4.早起きお影さま
一通り食べると、ニーノは食事を持ってナームのところへ戻った。
ウンコおしっこ後方飛ばし器の製作ついて、きらきらマレンポーから助言を求められてジュスタは困惑中。
カウとペードとシステーナはお屑さまたちとおしゃべりしてる。
「あ、ペロが帰ってきました」
「うわ! なんかでかくね?」
カウはびっくりして飛びすさる。
雨の中のお散歩だったから、ペロは二倍くらいにふくれてる。
カウの声に一瞬固まったけど、ペロはいつもの食堂の隅に行って、ごとんとガラスの鉢を置くと、中に収まった。
……収まってない。半分くらい縁から垂れさがってるけど、平気なのかな?
取り込まれた葉っぱがくるくる回ってる。
「ペロが寝る時間かー。マレンポーたちはどーすんの?」
「寝るところは、俺たちの人数分とニーノさんの部屋にしかないですね」
廊下のヒカリゴケが蛍の光で船内を導いてる。
「外で寝ますかね。やっぱりアミョーたちの姿が見えたほうが落ち着きますので」
「雨がまだ降ってたら、船の下で休むよ」
「うん。そろそろ空気が吸いたいかも。なんか、ここ空気薄い気ぃする」
三人を船の外まで案内した。
船倉で丸まってたテーマイがひょいっと顔を上げて、じーっと見送った。
……ントゥはお骨さまとまだ外かな?
「さあ、俺たちも休もうか」
「はい! もうだいぶ眠いです」
「おやーすみー」
それぞれ部屋に戻った。
部屋の寝台に横になって、真っ暗な外を眺める。
窓ガラスに雨粒がひっきりなしに流れていくから、まだまだ雨は強いみたい。
耳を澄ましても、アミョーのケンカは聞こえない。
雨の音が聞こえて、ときどき地面からずんずん地馳さまの足音が伝わってくるだけ。
……はひゅー
あくびがもれて、そのまま眠りに落ちた。
*
ぼ
……ん? 何か、聞こえる。
ぼ! ぼっ!
お影さまの声だ。
なんとか目蓋を持ち上げようとするけど、眠気がからみついてて全然動けない。
うー……眠いです。
――これ。影、止めよ。
竜さまの声もする。
――どん!
ぐらっと寝床が揺れて、びっくりした。
「ふぁ!」
飛び起きて、廊下に飛び出す。
「もーなんだよー――」
システーナがボサボサ頭をかきながら出てくる。
「ふ、船が揺れましたよね。お影さま、どうかしたのかな?」
こっちも転がり出てきたジュスタが、足早に甲板に向かう。
もちろんついていった。
ぼっ!
――もう聞こえておる。しばし待て。
――みんな来ておるのじゃ。
お影さまと竜さまとお骨さまの声が聞こえる。
ハーネスも着けずに、甲板に出た。
「おわー!」
「おお……、これはすごい」
――おお。エーヴェとジュスタなのじゃ。
ベ! ずー!
お影さまが羽をバタバタして、風がどっと押し寄せた。
ぱらぱら水が顔に当たる。
まだ少し雨が降ってるみたい。
ぼっ!
「すごいですよ!」
太陽は昇りはじめたばかり。
赤くそまる雲を背景に、七色の虹がかかっていた。
――きれいなのじゃ。
ぼっぼっ
お影さまが興奮するのも分かる。
遠くはまだ雨が降ってるから、虹は二重に重なってる。
ここは野原で、さえぎるものはない。
虹が上から下まで全部見えた。
太陽が昇るにつれて虹がくっきりして、橋の根元が地面に降りる。
「こんなにきれいにかかった虹の橋は久しぶりだなぁ」
「おおー! すっげー!」
――おお! 虹なのじゃ! 我が眷族じゃ!
システーナとお屑さまも甲板に来た。
「おくずさま、けんぞくですか?」
――当然なのじゃ! 美しくて大きくて長いのじゃ! 竜なのじゃ!
「へあー、そーなんだー」
――しかし、話せぬのじゃ! おそらくたいへん臆病な竜なのじゃ!
ぶー!
お影さまは急に、船に頭をぶつける。
「わ! お影さま、危ないですよ!」
――影、船は脆い。止めよ。
「私はここにおります」
淡々としたニーノの声が後ろから聞こえた。
ぼ! ぶー!
「はい」
ぶー!
「はい。たいへん美しいです」
ぶー!
お影さまはうぉほっほをする。ひょいひょいとお骨さまより高いジャンプ。
お骨さまもかぱっと口を開けて、うぉほっほをした。
眠気が覚めて、みんなでうぉほっほする。
ぼ!
――これ、待て。
お影さまが虹に向かって飛び出した。
竜さまも追いかけて飛ぶ。
――おお。友と影が虹に会いに行くのじゃ。
お骨さまがきょきょきょきょきょと羽を鳴らした。
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