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閣僚会議2

 任期満了により、平井内閣は終わった。


 保守的な平井総理による内閣は、議院内閣制特有のフットワークの重さと憲法第9条の兼ね合いもあり、目まぐるしく変わる世の中に付いていけず、未だに魔法による治療も、ダンジョンでの武器使用も法整備ができていない。

 なので、日本国内かどうかグレーゾーンの白浜ダンジョンでは、探索者は平然と武装していた。

 それを追認するように、白浜町議会は簡単な講習だけで、ダンジョン内限定で銃を使える条例を制定し、公然と銃刀法を無視した。

 『装甲』の魔法により、人は銃や刀で負傷しなくなったので、無意味になった武器を規制するより、ダンジョンで効率良く狩ってもらうために武器を普及させる方に舵を切った訳だ。

 

 日本は法治国家なので、政府としては、なんとか法を守らせたいが、俺がへそを曲げて日本以外の国に移住するのは絶対に避けたい。

 なので、国としては手が出せず、和歌山県はやりたい放題やってる状態だ。

 おかげで、ダンジョンから産出される資源を背景に、県の財政は大阪と同規模まで強化された。





 何もできない中、後任に決まったのが前法務大臣の山本一郎だった。

 つまり、和歌山県民の鈴木元太は和歌山県選出の議員が手綱を握れという事だ。

 地元では戦後すぐの片山内閣以来の総理大臣の就任に、お祭り騒ぎだったが、本人は頭が痛かった。


「どうしたもんか。」


 現状を見れば、鈴木元太がやらかした魔法の拡散とダンジョンの量産を追認するしかなかったが、それによって産油国との関係が敵対とまではいかないが悪くなってしまった。

 東アジアと大平洋地域の原油使用量が大幅に減ったからだ。


 鈴木元太は、産油国からは目の敵にされ、発展途上国からは救世主扱いだ。

 あちらを立てればこちらが立たない。

 加えて今度は異世界と貿易だ、そもそも異世界がどういう所なのかも分からないのに、どうやって法律を作れと言うのだ。


「白浜ダンジョンを保税地域にするか?」


 保税地域とは、外国の貨物を保管して良い場所だ。

 貿易の理想は、日本に貨物が到着した瞬間に、全て日本国内の基準を満たし、直接国内に流通させられる事だが、現実はそうはいかない。

 食糧などは動植物検査が必要だし、密輸の取り締まりも航行中の船ではできない。

 ならば、到着して実際の貨物がある状態で輸入手続きをやろうという訳だ。

 保税地域とは、輸入手続きを待つ貨物を保管する場所なのだ。


「いや、あそこは既にオリハルコンが大量にある。

 どれが外貨でどれが内貨なのか区別がつかなくならないか?」


「むしろ、全部輸入手続きなしで持ち込んだ方が良い、それが一番簡単だ。」


「しかし、それでは通関が・・・」


 有識者も交えた閣僚会議は、それから数時間に及んだ。


「異世界の産物は、当面輸入手続きなしで持ち込めば良いぢゃろ。」


 最終的には、長時間の会議にうんざりした、山本総理の鶴の一声で決まった。


「よろしいので?」


「だんじょん荘自体が日本国内かどうかグレーじゃからな。

 元太の好きにやらして、責任も元太に取らせれば良いじゃろ。

 そもそも、見た事も聞いた事もない国が相手じゃ、あまたある異世界を渡り歩いてきた元太が一番わかっとるはずだ。」


「そりゃそうでしょうけど・・・」


 やはりそれでいくしかないのだろうか。

 官房長官は、世界を引っ掻き回した元太に、事実上の全権委任する事について、言い様のない不安を覚えるのだった。





 俺が閣議決定の内容を知ったのは、ダンジョン課の鈴木蓮からの連絡だった。


「ねえ、これってやりたい放題やっちゃっていいって事だよね。」


「あまり無茶苦茶しちゃダメですよ。」


「半分冗談だから、俺だってカルマが落ちるかどうかは気にしてるんだよ。」


「半分は本気なんですね。

 カルマ落ちなきゃやるんですね。

 既に相当やらかしてるのに、まだやらかすんですね。」


「もちろん。」


 だんじょん荘は、基本的に廊下というか通路の左右に5つづつ住宅用の空間型ダンジョンを繋げている。

 それがたまに片方だけ入口4つと壁という構成になってる所がある。

 そここそは異世界に繋がる場所なのだ。


 俺はそんな不自然な一角に手を当てると、その先の異世界にダンジョンを発生させ、わくわくしながら鏡のような入口をくぐる。


「さーて、どこにつながるかなーっ」


 水っ!!

 ヤバイ溺れるっ!


 慌ててだんじょん荘に戻ると、少し飲み込んだ水を吐き出した。


「かはっ!水中だった、いつもは地上か地中なのに。」


「いっそ宇宙だったら面白かったのに。」


「死ぬわ!」


 慌ててたから、よく確かめなかったけど、この先は水中だった。

 改めて異世界の水中で、『探知』の魔法を使ってみたが、そこは水深20mくらいで、試しにむこうの世界でドローンを飛ばして確認したところ、視認可能な範囲に陸地は無かった。


「だめだこりゃ。」


 これは他の異世界を試した方が速い。


 次の接続先は、砂の中だった。

 なので砂をダンジョンにして地表に出る。

 『探知』の魔法で、人の痕跡を探したが、前回同様に人里は見つからなかった。


 俺が日本に帰ってくるときには、いくつもの異世界を渡ったが、人が見つからない異世界はそこそこあった。

 当時は、接続先が地球じゃない事を確認したり、食糧を調達したりで結構時間がかかった。

 今回はオリハルコン探しなので、ダメだと思ったら、すぐに他の異世界に繋ぎ直せばいい。

 帰還できるのか不安な中で、接続しては違って落胆した当時に比べれば、気楽な物だ。


「さーて、次いってみよーっ」


 あんな人がいない世界でも、詳しく調べれば有望な地下資源があるかもしれない。

 俺は異世界と繋げたまま、探索者や企業に解放する事にした。

 後に、この時に接続した異世界は、本当に砂と空気以外何もない異世界として、忘れ去られるのだった。

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