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ボス戦(準備)

 2階層も、最初こそ苦戦したが、火に弱い魔物だったので、四条の必殺技『ファイアースラッシュ』でさくさく討伐した。

 『ファイアースラッシュ』とはいっても、初戦の時みたいに四条を毎回焼いた訳でない。

 四条は『点火』の魔法を剣と同じ座標に出現させ、剣の動きに合わせて魔法も動かすという、無駄に器用な事をしていた。


 何で『点火』の魔法を知ってんだ?どっから漏れた?

 しばらく考えてたが、魔石発電がまだ実験段階の頃に、小山議員に教えたのを思い出した。

 当時は魔法の火じゃないと魔石燃料は火が点かないと思ってたんだよな。

 あそこから漏れたとしか思えない・・・マジックミサイルやファイアーボールが広まったから、影響は少ないだろうけど、帰ったら小山議員は電気アンマの刑だ。


 さて、問題の3階層だが・・・


「ボス部屋だよね。」


 俺達の前には、高さ4m、幅3mほどの、石の扉があった。

 精緻に施された彫刻が、ボスがナニモノなのか全力で主張している。


「やっぱりケルベロスだよね。」


「だよねー。」


「明らかにミノタウロスじゃないよね。」


「ケルベロスだね。」


 なんか四条がうなだれた。

 よほどミノタウロスと戦いたかったらしい。

 というか、ミノタウロスと戦うためだけに、わざわざギリシャまでやってきたと言った方が適切か。


「では学生さん、ケルベロスはどうやって倒したらいいと思いますか?」


「「寝かす。」」


 神話によると、ケルベロスはオルペウスの琴であっさり寝ちゃったそうで、睡眠に対する耐性がほぼゼロだそうだ。

 『睡眠耐性』のスキルは、徹夜しないと修得でないので、3つの首が交代で寝てるケルベロスには、そんなスキル獲得できないのも道理といえた。


「あと、ケルベロスはパンとか甘いものが好きですよ。」


「え?ケルベロスって地獄から脱走した霊しか食わないんじゃ?」


「いいえ、ケルベロスにパンを与えるって諺もありますよ。」


 ケルベロスはどうやら雑食らしい。

 ウエハースダンジョン食うかな。

 ちなみにケルベロスにパンを与えるというのは、平たく言えば物事をワイロで解決する事だそうだ。


「あとは、ヘラクレスが首を絞めて、降参させたっていう逸話があります。」


「絞め技が有効か。

 となると・・・」


 プロレスでチョークスリーパーとよばれる首絞め(反則)は、血管を潰して脳への酸素供給を絶つ技だ。

 ヘラクレスが3つもある首をどう絞めたかは不明だが、呼吸を止めたにせよ、血流を止めたにせよ、酸素を取り込んで生きてるのは間違いなさそうだ。ならば・・・


「一酸化炭素なんか効果ありそうだな。」


「普通に毒ガスなんか効くかもね。」


「バカ、ケルベロスのヨダレが猛毒で、地面に落ちたらトリカブトが生えたって話だぞ。

 毒なんか効くかよ。」


「フグ毒なら効くんじゃ?」


「そんなの、ここに無いわよ。」


 それからも、どこからか持ち込まれたビールを片手におつまみをパクつきながら、あーでもないこーでもないと混沌とした作戦会議が続く。

 まとめると、ケルベロスは状態異常に弱そうだという事だった。

 てか、おまえら、ボス戦を前に酒盛りって、どーゆう神経してんだ?


 さすがに酔っぱらってボス戦は無茶なので、ここで休んで明日に備えようと話がまとまっまったその時だった。

 ボス部屋の扉が勢い良く開いた。


「おまえら!さっさと入って来んかーーっ!」


 ボス部屋からどなり込んできたのは、彫りの深い顔立ちの初老の男だった。

 身なりは左手が隠れ右手が露出する古代ギリシャ風で、靴もサンダルだ。


「作戦会議までは我も待つが、なに宴会始めてんだ!こちとら何年も待ってたんだぞ!」


「「すいませーん。」」


 古代ギリシャ風のおっさんのあまりの剣幕に、全員土下座して謝った。


 ボス部屋には、象みたいにでかい三つ首のワンちゃんがお座りしていた。

 犬種は分からない、サーベルタイガーみたいな牙が印象的だ。

 神話ではこいつ甘党だと言われてるみたいだが本当か?あの牙絶対肉食獣だぞ。

 試しにリュックの中の空間型ダンジョンから、糖分を特盛りで配合したウエハースダンジョンをあげたら、尻尾をパタパタ振って喜んでくれた。

 ケルベロスの攻略は、あっさり完了した。


「さて、やっと来たな。」


 さっきのオッサンは、ボス部屋に大きな白い石のテーブルと腰掛けを発生させ、適当に席についた。


「あの、テレビ局の者なんですが、取材させてもらって宜しいでしょうか?」


「ああ、構わんよ。

 そういえば自己紹介がまだだったな、我が名はカオス。」


「あー、やっぱ神様だったんだ。

 初めまして、鈴木元太です。」


 神様に会うの久しぶりだな。

 地球に帰ってくる途中で、たまたま繋がった神界でしか会ったことないけど。


「おいミスターゲンタ、このオッサン本当に神様なのか?」


「うん、『探知』の魔法使ってみなよ、反応がエグい事になってるから。」


「えーと・・・うわっ!なんだこりゃ!」


 ボブが、なんか冷や汗かきだした。

 撮影スタッフも学生たちも、なんか青い顔してる。

 ただ、四条だけは興奮した。


「カオス様、お会いできて光栄です。」


「うん、コイツからは我からの使命を勘違いした奴らと同じ臭いがするな。

 鈴木元太はもう少し神を敬え。」


「敬えって言ったって、異世界で絵に描いたようなダ女神に振り回されたら、こうなりますよ。

 カオス様も、俺みたいにかしこまらない方が都合が良いんじゃないの?」


「まあ、そうかもしれんな。」


 カオス様はため息をつくと、早速本題に入った。


「鈴木元太、この世界の魔力を徹底的に消費してくれ。」


 それがカオス神からの依頼だった。

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