2.こえーニーノ
食堂にニーノが戻ってきた。
「貴様ら、ケガはないか」
「お?」
体のあちこちを点検する。
「エーヴェ、元気です!」
「俺は地馳さまから降りたとき、ちょっとすりむきました」
「見せろ」
ニーノにジュスタは肘を見せる。
ちゃんと洗ってぐるぐる布をまいてるのに、ニーノは外して、中身を確認。ちょっと薬を追加してまたぐるぐる巻いた。
「よし」
「ありがとうございます」
「システーナ」
「あたしはだいじょーぶ」
ニーノがシステーナの前に進んで、見下ろす。
今はシステーナが椅子に座ってるから、ニーノが本当に見下ろしてる。
「左手を出せ」
――そうじゃ! シスは左手にケガをしたのじゃ!
「うわっ、お屑さま、何言ってんだよ!」
「え! シス、ケガしましたか!」
「――システーナ」
ニーノに淡々と繰り返されて、システーナがしぶしぶ手を出す。
「なんと。はれてますよ!」
――おお! 小指が二倍くらいに太いのじゃ!
左の小指の下辺りが青くはれている。
「まーまー」
――童を背負っておったゆえ、いつもの受け身ができなかったのじゃ! シスの鍛錬不足なのじゃ!
「なんと! エーヴェのせい!」
「まーまーまーまー」
「ケガを隠すな」
ニーノがにべもなく言い捨てて、手当をする。
システーナが口を尖らせた。
「ニーノがこえーんだよ」
「理由にならん」
ふてくされたシステーナはときどき痛そうにしてたけど、こっちを見てひょいっと眉を上げる。
「なんだー? おちびは気にしてんのかー?」
頭をぐしゃぐしゃされた。
「む……、エーヴェはちょっとショックですよ」
「シスさんが隠すからいけないんですよ」
「ニーノがこえーんだもん」
「理由になっていない」
二回も同じ事言われてる。
ニーノは細く裂いた布で丁寧にシステーナの小指を固定した。
「幸い骨に異常はない。貴様は頑丈だが、ケガはする。隠すな」
「はーい」
「二日はその布を外すな」
「へーい」
システーナはうさんくさそうに布を見てる。
ニーノはマレンポーたちを振り向いた。
「そちらは異常ないか」
「お気遣いありがとうございます。大丈夫ですよ」
「それより、ナームは?」
「今は清浄にして、休養している。痛みやかゆみでよく眠れていなかったようだ」
ペードとカウがほっとした表情を見せる。
「走りっぱなしになると、体を浄めるのもそう簡単にできませんからね」
「わたしたち、たぶんすごくくさいよね?」
ペードに聞かれて、鼻をうごめかせた。
「うーん、アミョーと同じにおいです」
「まあ、くさいのはたぶん俺たちも一緒ですよ」
「うん、獣っぽいにおいする」
カウはその辺りの空気をふんふん嗅ぐ。
テーマイやントゥのにおいかもしれないけど、私たちがにおい源でもおかしくない。
それよりも、ちょっと気になってることがある。
「ペード、カウ、椅子はこう座ったほうが楽ちんですよ」
二人は座面にしゃがんでる。
不思議とマレンポーだけ、お尻を乗っけた普通の座り方。
「……そーなの、マレンポー?」
「ええ、そうですね。しゃがむと窮屈じゃありませんか?」
「いや、でもなんか落ち着かねーんだもん」
カウはキョロキョロ辺りを見てる。
長お屑さまはまだカウの頭上だから、一緒にキョロキョロしてる。
「落ち着きませんか?」
ジュスタが台所からみんなにお湯をいれた器を持ってきてくれた。
「こんな風に木に囲まれたところに普段いませんからね。カウなんか、視界がさえぎられるってぶつぶつ言ってます」
「カウたちは建物を作りませんか?」
「同じ場所に長居しないから、寝るところ作るのに時間かけられねーもん」
「雨が降ったら困りますよ」
「そんなに雨が多いとこじゃないんだ。この服、アミョーたちと一緒で油を塗ってある程度は水を弾くしね。なんとかなるよ」
「ほー」
いったいどんな暮らしなのか、興味津々です。
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