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ダンジョンアタック

 隠されたダンジョンの入り口を発見する方法は、地道にその辺を発掘するか、ダンジョン生成時に砕けるダンジョンコアの反応を見るしかない。

 入り口に近いほど砕けるのが早いのだ

 ここでカメラのスロー再生が役に立った。

 テレビクルー連れてきて良かった。


 宮殿が復元された辺りかと思ったが、入り口は意外にもクノッソス神殿の区画ではなく、丘を下った病院の駐車場だった。


 幸か不幸か『治療』の魔法が普及した影響で、整形外科と歯科が閉鎖しため、病院の駐車場には、思ったほど車が停まっていなかった。

 病院と交渉したら、穴を掘っても大丈夫だと許可が下りた。


「どうしよう。

 残土は俺のリュックに詰め込むとしても、ダンジョンばっか作ってたから、穴を掘る魔法知らないんだよ。

 岩を砕く『削岩』の魔法とかはあるけど。」


「なら、原始的な方法しかないな。」


 シャベルを担いだ男達が続々と集まってきた。

 どっから湧いて出たのか思ったら、クノッソスで発掘調査をしてた地元の大学生だった。

 彼らによって、あっという間に5mほど縦穴が掘られ、石の蓋が出土した。


「早っ!さすがプロ!」


「いや、魔法とスキルのゴリ押しだから。」


 彼ら発掘調査員は、オレゴン州のゴールドビーチダンジョンで鍛えたんだそうだ。

 俺そんなの作ったっけか?作ったんだろうな。


 石の蓋に『掃除』の魔法をかけ、細かい土砂を洗浄する。

 すると、対称形の両刃斧の彫刻が現れた。


「これはラブリュスという斧です。

 ちなみに、このラブリュスがなまってラビリンスになったんですよ。」


 発掘チームの学生が得意気にうんちくをたれたが、そんなもんダンジョン業界では一般常識だ。


「大屋さん、やっぱ糸玉はお約束だよね。

 ああ、やっぱりボスはミノタウロスなんだろうなぁ。」


 四条は調査員の話を聞かず、1人盛り上ってた。

 今から対ミノタウロス戦を想定して、剣を振り回している。


「神話では、テセウスに討たれてますから、もういないのでは?」


「やだなぁカミーユさん、ダンジョンなら時間がたてばリポップするもんだよ。」


 冷静にツッこんだカミーユさんに、四条は冷静にダンジョンの常識で返した。

 この場合は四条が正しい、ただ、神話の通りなら、ミノタウロスはダンジョンのボスと言うよりレアモンスターの可能性が高いと思う。

 ボスならダンジョンを徘徊したりせず、ボス部屋から外に出ないからだ。


 となるとボスは何だろう、ギリシャ神話のボスか・・・ゴーゴンか?ケルベロスか?いや、まさかアイツじゃないだろな。


 重さ1tは下らないだろうに、石の蓋が学生達によって持ち上げられる。


 異世界では、めっちゃくちゃ重い石材を軽々と運ぶ人々光景が見られた。

 大抵の作業は、人が集まればできるから、異世界では技術革新が遅いんだよな。


 石の蓋が取り払われた先は、俺の想像どおり下りの階段だった。

 光源は不明だが、新聞を読める程度に明るい、明かにダンジョンだ。

 壁面と天井には、びっしりと彫刻が施されている。

 ダンジョンに足を踏み入れた者は、俺も含めていちいち圧倒され、なかなか先に進めなかった。

 みんながもたつく間、俺は試しにダンジョンに干渉して、内部を把握できるか試してみたが、レジストされた。


「間違いない、このダンジョンには、ダンジョンマスターがいる。

 相手がダンジョンキーパーなら内部の把握くらいはできるからね。」


「え?ダンジョンマスターは、異世界に召喚されないとなれないって言ってなかったっけ?」


「言ったよ。でも現実にクノッソスにはダンジョンマスターがいるんだ。」


「何千年も封印されてたのに?一体何才なんだよ。」


「ダンジョンマスターは、DPを消費して老化を止められるんだ。

 だから、一万年でも十万年でも生きられるんだよ。」


 こういったダンジョンマスターがいるダンジョンに入るのは緊張する。基本的にダンジョンマスターの権能が一切使えないのだ。

 一応ブロワ城の地下水路跡で招待された身なので大丈夫な気はするけど。


 ダンジョンアタックは、四条とボブを先頭にして、その後を様々な魔法を使える俺が続く。

 さらに後ろを撮影クルーが続き、最後尾に穴堀りに参加していた地元の大学生が続く感じだ。


「あっ、これデメテル様の儀式よ。」

「これはオルペウスの琴だ。

 もしかしてハーデスがいる冥界はここなんじゃ・・・」

「これは何だろう、失伝した神話かな。」


 最後尾の考古学者の卵共がなかなか先に進まない。

 マッピングを任せたんだが、人選誤ったかな。


「これは仕方ないよ、大屋さんの殺風景なダンジョンとは比べ物にならない完成度だからね。」


「うるさいよ。」


 俺から言わせれば、こんなびっしり彫刻施すなんて、狂気の沙汰だ。

 よっぽど暇だったんだろな、ここのダンジョンマスター。


「おわっ!ガンダムの壁画があるぞ!」

「いや、それは鎧を着たギガンテスだろ。」


 なんか、版権に抵触しそうな壁画もあるな。

 確かにその壁画は、ガンダムがガンダムハンマー振り回してるようにしか見えない。

 まさかと思うが、魔物としてガンダム出てこないだろな。


 しばらく回廊を進むと、突如柱の影から何かが切りかかってきた。

 ボブはとっさに対処できず、『装甲』の魔法障壁を1枚斬られた。一撃かよ。

 息をつかせぬ連続攻撃に、あっという間に最後の魔法障壁が破られ、ボブは腕を斬られた。

 アナウンサーの皆さんから『治療』の魔法を受ける。

 一方の四条は、青竜刀を刀で受け、足を蹴った。いや、足はなかった。

 上半身は女性、下半身は大蛇、その正体はラミアだ。

 それが2体襲い掛かってきた。


 ラミアといえば魔王城の受付嬢か、きっついのが出てきたな。

 ラミアは足が無いから関節の動きを読めない。

 同じ足がない魔物でも、これがブラッドスネークあたりなら、動きが単調だから、慣れれば簡単に倒せるのだが、いかんせんラミアは頭がいい。

 多くのスキルを身に付け、戦闘に明け暮れていた四条はなんとか食らいついてるが、ボブの方は防戦一方だ。

 アナウンサーの皆さんから『治療』の魔法を受けて何とか耐えてるが、このままだとやられる。


 俺はボブごと『低速』の魔法をかけた。

 そしてラミアに『火矢』の魔法を放つ。

 槍みたいにでかい火の矢は、低速エリアに触れると、物理法則を無視して速度を落とす。

 ラミアがかわすが、火矢はそのまま直進し、壁に命中した。

 その辺りで戦闘していた四条とラミアが火に包まれる。


「バーニングスラッシュ!」


 四条が中二病の香りがする袈裟斬りで、ひるんだラミアを真っ二つにした。

 急いで『水瓶』の魔法を発動し、四条を消火してやる。

 残り1体も、四条が背後から胴を貫いた。

 四条強いな、中二病にかかってなかったらもっと強いだろうに。残念な奴だ。


「たった今、ラミアが討伐されました。

 今回はドロップアイテムもありました、ポーションのようです。」


 アナウンサーがカメラに向かって解説する。


「鈴木さん、これは何でしょうか?」


「解毒ポーションですね。

 体内に存在するはずがない物質を、無理やり無害な物質に錬成する錬金術の薬です。

 これは貴重ですよ。」


 これ、めっちゃ欲しい。

 金にものを言わせて全部一人占めしたいが、事前の打ち合わせで、複数手に入ったドロップアイテムはいくつかマスコミに渡す事になっていた。独占はできない。


 1階層は他にもカルキノスが出た。

 カルキノスは、ヘラクレスがヒドラとの戦闘中にふんずけられて死んじゃったという伝説を持つ蟹だ。

 こちらは白浜ダンジョンの3階層に出没するヘビークラブの上位種だったので、倒し方はあまり変わらなかった。


 ドロップアイテムはカルキノスの甲殻で、軽く頑丈な素材だ。

 焚き火くらいの熱で簡単に成型できるので、加工もしやすい。

 この世界にプラスチックやカーボンファイバーが無かったらさぞかし貴重だったろう。

 つまりハズレである。


 1階層では迷う事なく下りの階段を発見した。

 それまでにラミアとカルキノスを合わせて50体ほど倒し、解毒ポーションを5本手に入れた。

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