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クレタ島

 アテネ中央駅は、鉄道ファンとミステリーファンでいっぱいだった。

 この後オリエント急行は、パリ北駅に戻ったあと車両基地に入り、再び博物館で展示される。

 人混みがヤバいので、俺はホームではなく線路の上に下ろしてもらった。

 暗殺者を避けたかったのだ。

 『装甲』の魔法を使っても毒は効くからね。


 一応解毒ポーションは持ってるけど、これまでも何度か食らって在庫が少ない。

 宝箱から産出するダンジョンもあるけど、アルコール以外の毒は全部解毒するから、ものすごく品薄だ。


 駅を通用口から出て、待ち合わせの場所に移動する。

 そこには先に四条が待っていた。

 こいつ、クノッソスに行くと言ったら、絶対に行くと言いだして、飛行機でアテネに先回りしてたのだ。


 四条はまだ中2病を患ったままだが、ダイヤモンドゴーレムとの戦闘を見る限り、戦力としては申し分なかった。

 今回はクノッソスに何が待ち受けてるか分からないので、ボブだけでは不安だったから丁度良かったとも言える。

 ボブとテレビクルーを待ってバスで港に向かい、そこからダンジョン丸でクレタ島を目指した。


 ダンジョン丸の速度なら、クレタ島まであっという間だ。

 ただ、エーゲ海は船が多い、あまり飛ばすと危険だ、全速力はだせれない。


「うはっ、スゲー。」

「あがっ!」


「しゃべってると舌噛むよ。」


 テレビクルーをダンジョン丸に乗せたのは初めてだ。

 彼らは上下に激しく揺れるダンジョン丸の外で、航海の様子を撮影しだした。

 ダンジョン丸は、ミサイル攻撃を想定してるので、開口部が少ない。

 その少ない開口部から『探知』の魔法で外の様子を見ながら舵をとるので、船内からカメラで外の様子を撮影できない。

 なので船外で撮影するしかないのだが、このロデオみたいな状態でよく撮影できる物だ。

 いや、もしかしたら『乗馬』のスキルを持ってるのかもしれない、ユニコーンやケルピーが出るダンジョンがあったから、不可能ではないな。


 俺はというと、ダンジョン丸の操船に集中している。

 ギリシャの海上交通のルールは把握してない、正直無免許なのでカルマが少し落ちるのだが、ダンジョン丸での移動が一番安全なので、目をつむる事にした。

 沿岸警備隊の皆さんすいません。


 ダンジョン丸でエーゲ海を南下すること3時間、俺の魔法はクレタ島を捉えた。





 クレタ島についたとき、テレビクルーは青息吐息だった。


「撮影はこれからが本番だけど、そんなんで撮影できるの?」


「地面に足がついてれば大丈夫よー。」


 とカミーユさんは強がっているが、フラフラと3歩歩いたと思ったら突然足を止め、海に向かって盛大に吐いた。

 その吐物に魚が寄ってくる。

 釣糸を垂れれば入れ食いかも知れないが、釣った魚は食いたくないな。


 テレビクルーの皆さんはダメそうだから、約束のダンジョンを先に作る事にした。

 俺達が寄港したのはマリアという町の近くだった。

 クノッソスとは20km以上離れてるので、俺のダンジョンでクノッソスを破壊する事はなさそうだ。

 早速マリアの行政センターに断りを入れたら、ギリシャ国営放送の撮影クルーがたまたまいたので、彼らを連れてこの地にダンジョンを創造した。

 カメラマンは何か興奮してたが、こちらはもう慣れたもんである。


 テレビクルーの所に戻ると、ダンジョンを作る瞬間を撮影したかったと国際放送社のテレビクルーが文句を言いだした。

 そんなもん、ボルドーやパリで撮影しただろうに。

 ちなみにテレビ朝日の方は、もう散々撮影してきたので、どうでもいいようだ。


「そんな事よりクノッソスだよ。

 何があるか分からないから、万全の態勢で頼むよ。」


 正直に言うと、テレビクルーはお荷物でしかない、万全を期すならいない方がいいのだが、置いていく訳にはいかない。

 国際放送社とテレビ朝日に、急遽ギリシャ国営放送を加えた我々は、クノッソス神殿に向かった。

 ギリシャ国営放送のスタッフがいるので、クノッソス神殿にはスムーズに到着した。いない方がいいなんて思ってすいません。


「ここか。」


 クノッソス宮殿は今も発掘が続いている、一部復元された所もあったが、一見すると廃墟にしか見えない。

 天井が無い所が多いので、部屋の配置が分かる。部屋数が多く複雑そうだが、よくみると分岐が少なく、無秩序な感じがしない。

 神殿の奥は日の光が届かなかったろう、地上にあっても地下とあまり変わらないから、地下迷宮なんて話になったのかな。


「普通の遺跡だな。」


 それが、見学用の順路を回った俺の感想だった。

 そこで、俺は懐から予備のダンジョンコアを取り出す。


「何を?」


「ダンジョンを作れるか試してみる。

 本当に作る訳じゃないから遺跡は大丈夫。」


 もしかしたら、ここにダンジョンを作れという事なのかもしれない。

 そう思って作成一歩手前まで持っていこうとしたところ。


 ポロッ・・・ダンジョンコアが突然崩れた。


「なにっ!」


 ダンジョンコアの原料は魔石だ。

 知っての通り、魔石は砂岩みたいにもろい。

 それをダンジョンマスターの権能で、表面を硬化し、中の魔石に擬似的な魂というかプログラムというか、なんかそんな物をインストールしたのがダンジョンコアだ。

 長年ダンジョンを運営してきたダンジョンコアなら自身を強化してるが、できたての状態なら一般人でも破壊可能だ。

 だが、衝撃もなしに崩れるというのは事情が異なる。


「どうしました?」


 一部始終を撮影していたテレビクルー達は、俺の様子を見て声をかけてきた。


「前に2度こんな事があった。

 そのときは、いずれもあったんだ。」


 俺はリュックから笏を取り出し、『探知』の魔法を発動した。探知する先は真下だ。

 普通は岩、時々地下水脈が延々と続き、マントル外核内核と変わり、やがて地球の反対側に抜けるのだが、この時は違った。


「やっぱりだ。」


 石畳の床がヒットした。

 明るさは不明だが、多分曇りの日の昼間くらいあるだろう。


「この下には、まだ発掘されてない地下迷宮がある。」


 ダンジョンを作ろうとしてダンジョンコアが崩れるのは、既にあるダンジョンの防衛機能が働いた結果だ。

 防衛機能が生きてるなら、クノッソスは未だに稼働中という事になる。

 多分それだけじゃないな。


「ボブと四条は、さっき作ったマリアダンジョンで魔石をかき集めてきてくれ、最低8個、できればその倍欲しい。

 俺はダンジョンアタックの準備をする。」


 もともとクノッソスにダンジョンがあったらアタックするつもりで来てるので、ある程度物資は揃えてきた。

 国際放送とテレビ朝日のスタッフとは、ダンジョンアタックとなった場合の打ち合わせを、オリエント急行の車内で済ませていた。

 だが、ギリシャ国営放送のスタッフには何も説明してない。

 おさらいの意味も含めて、俺は再度撮影スタッフ全員と打ち合わせした。

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