7.アミョーの気分
地馳さまの地響きが近づいてきた。
アミョーたちが次々首を上げて、方向を確認する。
「地馳さまー! おはようございます!」
ぴょんぴょん跳ねて、近づいてきた地馳さまにあいさつした。
――おう、エーヴェ、おはよう。元気ぞ。
舌をべろりとしながら、地馳さまが答えてくれる。
かなり遠いけど、気づいてくれた。
嬉しくてにこにこする。
――おれも元気! 元気ぞ!
ストストや他のアミョーが跳び上がり、地馳さまのほうに走り出す。
……みんな、地馳さまが大好きです。
その流れに逆らって、こっちに向かってくるアミョーがいた。
「おはようございまーす! エーヴェさーん、ニーノさーん、システーナさーん」
――おはよう、おはよう。お屑さま。
カタッカに乗ったマレンポーが、こっちに来る。
さっきまで地馳さまの隣を走ってたみたい。
「マレンポー、おはようございます! 地馳さまとお話ししてましたか?」
「よく分かりましたね。そうです。竜さんが離れるなら聞いておかないといけませんからね」
「え! 地馳さま、離れますか?」
マレンポーはカタッカから降りて、首の横をごしごしかいてあげる。
カタッカは黄色い目をパチパチしてる。
「カタッカ、ありがとう。助かりました」
――いいよ。カタッカ、バンに怒られる。それだけ。またね。
カタッカは、さっさと群れに戻っていった。
地馳さまを追いかけていったアミョーのうちの何羽か戻ってくる。
ストストも一緒だ。
「竜さん、いつも同じところを回ってると目が回っちゃうんだそうですよ。だから、ここを中心に、少し広い範囲を走るんです。今よりは離れるってことですかね」
――地馳は落ち着かぬのじゃ! 止まれぬゆえ、まったく落ち着かぬのじゃ!
お屑さまがぴこんぴこんする。
「カタッカが言ってたバンって何だー? ニーノみたいなやつ?」
システーナがニーノを横目で見てる。
――わしも知らんのじゃ! アミョーの言葉なのかや?
「お屑さまが知らないのはめずらしいですね。伴は巣を作る相手です。カタッカには強い伴がいますから、簡単に巣の場所を取られたりしません。それで、ちょっと付き合ってもらったんですよ」
「強い伴じゃねーと取られんのか?」
「なかなか競争が激しいんですよねー」
じゃあ、カタッカは強い伴に怒られるのか。
……ちょっと気の毒です。
「皆さんでわざわざ見に来るということは、そちらの座にはアミョーはいないんですね」
「エーヴェは見たことないですよ」
ニーノを見たけど、首を振る。
「そうなんですねぇ。ここにはいてくれてよかった! アミョーがいなければ、わたしたちは竜さんと一緒に暮らすのが、とても難しかったです」
「地馳さまの上なら暮らせそーだけど」
システーナに同意。
地馳さまは大きくて、火を焚いても平気です。
「そう見えますよね。でも、実は、食べ物と水がままならないんですよ。だから皆さんもぜひアミョーと仲良くなってください!」
「エーヴェ、アミョーに乗ってみたいです」
ずっと思ってたことをやっと言えた。
「あたしも、あたしもー」
システーナも手をあげる。
――わしも乗るのじゃ!
「それはアミョーの気持ち次第ですかね。ストスト、どうですか?」
「どうですか?」
ストストの側で両手を上げる。ストストはみんなの周りをめぐった。
――エーヴェ、小さい。軽いぞ。シス、大きい。重いぞ。
「でけーとだめなのか?」
ストストはぐっと首を反らした。
――おれ、力ある。いいぞ。でも、他のまだ力ない。
みゃうみゃう、みゃうみゃう
アミョーたちが鳴き交わす。
ニーノがマレンポーに視線を向けた。
「アミョーも興味はあるが、水のありかを教えてほしい」
「だったら、やっぱりアミョーに乗ったほうがいいよ」
いつの間にか荷物を片付けて、ペードが立ち上がる。
まだ編んでるカウが続けた。
「水場は少し離れてんだ。走っても行けねえことないけど」
「じゃあ、あたしが走ってっから、ニーノ乗せてもらえよ」
――わしはアミョーに乗るのじゃ!
「なら、腕輪。ほい」
お屑さまの腕輪を丁寧に受け取って、ニーノはナームを見る。
ナームは草むらにしゃがんで、アミョーを眺めてる。
「ナーム、痛みはないか?」
こっくり、ふわふわ頭が頷いた。
「俺がついてるよ」
カウがしゃがんだ体勢のまま、ナームの隣に移動する。
……編み物やる気スイッチが入っちゃったのかな。
「では、何かあれば、竜さまにお知らせしろ」
「お前のところの……お山さま?」
ニーノが頷く。
「それで、私に届く」
評価・いいね・感想等いただけると大変励みになります。
是非、よろしくお願いします。




