力の影響を受けるようだ。


 ターミナルダンジョンに戻って報告した後、俺は宇宙服を借りて月面を移動した。


「地球小さいな。」


 月から見た地球は思いの外小さかった。

 俺は身の安全のために、十何年もあそこでダンジョンを作りまくっていたんだ。

 それがいつの間にか、ダンジョン課繋がりで国際ダンジョン連盟に参加し、ついには月まで来てしまった。


「月に来てしまったと言っても、やることはダンジョン号を月に埋めるだけなんだけどね。」


 墜落でできたクレーターに、ダンジョン号を埋めれば、月ダンジョンの完成だ。

 後はダンジョン号が魔力をDPに変換して、勝手に大きくなるだろう。

 やってる事はカステレジョダンジョンと一緒だ。


 俺はふと、月でダンジョンを作ったらどうなるのか気になった。

 だんじょん荘に戻り、適当なコアを取ってきた後、すぐに月に戻る。


 月では早くも工事が始まっていた。

 俺は彼らの邪魔にならないように、かなりの距離を取る。

 重力が少ない上に宇宙服じゃ動きにくいな。

 なんとか1kmくらい離れ、ダンジョンを作る。


「ダンジョン創生」


 地球のダンジョンは約1気圧だが、月のダンジョンは真空に近い。

 こんな環境で魔物なんかいるんだろうか。


 ダンジョンマスターの権能で検索してみると、何か分からないが確かに魔物がいるようだ。

 『探知』の魔法を使ってみたが、案の定うまく対象を捉えられない、相変わらず距離感がないなぁ。


 仕方なく動きにくい宇宙服でダンジョンに突入して確認すると、魔物は石英でできたクォーツゴーレムだった。

 まあ、そうなるよな。

 俺は地球に戻り、国際ダンジョン連盟に月にダンジョンを作ったと報告した。

 言葉のチョイスがおかしい場合も、誤字脱字報告でお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ