11.大事な水
少し短めかもしれません。
スベンたちが水飲みを終えてから、みんなで川辺に行く。
ここは薄く広く地馳さまの座だから、いろんな動物がいる。
トカゲやネズミの姿も見えた。空高くにタカみたいな鳥の影も横切っていく。
「ントゥも他のエネックに会えたらいいですね」
のそのそ歩くペロの上を飛び越えながら一緒に行ってるントゥは、特に何も反応しない。
「……マレンポー、質問ですよ!」
「はい、何ですか? エーヴェさん」
マレンポーの受け答えは、ちょっと先生みたいだ。
「今、ペロとントゥの頭の上には何も見えません。こういうときは、二人は何も考えてませんか?」
「ああ、そうですね! 疑問ですよね! 今までの観察では、リラックスすればするほど、思想の形は大きく透明になるんですよ」
「ん? でも、ナームのところに来たアミョーたちは、黄色吹雪でしたよ!」
マレンポーは一瞬首をかしげ、すぐに口を開く。
「エーヴェさん、リラックスというのは緊張が解けている状態です。楽しいという気持ちは楽とは違います」
「お?」
「いちばんやりたい動き、体の動きに任せる、というのがリラックスです。楽しい、は楽しいですけど緊張なんですよ」
「楽しいのが緊張ですか」
「怖いや悲しいに比べたら負担は少ないですが、楽しいも緊張ですねぇ」
嬉しすぎて泣く、みたいなことかな。
「じゃあ、やっぱり、ペロとントゥは何も考えてませんよ」
「やりたいことをしているのは確かですよ」
……うーん、ペロとントゥは遊びたいです。
*
川は地面をけずってできてる。
いつも水があるんじゃなくて、雨が降ったり、雪がとけたりしてできる川。
黄色い土の上を流れてきた水は黄土色で、アミョーやテーマイはさっそく飲んでたけど、人間は飲みにくい。
ペロも黄色い水の中に入っていく。水を飲んでるはずだけど、透明なまま。
……まか不思議。
ペードは袋を出して、水を入れはじめた。
側に寄って、様子を見る。
「この水、飲んで大丈夫ですか?」
「うん。沸かせば大丈夫」
「ほう!」
「冗談。ちゃんとろ過の道具をマレンポーが作ってるよ」
ペードは冗談が好きなのかな。
「エーヴェたち、ここの水をくみますか?」
近くに来たニーノに聞く。ニーノは削れた土の上に立って、丘のほうを眺めてる。
「あの麓に水が湧くというなら、そちらから汲もう」
「船で行って樽につめねーとな」
四人でも水の確保は大変だ。
いつも移動するアミョーたちはどうしてるんだろう?
「ポッポキは喉渇きませんか?」
声をかけたけど、ポッポキはくちばしを水に入れ、今度は頭を上に持ち上げて、喉に水を流し込むので忙しい。
アミョーたちはみんなそんな感じ。流れに入って、足を冷やしてるアミョーもいる。
「ストストは水をどうやって集めますか?」
悠々と前を通ったストストに声をかける。
――おれたち、水があったら飲む。羽に乗った露も上手に飲むぞ。
「なんと」
朝露を飲むアミョーが見てみたいです。
「アミョーはこんなに走る力が強いのに、乾きにも強くてすごいですよ」
マレンポーがにこにこしてる。
「マレンポーたちも水はたくさん要ります。どうやって集めますか?」
「竜さんが水が湧く場所を教えてくれるので、そこに向かうのは前言った通りですね。他には、雨水を溜めるポイントを各地に作ってますよ。いつでも竜さん頼みにはできませんし」
「おお! ここにもありますか?」
「ありますよー。ここの近くだともう少し上流ですね」
眺めても何も目印がない。
「わたしは補給できたけど、そっちは補給しないの?」
「少しもらおう」
ペードの呼びかけに、ニーノが川の側に降りてきた。
システーナが腕輪に目をやる。
「お屑さま、なんか静かじゃねー?」
――うむ……。何やら、気になるのじゃ! むむ……。
あちらこちらを見渡してたお屑さまは、激しくぴこんぴこんした。
「おくずさま、珍しいです」
こんなに歯切れが悪いのは初めてかも。
――わしは分かるのじゃ、たくさん。たくさんがたくさんなのじゃ。
地面の削れに鼻先をはめて遊んでたお骨さまが首をあげる。
「たくさん?」
――わしはたくさんではないのじゃ! むむー。
お屑さまはまたあちらこちらを見回しはじめた。
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