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ダンジョンのお宝

 回収した魔石は1つ1kgもあった。

 さすがホブゴブリンウォーリアー、魔石もでかい。


「日本だとこれ1つで$70~$80する。

 魔石発電に使うんだが、エネルギーを内包した謎の物質だから、他にも使えるかもって。」


「Wao!」


 魔石の他に金属片もあった。

 重さは2kgくらいだ。


「金属片の方は魔金属だな。

 多分魔鉄じゃないかな。

 本来なら、オーガみたいな浅い階層のボスがドロップするんだけど、ホブゴブリンウォーリアーの方が強いから、魔鉄くらいドロップしても不思議じゃないな。」


 魔鉄は、魔金属の中では一番安い。

 性能は普通の鉄に炭素を加えた鋼と変わらないが、魔法やスキルの影響を受ける。

 それを説明したら。


「ならば、タンクの装甲に魔鉄を使って『装甲』の魔法をかければ、16インチキャノンを弾けるようになるのか?」


「どうでしょうね。

 ってか、アメリカじゃ『装甲』の魔法に16インチ砲撃ち込んだのかよ。」


 まあ、戦車の装甲がいっくら硬くなったところで、タンク満水戦法を使えば、結果は一緒だ。


「5発で魔法が消えました。

 兵も死亡です。」


「だろうね。

 あの魔法って、魔法障壁が5層になってる代物だから。」


 さすがに16インチ砲なら、『装甲』の1層は破れたか。


 ちなみに、これが『火矢』の魔法だと、外側の1層が『火矢』の干渉によって消滅するが、次の層が逆に『火矢』を干渉して消滅させる。

 『装甲』が魔法に対しても有効なのは、そんな仕組みなんだそうだ。


「あと、ホブゴブリンウォーリアーに吹っ飛ばされた州兵は、『耐久強化』のスキルをとれました?」


「はい、1人だけレベル2だったそうです。」


 『耐久強化』のスキルは、受けた総ダメージが一定値を越えると修得すると言われている。

 いきなりレベル2って、よく死なかったな。

 いや、俺が回復させなかったら、死んでたのか。


「よし、次は第2小隊を突入させよう。」


「まだやりますか?」


「はい、まだ宝箱を取ってませんので。」


 宝箱の一言に、州兵の皆さんから歓声が上がった。

 こんな危険なダンジョンなら、一層でも宝箱の内容がショボいはずが無い。

 一体何が入ってるのか確かめないと。


「ハンドガンとサブマシンガンは役に立たない。

 M500は効果がある。

 あと、S&Wが新開発したグレネードランチャーも試す。」


 S&Wは基本拳銃のメーカーだが、魔物相手に活路を見いだすため、拳銃のメーカーの発想のもと、対魔物用兵器として、グレネードランチャーを採用した。


 今までのグレネードランチャーは、遠くに爆弾を投げ入れる的な使い方だったり、散弾銃の代わりだったりと、割とトリッキーな使い方を求められた。

 そのため弾速は低めで、貫通力は二の次だった。


 そこでS&Wはグレネードランチャーの砲身を延長できるアタッチメントを開発し、弾の初速を向上させた。


 そのせいで、重く反動が強いという欠点を抱える事になってしまったのだが、これは意外な理由で改善される事になる。


 使用する弾種は拳銃のメーカだけあって、フルメタルジャケットの予定だったが、魔物相手だと鉛を真鍮でコーティングした弾丸は心もとない。

 一応銅の弾丸も用意してあるが、銅は鉛より加工しにくいから採用したくないそうだ。


「ふと思ったんですけど、なんで鉄じゃダメなんですか?」


「弾が人体を貫通すると、思いの外ダメージが少ないでーす。

 だから、当たった瞬間に変形する鉛・銅・銀・金が理想でーす。

 他にも、銃は鉄ですから、弾が鉄だと、ライフリングがすぐダメになるで~す。」


「なるほど、よく分かりました。」


「でも、鉛が柔らかすぎなら、鉄もいい気がしてきましたー。

 グレネードランチャーはライフリング無いで~す。」


 ダンジョンに再突入すると、俺が宝箱までの道順を指示した。

 自分が作ったダンジョンだ、すぐに分かる。


 なので気がついた。

 ダンジョンが広くなってる。


 30分しかたってないのに、通路の1つが3mも伸びてた。


 異世界じゃ3mも自然に伸びるのに、1ヶ月はかかったぞ。

 やっぱりダンジョンが大気中の魔力をガンガン吸収してるようだ。

 スタンピード大丈夫なんだろうな。


 ダメそうな気がする。


 スタンピードになったら、飛行型の魔物は俺がやっつけるしかないかな。


 途中ホブゴブリンウォーリャーと遭遇したが、グレネードランチャーで攻撃したら、あっという間に仕留められた。

 これで『装甲』の魔法が加われば余裕だな。

 そう思った時だった。


 州兵の1人が突然血を吹いた。

 犯人は俺にも襲いかかってきたが、当然ながら『装甲』の魔法を貫通できない。

 そいつは、直立した犬に見えたが、すぐに姿を消した。


 ソニックコボルト!

 ただでさえすばしっこいコボルトが速さを極め、究極の速さを身につけた魔物だ!

 州兵も撃ちまくるが、ソニックコボルトは撃った後で弾丸を避けるから、当たらない。

 HPは大したことないから、拳銃でも倒せなくはないが何しろ速い。


 筋力はコボルトと大差ないはずだが、攻撃に速さが乗ってるので、最終的な攻撃力はけっこう高い。


 急いで『低速』の魔法を発動し、ソニックコボルトがかかるの待った。


 いくら早くなったとは言え、速さ以外はコボルトと一緒、その脳ミソは軽く『低速』にとらわれた州兵を襲う事しか頭に無かった。

 『低速』の領域に入った瞬間、はっきりと動きが鈍くなる。

 それでも動いてるのが分かる、こいつの速さは陸自の中SAMと同レベルかよ。


 しかし、『雷撃』の魔法の速さにはかなうはずもなく、ソニックコボルトは一撃で黒焦げになった。

 州兵も側撃雷を食らって気絶した。

悪いとは思うが、ソニックコボルトをそよままにしてたら、俺はともかく他の州兵が全滅する。

 後で怒られるだろうな。


 俺はソニックコボルトに襲われた州兵に『治療』の魔法をかけて回ったが、出血が酷く、すぐに輸血が必要な州兵が2人いた。


 仕方なく退却し、今度は残る第3小隊とともに、宝箱アタックをかける。


 それにしても、タフなホブゴブリンウォーリアーに快速のソニックコボルトか。

 これに長距離攻撃できる奴と回復職がいたら、バランスがいいバーディーができるな。


 さっきは使わなかった『探知』の魔法で小隊の少し先まで索敵すると、またまたいましたソニックコボルト。


 ほどなく会敵、そして瞬殺!

 今度はやられないように、グレネードランチャーの半数は、既存の散弾にしてあったのだ。

 ソニックコボルトは確かに速いが、耐久は普通のコボルトと変わらない。

 無数の散弾を避けきれず、自身の速さも相まって、一瞬で蜂の巣になったのだ。

 後に残るのは、魔石とドロップアイテムのコボルトの爪(大)のみ。

 コボルトの爪(大)は合成師・錬金術師・付与師にとってはそこそこ需要がある素材だが、天職を授かれない地球では使い道が分からない、現状ではハズレだ。


 ソニックコボルトは、散弾の段幕で倒せたが宝箱を前に恐れていた敵が現れた。


 球状の体にでかい1つ目とでかい口、上からは10本の触手が生えていて、全方位死角なし。


 ビホルダーだ!

 こいつはD&Dのオリジナルのはず、異世界にはいなかった。

 一体何をドロップするのか知りたい。


 ビホルダーは知性が高く、魔法を撃ってくる。

 悪い事にここは通常のダンジョンなので、『火矢』でも、戦車の正面装甲を融解するだけの火力がある。

 魔法を使えない州兵では、手も足も出ない相手だ。


 なので、俺が相手をする事にした。

 ビホルダーの前に姿を表すと、いきなり『煉獄』の魔法をぶっ放してきた。

 たまらず空間型ダンジョンを創造して退避する。

 ビホルダーは俺を追って空間型ダンジョンに入ってきたが、思うつぼだ。

 手にしたグレネードランチャーが火を吹く。

 アタッチで砲身を伸ばしてるから、すさまじい反動だ、肋骨が折れるかと思った。


『新規スキル取得 反動軽減』


 なんかスキル取ったぞ、うれしいが今はビホルダーをどうにかせねば。


 ビホルダーも魔法で防御しようとするが、でかい目玉を狙ったフルメタルジャケットがビホルダーの魔法を突破する。


 バカめ、俺の空間型ダンジョンは、地球とは比べ物にならないほど、魔力が薄いのだ。

 『装甲』ならともかく、そんな状態で他の防御魔法を使っても、グレードランチャーのフルメタルジャケットに勝てるはずがない。 


 ビホルダーの目を狙った俺の砲弾は、ターゲットの目をそれ、ほっぺたのあたりに命中した。

 『射撃』スキルはレベルが低いし、反動が凄いから、狙った所に当たらない・・・嘘です俺の射撃がヘタクソなんです。

 2発目は、ようやく目に当たったが甲高い音を立てて弾かれた。

 もしかしたら、アレは目じゃなくて丸い盾だったりするのか?

 3発目は口にヒットしたが、こいつ砲弾を食いやがった。吐き出さないな、おいしかったんだろうか。


 その間もビホルダーは魔法で攻撃してくる。

 『煉獄』やら『荷電粒子』やらを放つが、威力は地球に比べると雀の涙程度だ。

 こちらはグレネードランチャーが弾切れなので、M500で応戦だ。

 しかし、さっきはダメージを与えたほっぺたに命中したのに、今度は弾かれた。

 マグナムは、グレネードランチャーより弱いらしい。

 まあそうだよね、反動からして違うもん。


 双方決め手を欠く中、先に力尽きたのはビホルダーだった。

 ふよふよ飛んでたのに、ことんと落ちた。

 どうやら体力が尽きたらしい。


 俺の方も銃弾が尽きた。

 しかし、俺の魔法攻撃はこれからだ。


 俺は『火槍』を放ったが、その魔法はニンジンくらいの長さしか無かった。

 命中しても、ビホルダーはそもそも耐久が高いので、ダメージはゼロだ。

 魔法使えねーっ。


 俺はフルメタルジャケットを当てたほっぺたを直接ぶん殴ったり、魔法を放ったりした。

 対するビホルダーは『着火』の魔法で、チリチリと俺を焼いてきた。地味に熱い。


 そういえば、俺はダンジョンマスターだったんだよ。

 DPがそこそこ貯まってたので、ゴーレムを作成し、ビホルダーをぶん殴らせる。

 俺が戦うより強いな、ほどなくしてビホルダーがダンジョンに吸収された。

 どうやら死んだらしい。

 泥試合の末、勝ったのは俺だった。


 ビホルダーのドロップ品は、魔石ではなく魔水晶だった。

 しかも紅水晶、異世界でもかなりレアだ。

 しかし、残念ながら、地球では紅の魔水晶を生かす手だてがない、宝の持ち腐れだ。


 空間型ダンジョンを出て宝箱を調べると、毒ガスの罠だった。

 1階層にしては、かなり凶悪な罠だ。

 この罠は、宝箱を通常の手順で開くと、宝箱のちょうつがいに仕込まれた針で毒袋が割れるようになっている。

 なので、鍵がかかったままちょうつがいを解体するのがセオリーだ。すげーめんどくさい。


 俺は州兵達の前で実演してみせる。

 その間にホブゴブリンウォーリアーが湧いたので、みんなに駆逐してもらうこと3回、20分くらいかかっただろうか、ちょうつがいの側から宝箱の中に手を入れ、破れやすい毒袋を取り出した。


「それ割れたら死ぬから気をつけて。」


 『意訳』の魔法でみんなに周知し、いざ宝箱オープン!

 中身はぐにゃぐにゃ曲がったナイフ一本と、ポーションが1つだった。


「ポーションの方は中級ポーションだ。

 ありとあらゆる切り傷が治る。

 もしかしたら、またしても抗生物質の類かも知れない。

 ナイフの方は・・・魔鉄のクリスナイフだな。

 しかも付与までついてる。

 1階層にしては、ありえない物が出た。」


 やはり思った通りだ。

 宝箱から出る物は白浜ダンジョンより豪華だ。


 ダンジョンを出て報告すると、ブラウンはとても満足した。


「アルカトラズダンジョンは、本当にハイリスクハイリターンだね。」


 今日の探索はこれで終わりだ。

 ブラウンは今日集まったデータとドロップ品をS&W本社に送ると、今日の宿まで俺を送ってくれた。


 明日の夜には日本に帰るんだな。

 飛行機で散々寝たはずだが、俺は用心のためホテルの部屋の中に空間型ダンジョンを産み出し、中で眠りについた。

 言葉のチョイスがおかしい場合も、誤字脱字報告でお願いします。

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