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テレビ出演 後編

 ズゴックマン元帥が寝っ転がる中、ベンチプレス一式が運び込まれる。

 異様に手際がいい、こういう事態も予測していたようだ。


 まず素の本多三咲にベンチプレスをやらせてみたところ、持ち上がったバーベルは20kgだった。


 続いて元太が笏を構え、『筋力強化』の魔法を本多三咲にかけた。


「魔法使いは杖だと思ったんですが、笏なんですね。」


「ええ、魔法を使うには、魔導書の内容を全部覚えてる事と、魔法陣を正確に脳内に描く事が必要になるんです。

 でも、魔法陣を正確に脳内に描くのは至難の技なので、こうやって笏に刻まれた魔法陣を見ながら唱えるんです。」


「なるほど、そもそも笏は公家が使うカンニングペーパーみたいな物でしたね。」


 『筋力強化』がかかった本多三咲は、今まで持ち上がらなかった30kgのベンチプレスを楽々やりとげた。

 調子に乗って50kg→70kg→100kgと成功させた所で、元太からストップがかかった。


「三咲さん、それ以上は骨が持たないかもしれません、止めておきましょう。」

「はーい。

 でも100kgのベンチプレスができるなんて、魔法って凄いですね。」


「異世界ではこの魔法、7割くらいしか筋力が上がらなかったんですよ。

 それが5倍以上ですから、他の魔法使ったらどうなってしまうか・・・

 俺が覚えた他の魔法を使うなら、それこそ自衛隊の演習場でも押さえてくれないと無理ですね。」


「でも、この魔法があれば、寝たきりの老人でも立って歩けるようになるかもな。」


「介護が楽になりそうね。」


 本多三咲と三遊亭マッチョは普通に平和的な利用法を考えたが、渡辺弁護士と中野シロウは違った。


「それより、軍事だよ。

 今まで重くて持てなかった物を楽々持てるようになる訳だから、歩兵の運用が根底から覆るんじゃないか?」


「もしかして、魔法で北朝鮮の弾道ミサイルとか打ち落とせないですか?」


「来るのが分かってれば、多分できると思います。

 『雷撃』の魔法使いますから、かなりうるさい上に大量のオゾンが発生すると思いますけど。」


「できるんか!」


 マッチョの怒鳴り声でこの話題は一旦終了となった。

 このタイミングで、さっきダンジョン探索に向かった大地君が、なぜか真っ白になって帰還したのだ。


 すでにスタッフがカメラを回収し、放送の準備が整った。

 早速大地君の冒険が始まる。





 鏡みたいな境界が迫る・・・怖い。

 入ったが最後、外に出られない気もするけど、鈴木さんが言うにはそんな事ないらしい。


 境界を抜けてダンジョンに入った。

 そこは明るい灰色の世界だった。

 ダンジョンと聞いたから、暗いのかと思ったから、はっきり言って意外だ。


 ロープから手を離すと、スタッフさんから言われたとおり、視線カメラの電源を入れた。

 LEDが点灯する。どうやら起動したみたいだ。


「こちら大地です。

 ダンジョンの中は不思議と明るいです。」


 僕は視点カメラでダンジョン内を360度見回した。


「こっちに横穴が続いてるようです。

 ちょっと行ってきます。」


 横穴なんて聞いてない。

 念のため脇差し(の模造刀)を手に横穴を進んだ。


 横穴は2mくらいで右折していた。

 右折してさらに2m進む。


「なんか広い所に出ました。」


 そこは5m四方の広い場所だった。

 奥の壁は窪んでいて、そこに宝箱が設置されていた。

 その宝箱の前に、青くてでっかいグミみたいな奴がプルプルしていた。


「スライムだーっ!」


 戦闘なんか聞いてないよーっ、打ち合わせのときは、ダンジョンに入ってリポートする仕事だって言ってたじゃないか!

 でも宝箱があって、その前にスライムがいたら、戦う以外にありえない。

 まあ、相手はザコの定番スライムだ、多分一撃で死ぬんだろう。


「これから戦闘をはじめます。」


 僕は覚悟を決めて、脇差しでスライムに斬りかかった。

 僕の攻撃がスライムに命中する。

 でも、スライムは死ななかった。

 ぐにゃってなったけど、しばらくして反撃してきた。


「わーっ!」


 僕は手で顔を覆った。

 スライムの攻撃が膝のあたりに当たったのが分かる。

 でも、あんまり痛くない。

 そうか、スライムは攻撃力が低いのか。


 それから、僕とスライムの死闘はつづいた。


 脇差しの攻撃が何度か当たると、スライムの動きが鈍くなっていく。


「スライムもダメージを受けてるみたいです。

 なんか、動きが遅くなってきました。」


 と実況したそばからスライムの攻撃を受けた。

 その瞬間だった。


『新規スキル取得 身体強化』


「えっ!スキル取得!?」


 凄いぞ!スキルを取得したんだ!

 

「これで無敵だーっ!」


 スライムに最強の一撃を叩き込む。

 スライムは壁まで吹っ飛ぶと、そのままドロドロになって、すぐにダンジョンに吸収された。

 残ったのは灰色の小さな石ひとつ。


「ドロップアイテムかな?スライムを倒した所に石が落ちてます。

 なんでしょう、魔石でしょうか。」


 指でこするとパラパラと砂が落ちた。

 あまり触ると良くないみたいだ。


「そんなことより宝箱です。

 中身はなんでしよう。」


 スライムとの死闘を制した僕は、宝箱に手をかけ、一気に蓋を開く。


 真っ白。

 とにかく真っ白。


 何が起こったのかすぐには理解できなかった。

 目をごしごしこすると、視界が回復した。


「なんだこれ、白い粉?」


 見たことあります。

 ドッキリとかに使う白い粉だ。

 それが僕に向かって吹き出したらしいです。


「あーっ、罠だーっ!」


 それから視線カメラのレンズを拭いて、恐る恐る宝箱の中を覗きました。

 中にあったのは紫色のビー玉1つ、これが宝物みたいです。


「お宝ゲットしました。

 それと・・・もうここには何もないみたいです。」


 もと来た道を戻り、スタート地点につくと、来た時には無かったハシゴがありました。


「ハシゴがあります。

 これで帰れるー。」


 梯子を上り境界を抜けると、そこはスタジオだった。





「・・・」


「ダンジョン探索だ。」


「ダンジョン探索でしたね。」


 大地君の冒険を見た出演者一同の第一声がそれだった。


「で、これがお宝とスライムからドロップした石です。」


「石は魔石だよ。想像と違ったかも知れないけど。

 お宝の方は・・・水晶のはずだったんだけど、大地君が大立回りしてダンジョンに大量のDPが入ったからか、アメジストになっちゃったね。

 それはダンジョン攻略のご褒美だから、大地君の物だよ。」


「やったぁ。」


 無邪気に喜んでみせる大地君だが、その他の出演者はそれどころでは無かった。


「スキルってマジ!?それってダンジョンの外でも使えるのか?」


「うん、使えるよ。」


 マッチョが大地君に詰め寄る。

 大地君はドン引きだ。


「鈴木さん、ダンジョンではスキルが手に入るんですか!?」


「いや、俺も今初めて知った。

 スライム相手なら怪我する事ないだろうって思って、本人に内緒で仕込んだり、最後にドッキリ系の罠でちょっと笑いを取ろうかと仕掛けたりしたけど・・・まさか異世界召喚されてない普通の人でもダンジョンならスキルを修得できるとは・・・」


 客席も騒然としている。


「もしかして、いくら食べても太らないスキルがあったり。」


「それより、錬金術師とかあったら、金作れるようになるかも。」


「チャームでイケメンゲットとか。」


「バストが大きくなるスキルとか。」


「俺もスキル取って無双してーっ。」


「皆さん落ち着いてください。

 大地君が取った『身体強化』はLV1だと、すべての能力が1%上がる程度です、レベル2だと5%上がりますが、LV1だと大したスキルじゃないです。」


「オリンピック選手はその1%のために命削って練習してんだよ!十分スゲーわ!!」


 特番は、一般人でもダンジョン内ならスキルを修得可能という衝撃の結末のもと、大混乱のうちに終了した。

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この絶妙に存在しそうな芸人好きw スタジオの光景がありありと浮かぶ
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